阪神・デュプランティエの能力を最大限に引き出す捕手・坂本の構え 気配りと心遣いで来日初勝利導いた
2025年5月4日(日)8時0分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神7—1ヤクルト(2025年5月3日 甲子園)
【畑野理之の談々畑】阪神・坂本誠志郎捕手はほぼ真ん中にミットを構えていた。極端に内外角に寄ったり、低めを意識させるジェスチャーもまったくなく、ジョン・デュプランティエを6回まで無失点にリードした。
150キロを超える力のある真っすぐはあえて内外高低の四隅を狙わせていない。9分割したストライクゾーンの低め3枠に真っすぐが決まることは少ない。ほとんどが真ん中から上の枠に集まる。それでもファウルにさせて、追い込んでからはスライダー、チェンジアップ、カーブ…。特にタテに大きく曲がり落ちるカーブは、高め真っすぐと“対”になって非常に有効だ。
「デュプランティエ本人が強いボールは高めがいいと考えて投げているんです。どんどん追い込んで、ストライクゾーンで勝負したいのだと」
相手打者の特徴や、どうしてもこの場面はこのコースに投げてこいと要求するとき以外は、サインは球種だけ伝えて、スッと真ん中付近に構える。ストライクからボールになる球で誘うのではなく、ゾーン内で振らせて勝負するのが助っ人のスタイルだ。
投手主導で捕手は構えているだけのように見えるが、そうではない。坂本はしっかりと操縦している。デュプランティエと組んだ試合では、無走者では必ず右膝を地面につけて構える。基本的にはそうしない。リリーフ陣に継投した7回以降はしていないし、ヤクルトの中村悠平もしていなかった。デュプランティエは三塁側(右打席の方)に高く抜けることが多く、右膝を下げることで、マウンドから立てた左膝まで、目には見えないラインを引いて意識させているのだとか。
「そっちに抜けた球は打者の反応もわからないですし、あまり意味がないので、左膝で“壁”をつくるというか、目標にさせるというか。(2月のキャンプの)沖縄のブルペンで、こうしたらいい球が来るやんかって思って。もしそれで引っかかりだしたら、角度を変えるとか、立てる足を右と左で逆にするとかします」
気配りと心遣い…。来日初勝利は坂本のエスコートがあってこそだろう。「でも普段やらないから、いつもデュープの時は筋肉痛になってるんですよ」。そう言って右足をさするしぐさも、本当にうれしそうだった。