小林可夢偉が逃げ切った! ペースに勝るライバルを相手に、トヨタが雨と燃費を読み切り逆転勝利【WECイモラ/後半レポート】

2024年4月22日(月)2時48分 AUTOSPORT web

 4月21日(日)、イタリアのアウトードロモ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ(イモラ・サーキット)で、WEC世界耐久選手権第2戦『イモラ6時間レース』の決勝が行われ、TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組)が総合優勝を果たした。GT3カーで争われる新カテゴリーのLMGT3では、チームWRTの31号車BMW M4 GT3(ダレン・レオン/ショーン・ゲラエル/アウグスト・ファーフス組)がクラス優勝を飾っている。


 シリーズ初開催のイモラ・ラウンドは、波乱の幕開けとなった。スタート直後に36号車アルピーヌA424のブレーキングミスをきっかけにタンブレロ(ターン2)で計5台のハイパーカーが絡む多重クラッシュが発生。またLMGT3クラスでもストレート上で予選7番手の91号車ポルシェ911 GT3 R(マンタイEMA)などがダメージを負うアクシデントが起きたため、オープニングラップからセーフティカー(SC)が導入される。その後も最初の1時間のうちに2回のフルコースイエロー(FCY)が入る荒れた展開となる。


 しかし2時間目に入ると一転してクリーンなレース展開となり、最初のピットストップで姉妹車50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)を逆転した51号車フェラーリ499Pが淡々とトップを走る状況に。3時間目には一時5番手に順位を下げていた50号車フェラーリが2番手に復帰し、この2台目の跳ね馬をコンウェイからデ・フリースにドライバーをつないだ7号車トヨタが僅差で追いかけている。


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 レース折り返しの3時間が完了する10分前に、トップ3の51号車&50号車フェラーリと7号車トヨタが3度目のピットストップを行う。この直後、アウトラップでGT3カーに詰まった51号車に僚友50号車が急接近するが、ここはスタートから3スティントを担当したアントニオ・ジョビナッツィから交代したジェームス・カラドが落ち着いて抑える。その後、カラドはミゲル・モリーナ駆る50号車フェラーリを徐々に引き離していき、スタートから3時間15分の時点でその差は約10秒に開く。


 ポールポジションからスタートした50号車フェラーリの背後にはふたたびデ・フリースの7号車トヨタが迫り総合2番手争いが繰り広げられる。その後ろは少し間をおいて6号車と5号車ポルシェ963のポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)勢が続いている。


 レース後半に入って25分後、雨の影響か11号車イソッタ・フラスキーニ・ティーポ6-C(イソッタ・フラスキーニ)がヴァリアンテ・アルタ(ターン14〜15)でクラッシュ。このクルマを回収するため3回目のFCYが入り、解除のタイミングでデ・フリースが目の前を走る50号車フェラーリを攻略して2番手に順位を上げた。


 それからまもなく12号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)のターン17でのコースオフ、94号車プジョー9X8の左フロントタイヤバーストと立て続けにアクシデントが発生したため、今季より採用されたバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入される。ピットクローズとなるFCYを見込んだか首位の51号車フェラーリはこの直前にピットへ滑り込んだが、ピットインが認められるVSCとなったことで戦略が裏目に。完全な非競争状態でピット作業を行った7号車トヨタと50号車フェラーリだけでなく、6号車ポルシェ963にも先行を許してしまう。その後レースはウエット宣言が出されるとともにVSCからSCに移行し、残り2時間06分から再開された。


 リスタート直後に50号車フェラーリにかわされた7号車トヨタほか、多くのハイパーカーがウエットタイヤに履き替えるためにピットへ向かう。一方フェラーリ勢50号車、51号車、83号車とPPMの5号車ポルシェはステイアウトを選択するが、路面は状態はさらに悪い方向に進み大きくタイムを失う。5時間目に入ってやむなくピットでタイヤを変えたフェラーリ勢は51号車がトップから約1分差の6番手、50号車が7番手、黄色い83号車は8番手にポジションダウン。イタリアのメーカーよりわずかに早く動いたポルシェ5号車もトップに立った7号車トヨタから約30秒おくれの5番手に順位を下げている。


 スタートから4時間半が経つのを前に99号車ポルシェ963(プロトン・コンペティション)がアクアミネラーリのグラベルでスタックし、この日5回目のFCYが導入される。続けて35号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)もウエット路面に足を取られ、スピンからスタック。これで6回目のFCYだ。


 この時点で可夢偉駆るトップ7号車と2番手ケビン・エストーレの6号車ポルシェのタイム差が約15秒、雨中の混乱で3番手に順位を上げた8号車とは約30秒。ブレンドン・ハートレーがドライブするGR010ハイブリッドの背後には20号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)がつけている。


