ACLで苦戦の豪州勢。未来を懸けて戦うWSW高萩&田中、2人が語る日豪の違いとは

4月28日(火)11時10分 フットボールチャンネル

ACLで苦戦するWSW。2人の日本人も奮闘

 今季のACLには2つの豪州クラブが参加している。前回王者で高萩洋次郎と田中裕介が所属するウエスタン・シドニー・ワンダラーズとブリスベン・ロアーだ。Jリーグ勢とも同組となった両チームは、ACLでの苦戦を強いられている。特に2人の日本人選手にとっては、未来を大きく左右する大一番が控えている。

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 今年のACLもグループリーグの最終戦を控え、日豪両国から参戦しているクラブの間では、次ラウンド進出を巡って悲喜こもごものドラマが見られる。

 当然ながら、日本でACLの動向は日本勢中心で伝えられる。余程のマニアックなファンでない限りは、豪州勢の結果だけを気にするということはないだろう。今年のACLでは、豪州勢のウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)とブリスベン・ロアーのいずれも、鹿島、浦和というJクラブと同組に入ったことで、多少なりとも両クラブの動向が日本で伝えられる機会を得た。WSWに関して言えば、昨年までの小野伸二に続き、今年も高萩洋次郎、田中裕介という2人の日本人が所属していることで、日本のファンの関心を少なからず集めているに違いない。

 さて、その豪州勢の現時点でのACLでの成績だが、10戦して3勝3分4敗。勝率は0.300。チーム数の違いもあって単純な比較は難しいが、4クラブが20戦で0.350という勝率の日本勢と遜色ない。両クラブのACLでの一連の戦いぶりを見ても、実力的に東アジアの強豪に充分に伍している。今年のACLでの日豪の対戦成績を見ても2勝1敗と勝ち越しており、2勝はいずれも豪州勢がアウェー(日本での試合)で挙げるなど健闘を見せる。

 昨年は小野がラウンド16までチームを牽引、結果的にアジア王者の座まで駆け上がったWSWだが、今年は大苦戦。第5節(4月21日)のホームでの鹿島戦は、土壇場で試合をひっくり返されての惜敗。グループリーグ1試合を残して最下位に沈み、連覇に早くも黄信号が灯った。

 高萩、田中の両名はここまでのACLの5試合に全て先発出場で奮闘しているが、クラブ始まって以来の低迷にあえいだAリーグのレギュラー・シーズンでの不調の影響は拭えず、チームに昨年のACLのような勢いは感じられない。5月5日の最終戦、アウェーでの広州恒大戦での勝利はマスト。さらには同時に行われる鹿島対FCソウル戦が引き分けにならない限り、ラウンド16進出には届かないというギリギリのところまで追いつめられてしまった。

次節浦和戦のブリスベン、注目は背番号22のドイツ人MF

 ブリスベンも、今季のAリーグでは開幕ダッシュに失敗。シーズン中にマイク・マーヴィー前監督の解任による監督交代が発生するなど大きく出遅れた。残りのシーズンでのチーム再建を託されたオランダ人のフランツ・タイセン暫定監督は、ACLとAリーグの併行する過密日程を決して層が厚いと云えない戦力をやり繰りして、ファイナル進出には何とか漕ぎ着けた。

 ACLでも、浦和と北京国安にアウェーで2勝するなど踏ん張って、最終節を残したところで3位に付ける。最終戦にホームで浦和を大量得点で破れば、裏の試合が引き分けで終わらない限り、グループリーグ通過の望みは残されている。

 そのブリスベンは、現代表監督のアンジ・ポスタコグルーに率いられて、これまでの「オージー・サッカー」のイメージを打ち破るパスサッカーで11年、12年とファイナルを2連覇するなどAリーグを席巻。さらには、監督交代で一息を付いたものの、昨季の2年ぶりのファイナル制覇でAリーグ初の3度目のファイナル王者戴冠を果たすなど、リーグ有数の強豪の地位を確固たるものにした。

 そのブリスベンが3年前、初めてACLに出場した際、筆者はアウェーでのFC東京戦(国立競技場)を同行取材した。そこで、試合には敗れはしたもののブリスベンは、日本のサッカーメディア関係者やFC東京のサポーターに強い印象を残した。彼らの感想は、多少の表現の違いは有れど、「豪州のチームがこんな(ポゼッション重視のパス・)サッカーをするとは思わなかった」というもの。

