新生ホンダYPFレーシングが席巻。TC2000王者ペーニャがポール・トゥ・ウイン/TCR南米第2戦
2025年4月23日(水)18時0分 AUTOSPORT web

昨季までスクアドラ・マルティーノとしてTCRサウスアメリカ・シリーズを戦ってきた新生ホンダYPFレーシングが、引き続き2025年のシーズン第2戦でも猛威を振るうことに。
言わずと知れた南米最高峰の“ハイテク”FFツーリングカー選手権、TC2000で4度のチャンピオン獲得経験を持つリオネル・ペーニャが、予選からFL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR艦隊のワン・ツー・スリーを牽引し、レース1ではポール・トゥ・ウインを達成。開幕戦に続く連勝で自身TCR初ポールから通算5勝目を飾っている。
本来ならミシオネス州ポサダスの国境付近にある、改装されたアウトドローモ・ロサモンテで開催予定だったTCRサウスアメリカ第2戦は、サーキットの改修と造成工事がイベント開催までに完了しなかったため、開催地の変更を余儀なくされることに。改めて同州アウトドローモ・シウダー・デ・オベラが代替戦の舞台となった。
シリーズ初開催となる歴史あるレーストラック複合施設には、全長4380mのロング版と、それよりずっと短い全長2726mの、直線とより複雑なタイトターンを組み合わせたショート版が運用可能となり、このレースウイークは後者を採用することに。
自身も同地初走行となるディフェンディングチャンピオンのペドロ・カルドゥソ(PMOレーシング/プジョー308 TCR)も「レース前のプランがすべてを左右する」と、コース上のあらゆる時間を最大限に活用してレイアウトを理解する必要があると語った。
「これまで走ったことがないコースだし、新しい経験になるだろう。でも、シェイクダウンとプラクティスのセッションで使える走行時間を最大限に活用し、このサーキットをより深く理解し、セッティングを改善して、ステージで良いパフォーマンスを発揮したい。良い結果を出せるように頑張りたいね」
すると王者の予感はフリープラクティス(FP)から的中し、ここでの走行経験を持つアルゼンチン出身ドライバーが先行する流れとなり、午前は開幕戦ポールシッターでもあるリオネルの息子、ティアゴ・ペーニャ(ホンダYPFレーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速を刻むと、続くFP2では父が威厳を見せる展開に。
全長が短く非常にタイトで、追い越しポイントもほとんどないことから、グリッドポジションが重要となるサーキットでリオネルの44号車が最速タイムを刻んで午後の予選に挑むと、最初のQ1ではチームメイトを務めるネルソン・ピケJr.(ホンダYPFレーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がトップタイムを記録。そして最終Q2では1分11秒750まで詰めたリオネルが逆転し、自身TCR初のポールポジションを得た。

「ポールポジションを獲得する喜びは、どのドライバーにとっても素晴らしいものだ。偉大なアイルトン・セナが言ったように、この喜びはときにレースに勝つ喜びさえも凌駕すると思う」と、まだTCR通算18戦ながらすでに4勝、10回の表彰台獲得、2回の最速ラップ記録を達成しているリオネル。
「TCRで初めてのポールポジションを獲得するまでに長い時間が掛かったという事実は、このカテゴリーの競争の激しさを物語っている。アルゼンチンやブラジル出身ドライバーのレベルの高さを考えると、これは本当に信じられないことで、非常に困難な偉業だ」と強調したTC2000の現役チャンピオン。
「とてもうれしく思っているし、今日見せてくれたように、素晴らしいマシンを提供するため懸命に働いてくれた(代表の)セバスチャン・マルティノ、ホンダYPF、そしてチームの全員に感謝したいと思う」
明けた日曜レース1も、晴天に恵まれた陽気のもとコースサイドではBBQを楽しむファンのなかスタートを迎えると、2列目3番手発進だった息子ティアゴの85号車が蹴り出しで遅れ5番手に後退。しかし中盤までにラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオンVZ TCR)を仕留めてトップ3の追走体制に入っていく。
一方で首位を行く父リオネルは盤石のドライビングを見せ、残り4分でホンダ勢を突き崩して2番手を奪った王者カルドゥソのプジョーを抑え切ることに成功。わずか0.3秒差で優勝を手にし、その2台の背後には0.1秒差でピケJr.の並ぶ表彰台となった。
続くレース2は、リバースグリッドの4番手発進から、スタートでジャンプアップを果たしたファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/リンク&コー03 TCR)が、オープニングラップでテクニカルトラブルに見舞われたピケJr.や、他車との接触に沈んだティアゴらを尻目に快走を披露することに。
アクシデントによるセーフティカー導入にも助けられ、残り2周のリスタートで僚友のサンティーノ・バレリーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)をターン1で仕留めて首位を奪取。さらにこの動きを活用して背後のカルドゥソがカローラに先行し、リオネルも最終ラップ残り数コーナーまで激しい3位争いを繰り広げて勝負を制し、ポイントリーダーが連続表彰台を手にした。
「こんなに重いマシンで、しかもこの暑さのなか、2度の表彰台……優勝、そして3位を獲得できたのは本当に信じられないことさ」と、満足げな表情を浮かべたリオネル。
「もちろん、レース2ではコース上で起きたアクシデントから恩恵を受けたが、賢明な判断で最適な追い越し場所を選んだことで大きな収穫を得た。これからサンフアン・ビリクムに向かい、好成績を継続し、ハードワークを続け、チームをより深く理解することに集中したい。重要なのは僕たちがどんどん強くなっていることだからね」
そのコメントどおり、TCRサウスアメリカの第3戦は“アルゼンチン・ツアー”を継続し、5月10〜11日にサンフアン・ビリクムで開催される。