MOTUL GT-R&ニッサン復活の狼煙。得意の富士500kmを制し、松田次生が歴代最多勝記録を更新

2018年5月4日(金)19時40分 AUTOSPORT web

 ゴールデンウィークの大観衆を集めて開催されたスーパーGT第2戦富士スピードウェイの500km戦は、110周という長丁場ながらスタートからゴールまで接近したバトルが繰り広げられ、GT500クラスは得意のピット戦略を活かしたMOTUL AUTECH GT-Rが今季初優勝を飾った。


 例年大型連休中日のイベント開催となり、今季も多くのスーパーGTファンが詰めかけた富士スピードウェイ。5月4日の決勝日も午前からサーキットの芝生エリア各所にテントやサンシェードの花が咲き、場内駐車場は午前10時前に満車。その後はサーキットに向かう車列が続々と場外駐車場へ誘導されるなど、決勝日5万5千人を超える観客が快晴のスピードウェイに集った。


 予選日午前の濃霧で公式練習が中止となる波乱から始まった週末は、急きょ設けられた30分のプラクティスを経て、予選方式もノックアウトではなく計時方式へと変更。その20分間1発勝負でポールポジションを射止めたのは、この”富士の近道を知る男”こと、立川祐路のZENT CERUMO LC500。そして2番手には亡き山田健二エンジニアに捧げるレースを……と誓うWAKO’S 4CR LC500の大嶋和也がつけ、フロントロウをレクサス勢が独占した。


 その2台に対し、3番手につけたのはMOTUL AUTECH GT-R。決勝レースは開幕戦ワン・ツー・フィニッシュで「ストレートスピードが脅威的」と評されたNSX-GT勢がどんなレース戦略で巻き返しを見せるかが勝負のポイントとなった。


 日曜13時5分開始のウォームアップ走行は、前日の練習時間不足を加味して5分前倒され、13時にスタート。前日の予選時ほどではないものの、開始時点にはホームストレート上は最終側からの強風で追い風となった。この風に乗ってGT500マシンは1コーナー手前のトラップで300km/hを超えるトップスピードをマーク。


 さらに、スタート進行ではおなじみの大旗やのぼりのコース入場が制限されるほどの風となるなか、各陣営がグリッド上で最後のバランス調整を敢行する、慌ただしい決勝前となった。


 GTマシンの隊列は、14時40分に静岡県警察本部白バイ隊を先頭にパレードラップへ。さらにフォーメーションラップを経てクリーンにスタート。立川はホールショットを決めたものの、抜群のダッシュを決めたロニー・クインタレッリのMOTUL GT-Rが、大嶋のWAKO’Sをかわして2番手で1コーナーへ。


 そのままオープニングラップで首位立川を追いつめた23号車MOTUL GT-Rは、ミシュランタイヤのウォームアップ性能の高さを活かしてダンロップでアウトから並びかけ、続く切り返しで早々に首位浮上に成功。


 2番手にドロップしたZENT CERUMOは、続くレクサスコーナーでわずかにワイドとなり、WAKO’Sに並ばれると、ホームストレートまで併走状態が続きそのまま1コーナーへ。


 なんとかポジションをキープした38号車ZENTだったが、この余波で6号車WAKO’Sを筆頭にレクサス陣営が団子状態となり、WAKO’Sは5番手までポジションを落とすことに。さらに4周目にはDENSO KOBELCO SARD LC500が1コーナーで仕掛けてバトルの種をまくと、コカコーラ・コーナーでau TOM’S LC500のインを突いて3番手浮上に成功する。


 その後は、2018年戦力僅差のGT500を象徴するようにラップタイム差の少ない上位勢がじりじりと各ポジション間の間隔を空けていくような展開となるものの、7周目にはGT300の隊列に追いついたところで首位攻防が急接近。トップと2番手の2.5秒あったギャップが一気に縮まっていく。


 なんとか首位をキープし続ける23号車の背後ではレクサス勢のバトルが続くなか、14周目にWedsSport ADVAN LC500が64号車Epson Modulo NSX-GTを1コーナーでアウトからかわして7番手へ。64号車はチョイスしたダンロップタイヤのデグラデーションか、続く15周目にARTA NSX-GT、RAYBRIG NSX-GTと立て続けにかわされていく。


 その前方、4台でのバトルが続いていたレクサス勢の中で、開幕戦の鬱憤を晴らすかのような勢いを見せていたDENSOのヘイキ・コバライネンは、17周目の1コーナーで38号車を仕留めて2番手に浮上。


 さらに1分32秒台のラップタイムを連発して首位を追いかけたDENSOは、22周目にMOTUL GT-Rのリヤを捉えると、ダンロップからセクター3をテール・トゥ・ノーズで追走。最終コーナーで車身を合わせてスリップにつこうとした際、GT300のD’station Porscheとわずかにヒットするも、そのまま伸びを見せ見事23周目についにトップへとおどり出た。