■手に汗握る展開は抜きにくいイモラだからこそ


 チェッカーまで残り1時間05分。路面が徐々に乾いてきているなか51号車フェラーリがピットに入ったが、ここではタイヤを替えず給油のみでピットアウトしていく。コース上では8号車トヨタと20号車BMWの3番手争いに5号車ポルシェが加わり三つ巴の戦いとなる。この中でもっとも早く動いたのは8号車で、残り1時間ちょうどでピットイン。タイヤをドライ用のスリックに変えてコースに戻るが、アウトラップでコースオフするシーンが見られた。トップを快走する7号車も燃料が残り少なくなったため、翌周ピットへ入ってスリックタイヤに交換して出ていく。


 その後、続々とスリックタイヤに履き替えていくマシンが現れるなか、ヴァリアンテ・アルタで99号車ポルシェがふたたびストップしたため7回目のFCYが入る。フィニッシュまで残り50分となったところでリスタートが切られ、これと同時に5号車ポルシェがピットへ向かう。7号車トヨタ、6号車ポルシェに次ぐ3番手で戻るも51号車フェラーリがこれをパス。8号車トヨタはポルシェに次ぐ5番手となった。


 残り45分で首位7号車トヨタと6号車ポルシェのタイムは8.6秒。このギャップをエストーレが削っていくが、ターン17のオーバランがあり約11秒に開く。4番手51号車フェラーリは残り40分を切った段階で最後のピットインを行いスリックタイヤに履き替え7番手でコースイン。その後イーフェイ・イェ駆る83号車フェラーリとバトルを繰り広げることに。


 チェッカーまで残り20分を切って燃費走行の7号車トヨタに6号車ポルシェがすぐ後ろにまで迫ってきた。ここから可夢偉とエストーレの直接対決に入る。しかし2番手につける6号車にはSC手順の違反による5秒加算ペナルティが決定しており、仮に前に出たとしても5秒以上リードしなければ優勝はない状況だ。最終盤まで息詰まる戦いが続いた優勝争いは結局、可夢偉が逃げ切りに成功し今季初優勝を決めた。開幕戦のウイナーであるポルシェは6号車と5号車が2位&3位表彰台を獲得している。


 トップ争いの裏では4番手争いも白熱しており、最後のピットストップから怒涛の追い上げてを見せていたアントニオ・フォコの50号車フェラーリがファイナルラップでポジションを上げて4位でフィニッシュ。追い上げられていた8号車トヨタはタンブレロでマシンがスライドし、これが勝負の決め手となってしまった。6位は20号車BMW、7位フェラーリ51号車、以下83号車フェラーリ、93号車プジョー9X8、2号車キャデラックというトップ10リザルトとなっている。


■ハイパーカーなら正しい判断も、GTカーでは裏目に


 LMGT3クラスも雨で状況が一変した。前日の予選でポールポジションを獲得した92号車ポルシェ911 GT3 Rはスタートから快調に飛ばし、レース折り返しの3時間までほぼレースを支配していたが、4時間目に降り始めた雨での判断がこのクルマを劣勢にした。


 92号車ポルシェは降り始めの段階でウエットタイヤに交換したが、他の多くのGT3カーはスリックタイヤのまま走行を続けていた。そのなかでもとくに速さを発揮したBMW M4 GT3勢(チームWRT)がポルシェを先行し、“地元の英雄”であるバレンティーノ・ロッシを擁する46号車がトップに浮上する。


 僅差のワン・ツーでレースを進めるBMW勢。残り1時間半となったところでアウグスト・ファーフス駆る31号車が僚友46号車をかわしてクラス首位に立つ。その後も2台のBMWは接近戦を続けるが、46号車にVSC手順違反によるドライブスルーペナルティが下ったことで勝負あり。レオン/ゲラエル/ファーフス組31号車がクラス初優勝を果たした。


 46号車はペナルティによって優勝のチャンスを失ったが、後続を大きく引き離していたため2番手を守りチームWRTのワン・ツー・フィニッシュに貢献。ロッシは地元イタリアで表彰台を獲得した。ドライ路面では圧倒的な速さを見せていた92号車ポルシェは余計なピットインが最後まで響き3位でのチェッカーに。BMW勢とは1周遅れとなった。


 同じくワンラップダウンでフィニッシュした55号車フェラーリ296 GT3(ビスタAFコルセ)がクラス4位で続き、トップから2周おくれた27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3(ハート・オブ・レーシングチーム)が同5位。6位には佐藤万璃音がフィニッシュドライバーを務めた95号車マクラーレン720S GT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)が入った。


 この他の日本勢は、小泉洋史組82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(TFスポーツ)が姉妹車81号車に続くクラス8位。Dステーションの777号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3は10位入賞。木村武史もドライブした87号車レクサスRC F GT3(アコーディスASPチーム)は15位でイモラ・ラウンドを終えている。


 WECの次戦はル・マンの“前哨戦”スパ6時間レースだ。ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットが舞台となるシーズン第3戦は5月9(金)から11日(日)にかけて開催される。


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