FC東京・武藤がJリーグで傑出した選手である理由。“心技体”を揃えた、試合を決められる稀有な存在

5月3日(日)11時16分 フットボールチャンネル

42604人が詰めかけた味スタ

 試合終盤に千両役者が大きな仕事をやってのけた。連戦による疲れもある中で、この日も最後まで走り続けた。FC東京の武藤嘉紀は、なぜ常にハイレベルなプレーを披露できるのだろうか。

——————————

 注目の一戦で試合を決めたのは、注目を集める武藤嘉紀だった。自らが粘ってFKを得ると、これ以上ないほどドンピシャのヘッドでゴールネットを揺らした。

 飛田給駅からスタジアムへの道中にある歩道橋。そこには「すべては勝利のために」というバナーが掲げられていた。全員の高い守備意識と鋭いカウンターを中心にしぶとく勝ち点を積み上げているFC東京。勝利への思いはこんなところにも表現されていた。

 毎回、熱戦が繰り広げられる多摩川クラシコ。この日、味の素スタジアムには42604人が詰めかけた。堅守が光るFC東京と、リーグ最高の得点力を誇る川崎フロンターレの一戦には、期待と興奮が渦巻いていた。

 先に仕掛けたのはアウェイの川崎。セットプレーから大久保嘉人がJ1通算140点目を決めて“キング越え”を果たした。

 前半20分にしてビハインドを背負ったFC東京が、このまま押し込まれてもおかしくなかった。実際、川崎は前節に比べてパスワークがスムーズで、大久保と船山貴之のコンビネーションも機能していた。

 それでも後半に入ると少しずつFC東京が勢いを強めていく。ハーフタイムにマッシモ・フィッカデンティ監督から「リスクを冒してでも前に出てボールを奪おう」と指示を受け、前からのプレスを徹底した。急先鋒となったのは武藤だ。相手のボール回しは一級品だが、挫けることなく食らいついていく。また、味方からのボールをキープし、味方が押し上げるための時間を作る。行けるとわかれば迷わず前を向いて仕掛けることも忘れなかった。

 そうした姿勢に相手の対応が少しずつ遅れる。そうして迎えた64分、試合の流れを大きく変える出来事が起きた。武藤のドリブルをファウルで止めた川崎のDF車屋紳太郎が2度目の警告で退場を宣告される。

心技体が揃っているからこそのパフォーマンス

 以降、完全にFC東京がペースを握ると71分、太田宏介のFKで同点に追いついた。そして87分、冒頭に記したように武藤が値千金の逆転ゴールを叩き込み、チームを勝利に導いた。

 味スタに歓喜をもたらした武藤のプレーを見ていて思うのは、心技体すべてが高いレベルで備わっているということだ。

 いくら相手に削られても平常心のままプレーしている。毎試合、相手の厳しいマークに遭っており、川崎戦でも幾度も削られたが、じっと耐えていた。

 また、チャンスを逃しても『次は決めてやろう』と考えている。52分にも決定機を迎えたが、うまくミートすることができなかった。だが武藤は「切り替えて、もう一度チャンスが来ると信じていた」と、次に来るであろう“その時”に気持ちを向けていた。

 たとえ味方のフォローがなくても、またアバウトなボールを出されたとしても、確実にマイボールにできる。カウンターが大きな得点源であるチームにあって、武藤がブレずに自分の仕事を遂行してくれることは戦術上、非常に大事になってくる。さらに「ドリブルを多用するポジションではない」と言いつつも、果敢な突破から相手の退場を誘発している。勢いだけでなく、緩急や間合いの取り方も心得ている。

 そして、武藤の高い貢献度には豊富な運動量が欠かせない。相手との競り合いで力を削ぎ落とされているはずだが、90分間その動きを止めることがない。プレスをかけ、フリーランニングを欠かさず、チャンスの場面には必ず走り込む。簡単なことのようで相当に難しいことを、青赤の背番号14は当たり前のように実行し続けている。

Jリーグの中でも傑出した選手

 この日の逆転ゴールにしても、FKをもらったのは武藤だ。この場面では、川崎が自陣深くでボールを繋ごうとしたところに猛然と駆け寄り、身体を寄せてファウルを受けた。

 そして、このFKから決めたヘディングシュートである。元々「ファーサイドに行くのが戦術的な決まり事だった」そうだが、「相手も油断していると思ったので、ニアで合わせてみようと走った」と振り返る。連戦で心身ともに疲弊している中でこうした駆け引きが武藤にはできる。

 ゴールを奪うのがFWの仕事だが、決めて欲しいところで必ず決めてくれるストライカーは稀有な存在だ。その意味でも武藤はJリーグの中でも傑出した選手といえる。

 移籍報道が盛んになっており、彼が世界を舞台に活躍する姿に期待も膨らむ。チャンスを虎視眈々と狙い、90分間絶え間なく動き続ける。そして、ここぞという場面で結果を残す。青赤の背番号14はJリーグ屈指の選手になりつつある。きっと、『FC東京の武藤嘉紀』を見ていたいという人も大勢いることだろう。

フットボールチャンネル

「FC東京」をもっと詳しく

「FC東京」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