新生クプラEKS、初代王者マティアス・エクストロームが初日最速からの完全制覇/ETCR開幕戦

2022年5月12日(木)12時55分 AUTOSPORT web

 創設2年目の今季より、シリーズ名称をPURE ETCR(ピュアETCR)改め『FIA eツーリングカー・ワールドカップ』へと改称したTCR規定派生の電動ツーリングカー選手権が、WTCR世界ツーリングカー・カップの併催イベントとしてフランスのポー市街地で開幕。3マニュファクチャラー、12名のドライバーがふたつのプールに分かれて争った勝負は、初年度王者マティアス・エクストローム率いる新生クプラEKSがトップ3を独占するロケットスタートを披露。代表自らが開幕戦を制する結果となった。


 昨季初年度はハンガリーに拠点を置くゼングー・モータースポーツとのジョイントチームで参戦したクプラ陣営は、エクストロームが創設したEKSが運営を引き継ぐかたちでセアト・クプラe-Racerを投入。そのクプラ×ゼングー・モータースポーツでもチームメイトを務めたジョルディ・ジェネに加え、トム・ブロンクビストやエイドリアン・タンベイが新加入し、エクストローム自身もエースとしてタイトル防衛に挑むこととなった。


 一方、こちらも同じくヒョンデ・ヴェロスターN ETCRを走らせるヒョンデ・モータースポーツNは、初年度にタイトルを争ったジャン-カール・ベルネイを筆頭に、移籍加入のミケル・アズコナや2019年WTCR王者ノルベルト・ミケリスが参入。ケビン・チェコンとニッキー・キャツバーグが数戦ずつシートをシェアするラインアップとした。


 そして唯一のサルーンモデルであるアルファロメオ・ジュリアETCR投入のロメオ・フェラーリは、DTMドイツ・ツーリングカー選手権で戦って来たワールドクラスのタレントを招聘。ベルギー出身のマキシム・マルタンに元王者のブルーノ・シュペングラーを起用し、残留のルカ・フィリピと地元イタリア出身のオールドルーキー、ジョバンニ・ヴェンチュリーニの布陣で挑む。


 そのレースフォーマットも、ふたつのプールに分かれて日曜スーパーファイナル進出を目指す昨季同様の形態となるが、その名称が『プールA』『プールB』から、著名映画シリーズを思わせる『Fast』&『Furious』へと改称。全12名が土曜日の予選と準々決勝に出場し、日曜日の準決勝に駒を進めたドライバーたちが週末プログラムを締めくくる最終決戦に臨む。


 その両プールとも予選ポールシッターが準々決勝の戦いも優位に進め、プール『Fast』ではヒョンデのエース、ベルネイが最速を記録してアルファロメオのマルタンとともに勝利を収める。しかし技術委員はベルネイに対し、準々決勝で許可されたよりも高い電力レベルを使用したことを発見し、ヒョンデを正式結果から除外。代わってクプラEKSのブロンクビストが勝利を収め、プール『Furious』では同じくクプラEKSのエクストロームと、初参戦シュペングラーのアルファロメオが勝利を挙げた。


 明けた日曜朝の準決勝は、それぞれプール『Fast』でクプラのタンベイと、ヒョンデのミケリスが、プール『Furious』ではエクストロームが勝利を挙げたのに加え、伏兵ヴェンチュリーニがETCR初のセッション制覇を達成する。


 この準決勝より長丁場となるスーパーファイナルに向け、プール『Fast』で勝ったタンベイは、勝負を前に「確固たる戦略が鍵になる」との見通しを示した。

引き続き、3マニュファクチャラー、12名のドライバーが参戦する『FIA eTouring Car World Cup』
組み分けの名称も『プールA』『プールB』から、著名映画シリーズを思わせるプール『Fast』&『Furious』へと改称された
CUPRA EKSのエイドリアン・タンベイが、初参戦ながらプール『Fast』でのリードを築く


■エクストローム率いるクプラEKSが完勝


「ここへ来て、ようやくクルマにも慣れてきた感じだ。事前テストはあったけれど、そこでは充分にドライブできたとは言えない状況だったからね」と語った元アウディ・ワークスのタンベイ。


「この電動ツーリングカーの世界とフォーマットは非常にエキサイティングだ。すべてが新しく、幸運なことに僕らにはパフォーマンスとペースがあるようだ。昨日は少し間違いを犯したが、僕は自分のいるプールをリードできている。今、もっとも重要なことは、そのトラック上での性能を基礎にスーパーファイナルのための良い戦略を立てることだ。このパワーでこれほど多くの周回をドライブするのは初めてだから、戦略こそが鍵になると思うよ」


 その言葉どおり、スーパーファイナル・プール『Fast』でスタートから優位に立ったタンベイは、僚友のブロンクビストを従え快走。背後ではアルファ対決の末にマルタンの先行を許したフィリピが、ヒョンデのベルネイにヒットされスピン。


 バリアへの衝突で電気回路の保護機能が作動し、ドライバーを車内に残したまま区間ダブルイエローでセッションが進む波乱もありつつ、勝者タンベイにブロンクビスト、マルタンのトップ3に。4位ベルネイの背後には、トラブルからピットスタートを強いられたミケリスが続く結果となった。


 一方、フィリピのトラブルにより、車両をシェアする伏兵ヴェンチュリーニの出場機会が潰えたプール『Furious』スーパーファイナルは、アルファロメオのシュペングラー、ヒョンデのアズコナを抑えたエクストロームがスタートで首位を奪う展開に。


 シュペングラーをパスしたのち、高速セクションで首位エクストロームとのギャップを詰めていったアズコナだったが、フィニッシュラインまで貫禄のディフェンスラインを披露したエクストロームが完勝を挙げ、アズコナ、シュペングラーのトップ3となった。


 この結果、100ポイントを獲得したエクストロームが週末を制し、92ポイントのタンベイ、79ポイントのブロンクビストと、クプラEKSがスタンディングでも上位を占拠するオープニングとなった。


「クプラとEKSの最初の週末をワン・ツー・スリーで終了することは、夢の結果だね」と、全セッション制覇を達成した初代王者。「エイドリアンとトムも素晴らしい仕事をした。最終的に勝者はひとりだけで、それが僕であることに満足しているけれど、このメンバーでシリーズを戦えるのは本当に心強いよ」と続けたエクストローム。


「この週末、勝負の内容自体は実に僅差で厳しかった。ミケル(・アズコナ)とは良い戦いができたが、彼が僕のチームメイトだった昨年には自分が持てるすべての技術とクラフトを伝授しただけに、なんだか弟とレースをしているように感じたよ(笑)。まだ今季は多くのレースが残っているし、次のイスタンブールも楽しみにしている」


 そのFIA ETCR第2戦イスタンブールは、5月20〜26日の週末に争われる。

こちらも初参戦の元DTMドライバー、マキシム・マルタンもプール『Fast』のスーパーファイナルで3位に入賞
トム・ブロンクビストも週末獲得ポイントで3位に喰い込み、新生CUPRA EKSがトップ3を独占する結果に
今季最初のチャンピオンシップリーダーに立ったマティアス・エクストローム。タイトル防衛に向け好スタートを切った

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