2011年Jリーグ。柏がJ1昇格&即優勝、仙台は東日本大震災からの復興のシンボルに【Jリーグ平成全史(19)】

5月5日(日)7時0分 フットボールチャンネル

2011年(平成23年)

 1993年に開幕したJリーグは今季で27年目を迎えている。平成とともに歩み成長し、時代は令和へと移行した。フットボールチャンネル編集部では、昨季までの26年間を1年ずつ振り返っていく。今回は2011年(平成23年)。

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 J2からは柏レイソル、ヴァンフォーレ甲府、アビスパ福岡の3クラブがJ1に昇格。一方、J1からJ2へ降格したのはFC東京、湘南ベルマーレ、京都サンガF.C.だった。そしてJFLを制したガイナーレ鳥取がJ2昇格を果たした。

 Jリーグ準加盟クラブの1つだったFC町田ゼルビアは前年のJFLで3位に入ったものの、2010年9月の入会審査で本拠地・町田市立陸上競技場に不備があったとしてJ2への入会審査を見送っていた。準加盟クラブが成績面でJ2参入条件を満たしながら昇格しなかったのは初めてだった。

●J1参加クラブ
ベガルタ仙台
モンテディオ山形
鹿島アントラーズ
浦和レッドダイヤモンズ
大宮アルディージャ
柏レイソル
川崎フロンターレ
横浜F・マリノス
ヴァンフォーレ甲府
アルビレックス新潟
清水エスパルス
ジュビロ磐田
名古屋グランパス
ガンバ大阪
セレッソ大阪
ヴィッセル神戸
サンフレッチェ広島
アビスパ福岡

●J2参加クラブ
コンサドーレ札幌
水戸ホーリーホック
栃木SC
ザスパ草津
東京ヴェルディ
ジェフユナイテッド市原・千葉
FC東京
横浜FC
湘南ベルマーレ
カターレ富山
FC岐阜
京都サンガF.C.
ガイナーレ鳥取
ファジアーノ岡山
徳島ヴォルティス
愛媛FC
ギラヴァンツ北九州
サガン鳥栖
ロアッソ熊本
大分トリニータ

 J1のレギュレーションに大きな変更はなし。J2は20クラブとなったことで全クラブが毎節試合を開催することとなった。また、J2の空き枠が残り2つとなったため、2011年で22クラブまで埋まってしまった場合、翌年からJ2とJFLの間で入れ替え戦を行う予定となった。

主な出来事

 この年の最も大きなトピックは、間違いなく東日本大震災だろう。開幕戦を終えた直後の3月11日に、宮城県沖でマグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測至上最大の大地震が起きた。地震のみならず東北地方の太平洋側を襲った津波や、福島県の東京電力福島第一原発での事故などの影響は日本社会全体に及び、サッカーも例外ではなかった。

 Jリーグはまず地震翌日から2日間にわたって予定されていたJ1およびJ2第2節の全試合中止を決定。その後、福島第一原発以外でも東京電力管内の多くの発言所で地震の影響が出て、日本では65年ぶりの計画停電が実施される運びとなった。

 それによって日本全国で深刻な電力不足に陥り、Jリーグも興行を開催できる状況ではなくなる。3月14日には同月内に予定されていたリーグ戦やカップ戦全試合の中止も決定された。その後、3月22日には計画停電や東北地方や関東地方のクラブが被災したことも踏まえ、4月20日までに予定されていた全てのリーグ戦やカップ戦の中止が発表された。

 4月23日、Jリーグが再開する。本拠地のある仙台市が被災し、ホームスタジアムも被害を受けた仙台はアウェイで川崎Fと対戦し2-1で勝利。仙台の手倉森誠監督は、試合終了とともにスタッフらと抱き合って大粒の涙を流した。

 その仙台は開幕から12試合連続無敗(6勝6分け)で一時は首位に立つ快進撃を見せた。さらにJ2から復帰1年目の柏もスタートダッシュに成功し16試合目まで、ほとんどの節で首位に立ち続ける。だが、仙台は13試合目でシーズン最初の敗戦を記録すると、急失速して優勝争いからこぼれ落ちていく。

 中盤から上位に現れたのは横浜FM。木村和司監督に率いられたトリコロール軍団は17試合目が終了した時点で柏から首位の座を奪い取った。その後、序盤は振るわなかったG大阪が強力な攻撃力を武器に台頭、前年度王者の名古屋も意地を見せ、優勝争いはこの2クラブと柏、横浜FMを合わせた4クラブに絞られた。

 最終的に頂点に立ったのは柏だった。2年ぶりに最終節までもつれた優勝争いだったが、自力優勝の可能性を残していた柏が浦和を下し、J2から復帰1年目で即J1制覇という偉業を成し遂げた。東日本大震災の大きな影響を受けた仙台は、クラブ至上最高のJ1・4位に入り被災地復興の象徴として勇気を与えた。

