衝撃ダウンからなぜ逆転されたのか 挑戦者カルデナスが語った井上尚弥の“技術力”「パワーというより何発も打ち込んでくる」
2025年5月5日(月)13時54分 ココカラネクスト

井上の猛ラッシュを前に沈んだカルデナス。(C)Getty Images
ドラマチックな展開にボクシングのメッカも沸き立った。
現地時間5月4日、米ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われた世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ12回戦で、統一王者の井上尚弥(大橋)は、WBA同級1位のラモン・カルデナス(アメリカ)と対戦。8回でレフェリーストップが入る形での完勝を収めた。
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もっとも、試合を興味深いものへと昇華させたのは、「人生を懸ける」と戦前から闘志十分だった挑戦者の一撃だった。一進一退の攻防を見せていた2回に井上の打ち終わりを狙いすましたカウンターからの見事な左フックでダウンを奪ったのだ。
戦前の下馬評で「トランプ大統領がローマ教皇の葬儀でスタンディングオベーションを受けるのと同じくらいの絵空事だ」(英メディア『Boxing News』)と記されるほどの予想がされていた中での衝撃的な展開だった。
しかし、リングに倒れた直後に陣営に「大丈夫」と合図を送った井上は、騒然となる会場の雰囲気をよそに冷静だった。徐々に手数を増やしていって、カルデナスを追い詰めると、7回にはラッシュの展開から右ショートでダウンを奪い、完全に相手を防戦一方にする。
そして、続く8回も猛攻を展開。劣勢となったカルデナスは成す術なく、コーナーサイドに押し込められると、見かねたレフェリーが試合を止めた。
絶対王者が崩れるところから始まった衝撃の一戦。それでも「非常に驚きましたけど、冷静に組み立てなおすことができました」と逆転してみせた井上の強さは見事だった。
一時は優位に立ち、「恐れるものは何もなかった」というカルデナスは、なぜ逆転を許してしまったのか。試合直後にリング上でフラッシュインタビューを受けた勇敢だった挑戦者は、こう漏らしている。
「イノウエはパワーというより6発、7発と何発も打ち込んでくる勢いが凄かった」
一発の重みも当然あるだろう。しかし、それ以上に打ち合いとなった局面で、反撃の余地を与えない圧倒的な手数の多さにカルデナスは舌を巻いた。小気味よく繰り出すジャブも含めてダメージを蓄積させていった井上の技術力はやはり図抜けていると言えよう。
研究されてもなお、挑戦者を凌駕する。規格外の井上の強さは米国でも健在だった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]