井上尚弥が見せた最強だからこその“責任感” 米名伯楽が伝説シュガー・レイと比肩させた「衝撃ダウンの見方」

2025年5月10日(土)6時0分 ココカラネクスト

カルデナスにカウンターを見舞われて崩れた井上。しかし、彼はそこから立て直した。(C)Getty Images

懐疑論も渦巻く一戦となったが…

 たしかに鮮烈なダウンは喫した。しかし、そこから冷静に試合を立て直した姿は、“モンスター”と恐れられる所以を物語っていた。

 ドラマチックな展開で大きな反響を生んだのは、現地時間5月4日に米ネバダ州ラスベガスで行われたボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一戦だ。同階級の“絶対王者”に君臨する井上尚弥(大橋)は、WBA世界同級1位のラモン・カルデナス(米国)を迎えった防衛戦で2回にダウンを取られながらも8回45秒TKO勝ち。あらためて偉才ぶりを発揮した。

【動画】怒涛のラッシュで圧倒! 井上尚弥のカルデナス撃破シーンをチェック

 序盤に井上は崩れた。2回終了間際、カルデナスが放った狙いすましたカウンターの左フックを被弾し、まさかのダウン。「世界最高」と言われる日本人ファイターの喫したキャリア2度目のダウンに会場が騒然となった。

 しかし、当人は「全く足にはきてない」と冷静だった。4回以降に試合の組み立て直しに成功した32歳は、そこからカルデナスを圧倒。完全に守勢に回した7回にダウンをもぎとると、続く8回にはレフェリーが止めに入るほどの猛ラッシュで試合を終わらせた。

 一部のファンの間では懐疑論も渦巻く一戦となったが、それでも勝ち切った。しかも相手を文字通り打ち倒しての白星だ。ゆえに井上の戦いぶりには、米国のご意見も舌を巻いた。

 かつて元世界ヘビー級王者のマイク・タイソン(米国)を指導した名トレーナーのテディ・アトラス氏は、自身がホストを務めるYouTubeチャンネル『THE FIGHT with Teddy Atlas』において、「偉大な男、特別な男、そして稀な男。それはイノウエやウシク、クロフォードのような男。昔でいえばシュガー・レイ・ロビンソンやヘンリー・アームストロングのような男」とボクシング界で“最強”とされる名手たちの名前を列挙。その上で自らが考える「偉大さ」を説いた。

「偉大な男というのは、偉大さを世の中に理解させるため、何か壊滅的なことを起こす必要がある。彼らがどれほど偉大であるかを見せる必要があるんだ。彼らはほとんどの相手を倒せるだろう。偉大さ、才能、考え方、高いレベルのパフォーマンスを見せる責任感。これらは多くのボクサーを凌駕している」

「真の偉大さというものは、身の危険を感じるまで現れない」

 一方で「ただ、真の偉大さというものは、身の危険を感じるまで現れない。その時に突然、彼らがどれほど偉大なのかを理解することになる」とも続けるアトラス氏は、今回のカルデナスに崩され、やや危うさも見せた井上の「ダウンシーンの見方」も語っている。

「あの時(ダウンのシーン)、ほんの少しの無謀さで、イノウエの右腕が下がった。そこにカルデナスはカウンターで左フックを食らわせ、ダウンさせた。しかし、そこからイノウエは偉大さを見せた。彼はその時気づいたのさ。『ああ、ミスったな』ってね。これこそが偉大さというものだ。

 彼は決してこうは言わないだろう。『とにかく足を使おう』『逃げよう』『距離を取ってカウンターで勝とう』とはね。偉大さとは、己が誰よりも偉大であると信じることにある。偉大さとは、傷ついた時や身の危険を感じた時でも自信を失わないことなんだ。イノウエには常にそれがある」

 冷静に試合状況を見定め、決して守勢に回らなかった。そのクレバーさこそ、アトラス氏曰く井上の「偉大さ」であり、シュガー・レイ・ロビンソンら偉人と比較される理由であった。

 繰り返すが、このカルデナス戦で井上は確かに崩された。しかし、結果は圧勝。勝つか、負けるかを争うボクシングにおいて、この「結果」こそ、改めて井上を評価すべきポイントではないだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

ココカラネクスト

「井上尚弥」をもっと詳しく

「井上尚弥」のニュース

「井上尚弥」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