 残留争いは序盤から低迷した福岡と山形が、他のチームに大きく引き離された。福岡が4試合を残して、山形は3試合を残した段階でJ1降格が決まっている。残る1枠は終盤までもつれ、浦和と甲府の争いに。J屈指の予算規模を誇る浦和は終始苦しいシーズンを送ったが、最後に意地を見せて甲府を振り切って残留決定。甲府は1年でJ2へ戻る、厳しい現実を突きつけられた。

 J2は前評判どおり、圧倒的な戦力を揃えたFC東京がいち早く1年でのJ1復帰とJ2制覇を決めた。また、J2クラブとしては初めて天皇杯優勝も成し遂げ、翌年は昇格組ながらAFCチャンピオンズリーグに出場することになる。

 FC東京を除いた残る2枠をめぐる争いは熾烈だったが、千葉や栃木が失速して脱落。鳥栖は後半戦に16試合負けなしの快進撃を見せて2位で初のJ1昇格を決めた。最後の1枠は最終節まで縺れたが、札幌が王者FC東京を下し、徳島が岡山に敗れたため、札幌が4年ぶりとなるJ1への挑戦権を掴んだ。

J1第7節。東日本大震災からの再出発

 3月11日に発生した東日本大震災の影響で約1ヶ月半にわたって中断し、4月23日から再スタートを切ったJ1の再開初戦。被災地・仙台に本拠地を置くベガルタ仙台はアウェイでの川崎フロンターレ戦に臨んだ。両者の関係はこの試合から一気に深まり、今では等々力陸上競技場でホームサポーターとアウェイサポーターの間を隔てる緩衝帯が一切ない、非常に友好的な対戦カードとなっている。

両チームメンバー

川崎フロンターレ

スタメン
GK:杉山力裕
DF:田中裕介
DF:井川祐輔
DF:横山知伸
DF:小宮山尊信
MF:柴崎晃誠
MF:稲本潤一
MF:登里享平
MF:中村憲剛
FW:矢島卓郎
FW:山瀬功治

サブ
GK:相澤貴志
DF:菊地光将
DF:田中雄大
MF:田坂祐介
FW:ジュニーニョ
FW:棗佑喜
FW:久木野聡

ベガルタ仙台

スタメン
GK:林卓人
DF:菅井直樹
DF:曺秉局
DF:鎌田次郎
DF:朴柱成
MF:高橋義希
MF:梁勇基
MF:角田誠
MF:太田吉彰
FW:赤嶺真吾
FW:関口訓充

サブ
GK:桜井繁
DF:田村直也
MF:マックス
MF:斉藤大介
MF:富田晋伍
MF:松下年宏
FW:中島裕希

 序盤は気迫あふれる仙台が多くのチャンスを作るが、先制したのは川崎F。37分、2トップの一角に入っていた山瀬が右に流れて登里からのスルーパスを引き出し、折り返しに後方から走りこんできた田中裕介が合わせる。

 後半には仙台が反撃。72分に太田吉彰のシュートがDFに当たってコースが変わりゴールイン。1-1に追いつく。川崎Fもジュニーニョ投入などで勝ち越しを狙うが、87分に梁のフリーキックに鎌田が頭で合わせて決勝点を奪った。仙台の粘りと逆転勝利が特別な試合を彩り、この1勝がのちの快進撃につながっていく。

ベストイレブン、個人賞

ベストイレブン
GK:楢崎正剛(名古屋グランパス)
DF:田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)
DF:近藤直也(柏レイソル)
DF:酒井宏樹(柏レイソル)
MF:ジョルジ・ワグネル(柏レイソル)
MF:レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル)
MF:清武弘嗣(セレッソ大阪)
MF:藤本淳吾(名古屋グランパス)
MF:遠藤保仁(ガンバ大阪)
FW:ジョシュア・ケネディ(名古屋グランパス)
FW:ハーフナー・マイク(ヴァンフォーレ甲府)

 優勝した柏から最多の4人が選出された。大ブレイクを果たし、のちに日本代表に欠かせない右サイドバックとなる酒井宏樹、守備の要・近藤直也、悪魔的な左足キックを武器に猛威を振るったジョルジ・ワグネル、圧倒的なテクニックとプレービジョンで攻撃の全権を握ったレアンドロ・ドミンゲス。いずれもインパクト絶大で、J1昇格から即優勝の立役者だった。

