後退こそが転機 R・マキロイの圧勝【舩越園子コラム】

2024年5月13日(月)12時0分 ALBA Net

圧勝で大会4勝目を挙げたマキロイ。そのターニングポイントは、序盤の苦境にあった。(撮影:GettyImages)

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PGAツアー今季6つ目のシグネチャー・イベントとなったウェルズ・ファーゴ選手権は、ローリー・マキロイがザンダー・シャウフェレに5打差をつけて圧勝し、今季2勝目、通算26勝目を挙げた。


とはいえ、最終日の優勝争いのすべてがマキロイの独壇場だったわけではない。むしろ序盤は、1打リードでサンデー・アフタヌーンを迎えたシャウフェレが優勢だった。

「ビッグモーメントは7番だった」

マキロイがそう振り返るのは7番パー5。2打目でなんとかグリーンを捉えたものの、3パットしてパーとなったマキロイを傍目に、シャウフェレは悠々2オンに成功。イーグルパットを沈め、リードを2打に広げた。

このホールでマキロイが感じた「ビッグモーメント」とは、自分がシャウフェレから「大きく引き離された瞬間」という意味だった。しかし、引き離されたからこそ、ここから先は引き戻す。そんな意識がマキロイの中に芽生え、その意識が8番からの快進撃につながった。

8番、9番は、どちらも3メートルを沈めて連続バーディを獲得し、シャウフェレに並んだ。そしてパー5の10番で2オンして10メートルのイーグルパットを沈めると、単独首位へ浮上。波に乗り始めたマキロイのゴルフと反比例するかのように、シャウフェレのゴルフは少しずつ狂い始め、そんなシャウフェレにさらにダメ押しするかのように、マキロイは13番で4メートル、14番で2メートルを沈めた。さらに15番(パー5)でバンカーから直接イーグルを奪うと、狂喜した大観衆は「ローリー、ローリー」の大コールを巻き起こした。

この時点でコースレコードに並ぶ通算19アンダーとなり、あと1つスコアを伸ばせば、レコード更新だった。しかし、16番、17番はバーディパットを決められず、最終ホールは2打目がグリーン奥の池へ転がり込み、記録更新はならなかった。

それでもクェイルホローのギャラリーは、18番グリーンへ向かって歩くマキロイを温かい拍手と「ローリー!ローリー!」のコールで讃えた。最後はダブルボギー・フィニッシュとなったが、それでも2位に5打差。まさに圧巻の勝利だった。

2007年に鳴り物入りでプロ転向したマキロイが、「なかなか勝てない」と言われながら、ついに初優勝を挙げたのが、2010年の今大会だった。翌年、全米オープンを制し、2012年には全米プロを制し、ビッグスターと化したマキロイは、2015年と2021年にも今大会で勝利。そして今年、大会4勝目を挙げた。

「このクェイルホローの人々は、20歳から35歳のきょうまでの僕の成長をずっと見守ってくれている。この場所で4度も勝利できたことは、この上ない幸運だ」

今季9試合に出場し、予選落ちは皆無。4月のマスターズに備え、専属コーチではないブッチ・ハーモンにスイングチェックを依頼し、セカンド・オピニオンを求めて、スイングをさらに磨いた。

優勝を悲願に掲げ続けているマスターズでは、今年も勝てなかったが、その後はアイルランドの親友シェーン・ローリーとペアを組んで出場したチューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオーリンズを制して通算25勝目を挙げると、今大会でも勝利して出場2試合連続優勝を達成した。

「自信を抱いて出場したニューオーリンズで勝ち、スイングが一層よくなったと感じていた今週も優勝。来週に向けて、いい感じになってきた」

来週は、今季2つ目のメジャー大会、全米プロが開催される。メジャー4勝を誇るマキロイが最後に勝利したメジャー大会はバルハラ(ケンタッキー州)で開催された2014年全米プロだが、来週の舞台は、そのバルハラである。

なるほど。マキロイが「いい感じになってきた」と自信を高めつつある来週が、とても楽しみになってきた。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)


<ゴルフ情報ALBA Net>

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