【ブログ】番外編Shots!:小林可夢偉に聞く『今の本音』第2弾。トロロッソの活躍、WECについて

2018年4月27日(金)13時4分 AUTOSPORT web

 F1でお馴染みのカメラマン、熱田護カメラマンがスーパーフォーミュラ開幕戦の鈴鹿に来場。F1時代から親交の深い小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)に直撃インタビューした第2弾をお届けします。現在の可夢偉がF1、そしてトロロッソをどのように見ているのか。そして可夢偉のスーパーフォーミュラでの所属チーム、KCMGの土居隆二監督が語る可夢偉。熱田カメラマンのアーティスティックな写真とともに、ご覧ください。


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 今季のF1で注目を集めているトロロッソ・ホンダ。だけど、開幕戦の活躍後に低迷。浮き沈みの理由はチームのセットアップ能力が低いってことなのかな?


「たぶん、違いますよ。おそらくグループだと思います。トロロッソの4位は、実質1位なんですよ。メルセデス、フェラーリ、レッドブルが圧倒的に速いわけじゃないですか。そこは別次元のクルマと思ってください。そのグループがフォーミュラ1。トロロッソのバーレーンでの4位ってのは、フォーミュラ1・5の中で1位ということで総合4位。今年その中の争いってのは熾烈なんですよ、グループ的にはね」


「トヨタF1でもよくあったじゃないですか、スパ(フランコルシャン)でポールだったのにモナコで最下位とか。サーキットによって相性が必ずある。ザウバーの時もサーキットとの相性がわかっていたから、あのコースがいいとか言ったら、たしかに良かった。スパ、鈴鹿は良かったけど、シンガポールとかはやっぱり全然ダメやし。そいいうクルマの特性がある。そこで戦っている集団がすごい僅差だから、ちょっと苦手なサーキットに行くとド〜ンと順位が落ちてしまうんですよね」

「だから、そういうふうに(セットアップやパワーユニット面のことを)言われるのは、かわいそうだと思いますよ。戦っている集団の予算のレベルの差、持っている設備の差もありますよね。まあ、トロロッソ・ホンダとなってワークス体制と言えるかもしれないけれど、正確に言うとトップ3のレベルと比べても同等のチーム規模には達していないわけで、それを踏まえるとトップと比較するのはおかしな話じゃないかと思う」

 今年のWECに関しては、どんな目標を持っているのか?


「『チャンピオン獲得』ってみんな思っていると思うけど、やっぱりル・マンですね! 今はシーズンチャンピオンを獲るより、ル・マンで勝つというのが大変だという意識があるんですよ。だからこそ、『こんなのこともやるの?』というトラブルシューティングのテストをずーとやっています」


「まあ、今年の場合は、僕たちが勝つと思われている部分があるんですけど、プライベーターとのパワーのバランスがあって……。プライベーターのLMP1を増やしたかったら、プライベーターに有利にさせてあげないと参戦する意味がなくなりますよね、という政治的な背景があるので。逆を言えば、僕らはそこで本当に戦えるのかなって思っているくらいですよ! おそらく、今は三味線の引き合いになっていると思います」


 可夢偉選手のスーパーフォーミュラ開幕戦は予選10番手から、10位でチェッカー。残念ながら、ポイント獲得ならず。まだ始まったばかり、今シーズンの可夢偉選手がどのようなレースをするのか楽しみです!


 最後に、チーム監督の土居隆二さんにも可夢偉選手について、話を聞きました。


「30年以上たくさんのドライバーと仕事をしてきましたけど、可夢偉選手の印象は非常にレーシングドライバー向きの人だなというのが第一印象。レーシングドライバーというのは100m走のアスリートと違って、ものすごくたくさんのものの集合体を操って最終的にフィジカル面のタフな中で、安全に速くゴールラインまで持ってくるのがレーサーだと思うんですけど、それゆえに大事なのが求心力だと思うんですよね」

「やはり人間がやっているものなので、『あいつのためだったら、同じ給料でも寝る間を惜しんでもこのベアリングのフリクションを減らしておこう』とか、『1/1000秒影響がないことでもやっておこう』とか、そういうことって大事だと思うんですよね。そういった部分でいうと小林選手というのは、性格もそう、実際のパフォーマンスもそう、トラック上の任せておけよという部分の力強さも頼もしさもそう、いろいろなことで心を集めるのが得意なんじゃないかなと思います。求心力抜群ですし、こんなに任せて安心というドライバーはいませんね」


「具体的には、メカニックがミスをしてしまっても腐らない愚痴を言わない、悪いところは悪いと言う、改善に向けてすぐ気持ちを切り替えてくれるし、そうなるとスタッフみんなはどこかでそれに応えたいって思うんですよね。それでいて、トラック上では今あるマシンのポテンシャルを最大限、大きなミスをすることなく、ほぼ完璧に出し切って帰ってきてくれる。大きく進化するところで言えば、ドライバーコメントに疑いがない!」



「もともと才能があるドライバーが経験をしていけは、レベルは飛躍的に上がっていく。たくさんのクルマの数、種類、コース、国籍、チーム、エンジニア、たくさんのことを経験して引き出しを持っている現在の最終形がここにいるわけですから、それは有り難い。我々も得るものが大きい。当然進化できますし、一緒にやれていることが幸せですし、今後も続けたいし、彼にKCMGを選んで良かったと思わせたい。そういう相乗効果を得ています。今、チームは非常に良い状態です」

「今、ル・マンのサルテサーキット、シルバーストーンをLMP1で一番速く走れるのは小林可夢偉選手なんですから。その経験、速さをここに持ってきてくれるんですから、そんなドライバーがKCMGで乗ってくれていることは本当に有り難い」

 この土居監督さんの話を聞いて、なるほどと思ったのと同時に、F1時代トヨタ、ザウバー、ケータハム、どのチームにいた時もそのチーム全体が可夢偉選手を頼りにしていたのが再確認できたように思います。


 今さらだけども、もう少しF1に乗っていてほしかった……F1のチームメイトだった(セルジオ)ペレス選手、(マーカス)エリクソン選手は今もいるのに。。。


 そして、勝利という2文字に強い渇望の気持ちがあるのは以前も今もまったく変わらない可夢偉選手。去年、一番残念だったのはル・マンだそうです。WEC、スーパーフォーミュラ、スーパーGTと大忙しな今年、ル・マンで勝って、スーパーフォーミュラでもせめて一回は勝ってほしいなあ。


 さあ、どうなるでしょう?



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熱田護(あつた・まもる)1963年生まれ。三重県鈴鹿市出身。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。2輪世界GPを転戦し、1991年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行う。
<a href=”https://www.mamoru-atsuta.com/”>Mamoru Atsuta Photography</a>


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