 現在のブリスベンは、その頃からメンバーも監督も大きく変わった。しかし、3年前と変わらず攻撃をリードするのは、“Aリーグ史上最高の助っ人”と称されるドイツ人MFトーマス・ブロイシュ。この選手に関しては、機会があればもっと掘り下げるつもりだが、5日のブリスベン対浦和戦の観戦の際には、是非、ブリスベンの背番号22に注目いただきたい。

高萩・田中が語る日豪の違いとは

 筆者は1ヵ月ほど前、WSWの高萩、田中両選手にインタビューをする機会を得た。その際、日本と豪州の異なるクラブでACLを経験している稀有な存在である2人から、非常に興味深い話を聞くことができた。

 高萩は、「日本(広島)で中国や韓国のチームと対戦していた時はフィジカルで負けてしまうことがあった」と広島ではフィジカル面でチームとして苦戦を強いられる局面があったことを認めた。

 さらには、日豪のフィジカルの違いを「豪州の選手は基本的に(フィジカルが)強くて、(フィジカル面で)互角以上に渡り合える。ガチンコでぶつかっても周りの選手が負けないので、その分、楽に戦える。日本のクラブは、ガチンコで負けて押し込まれる機会が増える分だけ、(中韓のクラブ相手に)苦戦してしまうのだと思う」と分析。

 田中は、高萩の言に同意しつつ、「Jリーグクラブのホームスタジアムは、どこのピッチも素晴らしいし、クラブがそこでやりたいサッカーがある程度できる環境にある」と日本の恵まれた環境とアジアのよりタフな環境面の違いによる影響を指摘。「(ACLのアウェーでは、)どうしてもピッチコンディションなどの諸条件が日本側の思うような状況にないことがよくある。そういった状況で自分たちのサッカーが出来なくなり、普段やり慣れていないサッカーをやらなければいけないとなった時にフィジカルの差を突かれてしまうのではないか」。

 これらのコメントは、日本の内外のクラブでACLを経験した選手が、実際に感じた違いを踏まえての貴重な教訓であり、今後のJクラブのACLの戦い方に大きな示唆を与えるものだと思うがいかがであろう。

アジア王者WSW。2人にとっては運命の広州恒大戦

 もう一つ、どっちが良いかという短絡的なものでは無いことをあらかじめ断ったうえで、日豪のACLに関しての取り組み方の意識の違いも指摘しておきたい。WSWは、トニー・ポポヴィッチ監督の積極的なターンオーバー起用で過密日程を戦ってきたが、リーグ戦の低迷もあって、シーズン最後半は選手起用にはっきりとACL優先が感じ取れた。ブリスベンも、Aリーグのファイナル進出が決まってからの直近の2試合では、前述のエースMFブロイッシュら主力を完全休養させ、ユース年代の選手メインの顔ぶれで戦った。それは、ACL最終戦に向けての露骨なまでの主力温存策に他ならない。

 諸般の事情もあって、Jクラブにはここまでの思い切りは望めないのかもしれない。しかし、メンバーを落としてACLに臨んでも結果が付いてこないことは、ここ数年のACLでの柏を除く日本勢の戦いぶりが証明している。ACLを“負担”と感じてしまう意識があるようであれば、日本勢のACLでの復活劇はこれからも望むべくもないだろう。

 ACLのラウンド16を想定して、契約が5月31日までに設定された高萩、田中のWSWでの将来は、まだはっきりしない。僅かではあるがグループリーグ突破の可能性が残る広州恒大戦に勝利してラウンド16進出を果たせば、ホーム&アウェーでの試合には現行の契約のままで出場できる。逆に言えば、突破できなかった際には両名の残留の目は一気に低くなり、「現時点ではまったくの白紙」という去就にも大きく影響する。

 今季のWSWのACL仕様のユニフォームには、アジア王者の証たる金色のエンブレムが燦然と輝いている。WSWは、昨年のアジア王者としての誇りを失わず、16強の名を連ねて王座防衛の挑戦権を得られるのか。2人の日本人選手の豪州でのキャリアの未来をも大きく左右する大一番は、5月5日、すぐそこに迫っている。

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