個人賞
最優秀選手賞:レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル)
得点王:ジョシュア・ケネディ(名古屋グランパス)
ベストヤングプレーヤー賞:酒井宏樹(柏レイソル)
フェアプレー個人賞:梁勇基(ベガルタ仙台)、太田宏介(清水エスパルス)
最優秀監督賞:ネルシーニョ(柏レイソル)
優秀審判賞:西村雄一
優秀副審賞:相楽亨
功労審判員賞:岡田正義
功労選手賞:三浦淳宏、松田直樹

 Jリーグの年間MVPに輝いたのは柏のJ1制覇をけん引したレアンドロ・ドミンゲス。前年にJ2で13得点を奪っていたブラジル人MFは、J1でそれを上回る15得点を挙げた。また、この年に横浜FMから当時JFLの松本山雅FCに移籍し、夏に急性心筋梗塞で亡くなった松田直樹さんに功労選手賞が贈られた。

J2 Exciting 20
河合竜二(コンサドーレ札幌)
本間幸司(水戸ホーリーホック)
水沼宏太(栃木SC)
熊林親吾(ザスパ草津)
深井正樹(ジェフユナイテッド市原・千葉)
今野泰幸(FC東京)
阿部拓馬(東京ヴェルディ)
野崎陽介(横浜FC)
高山薫(湘南ベルマーレ)
黒部光昭(カターレ富山)
押谷祐樹(FC岐阜)
宮吉拓実(京都サンガF.C.)
服部年宏(ガイナーレ鳥取)
植田龍仁朗(ファジアーノ岡山)
柿谷曜一朗(徳島ヴォルティス)
齋藤学(愛媛FC)
安田晃大(ギラヴァンツ北九州)
豊田陽平(サガン鳥栖)
南雄太(ロアッソ熊本)
前田俊介(大分トリニータ)

J2 Most Exciting Player
今野泰幸(FC東京)

 この年、事前のファン投票で各クラブから1人ずつが「J2 Exciting 20」としてノミネートされ、シーズン終了後のJリーグアウォーズの観覧車の投票によって「J2 Most Exciting Player」が選出された。記念すべき初代受賞者はFC東京のJ1昇格に貢献した今野泰幸に。ノミネート選手にはのちに日本代表入りする若手選手や、各クラブを象徴する選手が多く含まれていた。

この年、世の中では何が?

 2011年は東日本大震災なしには語れない。2019年3月8日時点で死者1万5895人、行方不明者2539人、負傷者6157人を出した未曾有の大災害は、日本社会の流れそのものを大きく変えてしまった。まだ復興は道半ばだ。

 サッカー界では1月に日本代表が2大会ぶりのアジアカップ制覇を成し遂げた。グループリーグからアクシデント続きで、PK戦までもつれた準決勝の韓国戦では香川真司が骨折の重傷を負ってしまったが、決勝のオーストラリア戦にドラマが待っていた。

 0-0のまま突入した延長戦も後半に差し掛かった109分、長友佑都からのクロスをペナルティエリア内で李忠成がボレーシュート。名手マーク・シュウォーツァーの守るゴールをこじ開け、日本代表にアジアのタイトルをもたらした。

 その後、3月に予定されていたモンテネグロ代表やニュージーランド代表との親善試合は東日本大震災の影響で中止となった。もともと会場として確保されていた国立競技場も計画停電などの影響で節電がもとめられる状況下、余震や交通機関、電力不足の影響のない大阪・長居スタジアムに変更となったが、それでも2ヶ国の来日は実現せず。

 そんな中、日本代表はブラジルワールドカップのアジア予選に向けた強化の大事な時期でもあり、Jリーグ選抜と対戦する親善試合「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!」を開催することが決まる。

 アルベルト・ザッケローニ監督は26人の日本代表メンバーを招集。その中には海外組が12人含まれていたが、国際Aマッチでなくなったことにより代表チームに拘束力がない中でも、各クラブの協力あって全員の参加が可能に。

 Jリーグ選抜は、リーグの顔とも言える20人を選び3月29日に長居スタジアムで異例の親善試合が実現した。試合は15分に遠藤保仁、19分に岡崎慎司と日本代表が立て続けにゴールを奪うが、Jリーグ選抜も82分に三浦知良が一矢報いるゴールを挙げる。大阪の夜にカズダンスも飛び出し、日本全国が大いに沸いた。この試合で使用されたユニフォームや用具は後日インターネット上でオークションにかけられ、売上金は震災からの復興に寄付された。

 そして夏にはなでしこジャパンがドイツで行われたワールドカップに出場し、見事に初優勝。澤穂希や宮間あやらが中心となったチームの快挙は社会現象を巻き起こし、女子サッカーブームの先駆けとなった。男子も女子もメジャータイトルを獲得し、日本サッカー界は前年の南アフリカワールドカップから続いていた盛り上がりを加速させていった。

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