カルデナスに「可能性はない」 井上尚弥の練習相手が米放送局で語った“現実”「ナオヤは常に本気。だから挑戦者が脅威と思えない」
2025年4月30日(水)5時40分 ココカラネクスト

いかなる相手もねじ伏せてきた井上。その凄みを肌身で知る練習相手が正直な想いを打ち明けている。(C)Lemino/SECOND CAREER
世界的な関心、そして圧倒的な勝利への期待は高まる一方だ。来る5月4日に米ラスベガスのT-モバイルアリーナで、WBA世界スーパーバンタム級1位ラモン・カルデナス(米国)との防衛戦に挑む同級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)だ。
【動画】鋭く、重いミット打ち 井上尚弥が米再上陸後に見せた練習風景をチェック
自身5度目となる海外試合だが、規模は過去の試合とは比較にならない。舞台は、業界屈指のビッグマッチが組まれるメキシコの記念日「シンコ・デ・マヨ」の一週間にあたる日付のラスベガス。さらに大橋秀行会長が「過去最高(の金額)を手にすると思う」と言うように、ファイトマネーも軽量級戦士としては異例の大金が支払われている。
すでに米スポーツ専門局『ESPN』での生中継も決定するなど、関心度も高いビッグマッチにあって、対峙するのは「ダイナマイト」や「地獄のパンチを持つ男」と称されるWBA2位のほか、IBF8位、WBO10位の世界ランカーのカルデナス。その異名が示す通り、要所で一撃は“モンスター”の牙城を崩すかもしれない。
ただ、実際に双方と拳を交わしたファイターにとって“差”は明確だという。米スポーツ専門局『ESPN』のYouTubeチャンネル「ESPN Knock Out」に出演したWBA同級11位のブライアン・アコスタ(メキシコ)は下馬評の通りに「井上優位」の見方を改めて公言した。
今年2月にカルデナスと対戦して判定負け(0-3)を喫していたアコスタは、井上のスパーリングパートナーとして来日経験があるパンチャー。実際の試合と練習という違いはあるものの、両雄の拳を目の当たりにしてきた。
だからこそ、彼は「ボクサー目線から見て、正直に言わせてもらえば……、いや本音を言うと、(カルデナスに)可能性はないと思う。彼がナオヤに勝つことはない」とピシャリ。そして、そう論じるワケを説いている。
「それが現実だと思っている。俺はナオヤと一度だけじゃなくて、何度もスパーリングをやってきた。みんなも知っていると思うけど、彼のスパーリングは常に本気なんだ。手を抜くなんてありえない。ガチガチのスパーリングで、倒せると思えば、容赦なくKOを狙ってくる。幸い、俺は自分の実力のおかげで倒されることはなかったけど、ああいう経験をすると、チャレンジャーがナオヤにとって本当の脅威になるとは思えない」
「俺はカルデナスにそこまでのものを感じなかった」
では、井上の凄みはどこにあるのか。スパーリングで怪物の強打を受けてきた26歳は「俺は彼のパワーを確かに感じた。彼は本物のパンチャーで、本当に凄く強いパンチを打つ」と実体験に基づいた見解を披露している。
「パワーこそが彼の最大の武器だと思った。まさに『攻撃こそ最大の防御』という感じさ。ナオヤとのスパーリングは自分にとっても大きな財産になった。自分がどの立ち位置にいるかを思い知らされた」
無論、カルデナスの実力を見下している。アコスタは「試合前に周りから『カルデナスはハードパンチャーだ』とか、『パンチはあるぞ』と言われた。でも、パンチの強さは感じなかった」と前置きした上で「タイミングは良いかもしれない」と指摘している。
それでも「これは彼を悪く言いたいわけじゃないんだけど、俺はカルデナスにそこまでのものを感じなかった。明確な武器や要素が見当たらなかった」と赤裸々に語った若武者は、こう続けている。
「ナオヤはパウンド・フォー・パウンドのファイターであり、偉大な選手だ。だから、今回の試合は彼にとって形式的なものになるんじゃないかと思う」
当のカルデナスは、「人生を変える試合」と位置付ける井上戦に向け、鼻息は荒い。米ボクシング専門YouTube番組「210BoxingTv」のインタビューでは、「「最高でなければならない。試合を通じてシャープでなければならない。36分間で人生が変わるんだ」と力説していた。
ボクシングのみならず、ありとあらゆるスポーツにおいて「絶対」はない。勇猛果敢な挑戦者が、“怪物”の牙城を崩す可能性だってある。しかし、「アメリカで試合をするのであればKOというのは少し考えていきたいなと思ってます。でもKOでも判定でも魅せるボクシングをしていきたい」と己を滾らせる井上を倒すのは、アコスタが語るように容易ではないだろう。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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