“ゴルフ界のアイドル”菅沼菜々の復活を後押しした父の言葉
2025年5月5日(月)15時13分 スポーツニッポン
【福永稔彦のアンプレアブル】女子ゴルフのパナソニック・オープンで菅沼菜々(25=あいおいニッセイ同和損保)が2年ぶりのツアー3勝目を挙げた。
トロフィーを掲げる菅沼に優しい眼差しを向ける父・真一さん(56)の姿があった。
「24年はケガに始まり、肺炎で入院もした。うまくいかない1年で、毎回予選落ちしてロッカーで泣いていた。結果が出ない毎日でゴルフをやめたくなるぐらいの気持ちだったと思う」。最初に口にしたのは、喜びの言葉ではなく苦しんだ昨年のことだった。
その後「私は支える側なので、半分くらい嬉しい」と少しだけ顔を綻ばせた。
ずっと二人三脚で歩んできた。真一さんは雑誌などでゴルフを勉強し、ジュニア時代から愛娘を指導してきた。また「広場恐怖症」のため公共交通機関を利用できない娘のため、移動の自動車でハンドルを握っている。
菅沼は23年に2勝を挙げたが、24年は右膝の負傷をきっかけに極度のスランプに陥った。9月の住友生命レディース東海クラシックは直前に39度の高熱を出して欠場。帰京して病院で肺炎と診断されて入院した。
悩み苦しむ姿を見てきた真一さんは「心労とストレス。意外と責任感が強いので、やらなきゃいけないという思いがあったと思う」と思いやった。
アイドル好きの菅沼は自身も“ゴルフ界のアイドル”として様々な活動を行ってきた。インスタグラムのフォロワーは8万人以上。オフには臼井麗香とアイドルユニット「Chell7」を結成しライブを開催。今月には初のデジタル写真集「Nana’s moment」を発売した。多くのファンに支持されているが、本業が振るわなかった昨季は批判的な声も届いた。
真一さんは当時を思い出し「発信をすれば叩かれるという繰り返しで、つらくなってきた」とつぶやいた。
トンネルを抜け出せないまま、年間29試合に出場し予選落ち16回。メルセデスランク79位でシードを失った。11月の最終予選会でも103人中102位に沈んだ菅沼は1カ月半ゴルフから離れる決断をした。
真一さんはどん底に落ちた娘にあえて励ましの言葉を掛けなかった。「彼女の人生だし、好きにしていいよ、いつ辞めてもいいよと言っていた。本人が自分で決めて、誰かのせいではなく、主体的に自分がやるんなら構わないし、自分で辞めるなら構わないと」
そんな父に、菅沼は「もう1回しっかり頑張る」とゴルフを続ける覚悟を伝えた。
そして再起を懸けたシーズンの4戦目での復活優勝。真一さんは「応援はありがたいけど、プレッシャーになることも当然ある。それでもプロスポーツ選手は当たり前のように受け止めて結果を出さないといけない。そういう意味では今日は本当によく頑張った」と重圧を乗り越えて勝ち切った娘を称えた。
今回の勝利で来季終了までの出場権を確保した。毎週、自動車で全国各地を転戦する生活がまた始まる。次戦ワールド・サロンパス杯(茨城)を終えると、SkyRKBレディース(福岡)に備えて九州まで移動する。
真一さんは「Vポイント(千葉)から(アクサ・レディースの)宮崎が1400キロ。マネジャーと150キロずつ交代で(運転して)20時間かかった。今回も1200キロあるので…。出れるのは嬉しいんですけどね」と苦笑いを浮かべた。(スポーツ部専門委員)