ロマチェンコvs井上尚弥の“異色対決論”が過熱 3階級も異なるのに沸騰 元世界王者は苦言「そういう論争はうんざりだ」

2024年5月13日(月)7時0分 ココカラネクスト

井上とロマチェンコはともにボクシング界で違いを生み出し続けている。ゆえにファンの多くが対決を求めるが……。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext、(C)Getty Images

 圧倒的な強さで異彩を放つからこそ、周囲の期待も高まり、「暴論」と言うべき意見も生まれてしまう。去る5月6日に東京ドームで、ボクシングの元世界2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)を6回TKOで破った世界スーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(大橋)の行く末は、各国で小さくない関心事となっている。

【動画】悪童ネリに逆襲の右ストレート!井上尚弥がドームを熱狂させた貫禄のTKOの瞬間

 日本ボクシング界との浅くない因縁を持っていた悪童も蹴散らした。1ラウンドにダウンを奪われた井上だったが、そこから冷静に対応。2、5回にそれぞれダウンを奪い返すと、最後は6回にネリが腰から崩れ落ちる右ストレートで趨勢を定めた。

 あまりに鮮烈、そしてあまりに圧倒的な決着だった。下馬評で「断然優位」という声が大半を占めていたからこそ、より井上の勝ち方は彼の規格外の強さを色濃くさせた。

 いまだ無敗(27戦0敗、24KO)。文字通り敵なしの強さを誇るがゆえに、各国のファンや識者たちは、「誰なら井上を倒せるか」という想像を膨らませる。そうしたなかでにわかに対戦論争が盛り上がっているのが、元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)だ。

 現在36歳のロマチェンコだが、その強さは衰え知らずだ。現地時間5月11日に豪パースで行われたIBF世界ライト級王座決定戦では、元ライト級3団体統一王者ジョージ・カンボソスJr.(豪州)を11回TKOで撃破。最後は左ボディーで相手を悶絶させ、敵陣営がたまらずタオルを投げ入れる形での決着となった。

 総パンチ数でもカンボソスJr.に109本差をつけたロマチェンコ。井上と同様に難敵を圧倒したわけだが、両者の間には3階級も差がある。対戦は非現実的だと言える。

 それでもビッグネーム同士の対決を望む声は尽きない。英ジャーナリストのガレス・A・デイビス氏は、母国のスポーツ専門局『talk SPORT』のポッドキャスト番組内で「私の中で今、イノウエは世界ナンバーワンだ。疑念の余地はなく、彼の振る舞い、堂々とした姿、フットワーク、パンチ、決断力、パワーのすべてがモンスター」と井上を絶賛。一方で、「世界的な知名度がまだ足りない」とし、“ボクシングの本場”である米国内でも人気を博すロマチェンコとのメガマッチを興奮気味に語った。

「もしかしたら、イノウエはフェザー級で戦い、そこで素晴らしい対戦相手を見つけるかもしれない。例えば、ロマチェンコと戦えるかもしれないよ。その戦いを想像してみようじゃないか。ロマチェンコvs井上。どうだ!」

ロマチェンコ戦は論外だ

 ただ、先述したように井上とロマチェンコとの階級差は3。体重にして約5キロも差がある。興ざめと言われるかもしれないが、仮にフェザー級で戦ったとしても、激しい減量を求められる後者のコンディションが万全となるかは不透明。それこそが階級制のあるスポーツの難しさではある。

 もっとも、“ボクシングの本場”では「井上vsロマチェンコ」の異色カード実現に反発する声が上がっている。

 かつて2階級を戦い、マニー・パッキャオ(フィリピン)、エロール・スペンスJr.(米国)らトップボクサーと対戦した実績を持つ元WBO世界スーパーライト級王者のクリス・アルジェリ氏は、米専門メディア『ProBox TV』の番組「Deep Water」で、「今、イノウエがホットな話題になっているから、こんな論争に人々が振り回されているのは分かる。だけど、彼はスーパーバンタム級に上げたばかりだぞ」と強調。そして、リアリスティックな意見を続けている。

「私はイノウエがすぐにフェザー級、もしくはスーパーフェザー級に階級を上げるとは見ていない。スーパーフェザー級でガーボンタ“タンク”デービス(WBA世界ライト級王者)と戦えばいいという話も出ているが、そういう論争はうんざりだ。やめて欲しい。その階級まで13ポンド(約5.9キロ)も離れている。イノウエはネリよりも小さく見えた」

 至極当然の主張だ。さらにライト級を主戦場とするロマチェンコとの戦いに「イノウエはもっと上げなければならない。8ポンド(約3.6キロ)の増量が必要になる」と指摘したアルジェリ氏は、こう断じている。

「ここまでにイノウエが成し遂げたことが凄すぎるから、こういう話題が出ているのだろうね。でも、私はロマチェンコもイノウエとの試合に興味を抱いているなんてまったく思えない。試合を実現させるための問題はあまりに多いよ」

 妄想をするのは自由だが、論外と言うべきマッチメイクで、井上の異色な強さを評価するのは言語道断である。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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