川崎パスサッカーの主役、家長昭博。その「スゴさ」は両刃の剣だ

4月25日(木)6時35分 Sportiva

 昨季のJ1リーグ覇者、川崎フロンターレが、今季はいささか出遅れている。第6節を終了した時点で勝利はわずかに1。第7節、最下位のサガン鳥栖に勝利したことで、ようやく順位を8位まで上げた。
 第8節のホーム戦、相手は9位の湘南ベルマーレだった。湘南は、布陣こそ5バックになりやすい3バックを採用するが、選手の走力でそのデメリットを最小限に食い止めようとするサッカーだ。川崎は自らのスタイルとは対照的なこのチームに2018年、2016年のホーム戦では接戦を許し、引き分けている(2017年は湘南がJ2だったので対戦なし)。
 今年も接戦必至か。観戦に駆けつけた理由はそこにあった。しかし淡い期待は早々に消えた。川崎は湘南の並びの悪い3バック(5バック)を再三突き、前半で試合を2−0とした。

2−0で勝利した湘南ベルマーレ戦で存在感を発揮した家長昭博(川崎フロンターレ)
 存在感を際立たせたのは、昨季のJ1年間最優秀選手だった。家長昭博の左足にボールが収まると、湘南の足はピタッと止まり、その3バックは5バックに成り下がった。前節まで欠場していた大島僚太が復帰したことも輪を掛けた。試合は一方的になりかけていた。いつ川崎に3点目が生まれても不思議はない状況だった。
 ところが、その気配は後半に入ると失われていく。試合を優勢に進めたものの、惜しいチャンスを作ることができなくなった。それでも、家長は相変わらず独得の存在感を発揮した。大島とともにパスサッカーの主役として活躍した。そしてゲームをコントロールしたが、肝心のチャンスは作れずじまい。このアンバランスな関係に、川崎の悩ましい現状を見た気がする。

 川崎は結局、追加点を奪えず、2−0のまま試合を終えた。試合後の監督会見で、鬼木達監督は「もう1点取らなければならなかった試合」と反省を述べた。その一方で、会見場の記者から挙がった「家長は代表に入ってもおかしくない選手ではないか」との問いかけには、素直に同意していた。
 昨季の年間最優秀選手なので、代表に選ばれてもおかしくない実力者であるのは間違いない。ただし、現在32歳。この賞には、佐藤寿人(2012年)中村俊輔(2013年)、遠藤保仁(2014年)、青山敏弘(2015年)、中村憲剛(2016年)、小林悠(2017年)と、代々ベテランが選ばれる傾向があるが、家長とこれらの面々との間には決定的な違いがある。
 それは日本代表戦への出場回数が、家長には3試合しかないことだ。しかも先発はゼロ。交代出場のみだ。この事実について疑いたくなるほどだが、それだけに年間最優秀選手賞が際だって見える。代表チームにいまからでも選ばれてほしい気持ちにもなる。
 先のボリビア戦で、31歳にして2度目の代表戦出場を果たした西大伍(ヴィッセル神戸)の例もある。さらに言えば、東京五輪を戦うU−23のオーバーエイジ枠にも最適な人材に見える。西と右サイドでコンビを組めば、若いチームに不足しがちな老獪さが加わること請け合いだ。
 大器晩成型なのか、歴代の代表監督の見落としなのか、いずれにせよ、日本のサッカー界が選び忘れてしまった存在であることは確かだ。
 ポジションは4−4−2なら右のサイドハーフ、4−2−3−1なら3の右になるが、左でもいける。そして、試合中にポジションを変えることもよくある。

 この湘南戦でもその傾向は目立った。しかも、その位置はけっして高くなかった。中盤の選手か、サイドアタッカーか。どちらに見えたかといえば前者だ。家長は大島僚太、田中碧の守備的MFとほぼ同じレベルでプレーした。
 遠藤保仁、中村憲剛、中村俊輔など、もともとゲームメーカーだった選手より、家長は逞しく見える。ボールを奪われることはまずない。サイドアタッカーであるにもかかわらず、細かなパスもうまい。
 家長より年長の中村憲剛が欠場したことも手伝い、湘南戦の家長は大将然として見えた。かつてのコロンビア代表カルロス・バルデラマ、アルゼンチン代表フアン・ロマン・リケルメを想起させる、このご時世、なかなかお目にかかれない古典的なキャラを発揮した。
 サイドハーフであるにもかかわらず、中央にも進出する。これは3シーズン前、川崎に移籍してきた時から変わらぬスタイルだが、過去2シーズンはその後ろに、J1リーグのベストイレブンにも輝いたエウシーニョが控えていた。家長のサポートを受けなくても、個人で局面を打開できる高い推進力を備えた右サイドバックがいた。エウシーニョには家長の奔放な動きを補う力もあった。
 しかし、エウシーニョは清水エスパルスに移籍。今季、右SBは馬渡和彰と鈴木雄斗が交代で務めているが、エウシーニョのレベルには及んでいない。
 その結果、今季の川崎は、前方向へのベクトルが働きにくいサッカーになっている。右サイドバックの戦力ダウンを補う意味でも、右サイドハーフと右サイドバックの緊密な関係が求められるが、現実はそれがうまくいっていない。右SBの弱点が露わになりやすいサッカーに陥っている。

 家長が大島らとともに中盤で技巧を見せつけると、つい目は奪われる。「家長はスゴいぞ!」となりがちだが、時間の経過とともに対戦相手は、それが見た目ほど効果的ではないことに気付く。
 湘南戦に勝利した川崎だが、これをもって上昇ムードに転じたとは言えない。家長という古典的なエースをどう活用するか。川崎は両刃の剣になりかねない問題を抱えている。エウシーニョが去ったいま、そう見えて仕方がないのである。

Sportiva

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