 そのまま前半戦を39号車DENSO、23号車MOTUL GT-R、38号車ZENT CERUMO、36号車au TOM’S、6号車WAKO’Sのトップ5オーダーで終え、最初のピットウインドウを迎えた上位勢は、34周を終えたところでまずはau TOM’S、WAKO’Sがピットイン。48秒6の制止時間でコースへと復帰したau TOM’Sに対し、6号車のフェリックス・ローゼンクビストは1コーナーのブレーキングでロックアップし白煙を上げる場面も。
 
 さらに同じタイミングでは、ピットを目前にしたKEIHIN NSX-GTがGT300にダンロップコーナーで追突され、スピンするアクシデントも発生する。


 36〜38周目終了時点で続々と最初のルーティンを終えたGT500は、首位でステアリングを引き継いだ39号車DENSOのルーキー坪井翔がアウトラップから奮闘。対照的に、2番手でコースへと戻ったMOTUL GT-Rの松田次生のペースが上がらず、後続の38号車ZENT CERUMO、36号車au TOM’Sが接近。その間隙を見逃さなかったau TOM’Sの関口雄飛がダンロップで強引に38号車のインを差して3番手に浮上する。


 一方、中団ではニック・キャシディへと乗り代わった1号車KeePer TOM’S LC500がジリジリとペースを上げ、43周目には100号車RAYBRIG NSX-GTのジェンソン・バトンを、45周目にはARTA野尻智紀をレクサスコーナーで仕留めて、6番手にまで上がってくる。


 その後続を尻目に、首位を行く”デビュースティント”の坪井はタイヤのウォームアップが落ち着くと、1分32秒フラットに近いタイムをきれいにそろえ、ときには1分31秒台を刻む見事なラップを披露。50周時点で2番手とのギャップを6秒にまで広げてみせる。


 その後、日没に向かって気温、路温ともにジリジリと下がり続ける中、60周を越えてきた時点で路面温度は30℃を切り28℃にまで下がり、最終スティントに向けてどんなタイヤチョイスが可能なのかも、最後の勝負に向けた焦点となってきた。


 迎えた2度目のピットウインドウでも、上位勢では”秒差のチェイス”で3番手を守り通したau TOM’Sからピットへ。73周目に関口から再び助っ人のジェームス・ロシターに交替し、残るは37周。52.7秒と長めのストップで最後の長旅へと向かう。


 その2周後から最後のピット作業が本格化し、38号車ZENT CERUMO、1号車KeePerが続々とピットロードに入ってくる。その翌周にはトップの39号車坪井が飛び込むと、1周作業を遅らせたMOTUL GT-Rが松田のインラップの頑張りと、45.3秒の作業でロニー・クインタレッリを首位で送り出し、ここで逆転に成功する。


 そのピットアウト後、残り30周となった終盤80周に入ろうというところで、そのクインタレッリはチームの頑張りに呼応するかのようにファステストタイムとなる1分30秒460をマークしてスパート。その後もひとり1分30秒台を刻んで2番手以下を引き離しにかかる。


 90周を越える頃には39号車との差を10秒にまで広げ一人旅へと突入。残り10周を切る頃にはタイヤマネジメントを含めマシンを労わるかのようなクルージングモードでトップチェッカー。MOTUL AUTECH GT-Rが2017年最終戦以来の勝利を挙げると同時に、松田次生にとっては立川祐路を突き放し、GT500通算最多勝理数を大台の20勝に乗せることとなった。


「序盤はバックマーカーに引っかかってマズいと思ったけど、その後はトップに追いつけそうな感触もあった。そこで(最後のストップに向け)インラップを全力で頑張った。それと同じように、チームも本当に頑張ってくれた」と、松田は仕事を完遂した安堵の表情で振り返った。


 続く2位表彰台には、ミドルスティントで見事なデビューランを披露した坪井の貢献が光ったDENSO KOBELCO SARD LC500、3位にZENT CERUMO LC500のレクサス勢が続き、4番手にも残り2周でWAKO’Sをかわしたau TOM’Sが入った。


 一方、開幕戦の下馬評とは異なる苦戦ぶりを見せたNSX-GT勢は、決勝前のウォームアップで最速を記録し、序盤は黒白旗の掲示がありながらも随所でバトルを展開したARTA NSX-GTの8位が最上位。山本尚貴/ジェンソン・バトンのRAYBRIG NSX-GTが9位に続いている。


 また3メーカーで各1台ずつのヨコハマタイヤを履くマシン勢は、WedsSport ADVAN LC500、MOTUL MUGEN NSX-GTともに左リヤタイヤのパンクに見舞われ、フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rもタイヤトラブルなどで3度のピットを強いられるなど、苦しい富士ラウンドとなった。


 次戦となる第3戦鈴鹿サーキットは、例年夏場に開催された1000kmとは異なり5月最終週へとカレンダーが移動。視点を変えれば、ここ富士でハンデウエイトを積むことのなかったNSX-GT勢が、言わずと知れたホンダのホームコースでレースを席巻する可能性もある。第2戦にして、シリーズの勝負とその行く末が見える1戦となりそうだ。


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