初海外挑戦、長期離脱、得点王の重圧 宮澤ひなたが1年で得た経験とFAカップ制覇の喜び

2024年5月13日(月)12時23分 サッカーキング

女子FAカップを手に喜ぶ宮澤 [写真]=Getty Images

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 女子FAカップ決勝が12日にウェンブリースタジアムで行われ、マンチェスター・Uがトッテナムに4−0で勝利。昨シーズンの決勝で敗れた雪辱を果たし、クラブ初の女子FAカップ制覇を成し遂げた。

 マンチェスター・ユナイテッドに在籍するなでしこジャパンFW宮澤ひなたは4点リードの78分から出場。トップ下でプレーした。試合後、宮澤は「正直、けがでチームにあまり貢献できていなかったと、FAカップが始まってから感じていたことで。準決勝でもピッチに立てず、みんなの力でウェンブリーのピッチに立てて、リードも大きかったので気持ち的にも楽に入れました。昨シーズンからいた選手は借りを返せたと思いますし、自分自身としても移籍してきて初めて大きなタイトルをみんなで取れたことは大きなものでした。すごくうれしかったです」と、12月に足首の手術で戦線離脱してから復帰を果たしてのタイトル獲得を噛み締めつつ、感謝を口にした。

 試合は7万5000人を超える観衆が訪れ、その前で優勝トロフィーを掲げたが、「日本では想像できない人数ですし、コーチの声が聞こえないぐらいスタジアムが沸いていて、こんなにも多くの人が来てくれたっていうのは、こっちの国のサッカーに対する思いがすごく強いと改めて感じられましたし、日本もこうなってほしいという思いがさらに強くなりました。クラブチームの対戦でこの人数。決勝という舞台でこれだけお客さんが入ってできるのは、選手としてすごくうれしいですし、ワーッと沸く瞬間がすごく楽しくて、ワンプレー、ワンプレーにお客さんが反応していることはピッチに立っていても聞こえるので、選手としては多くの方が見てくれるようなサッカー、プレーができればいいなと、試合を終えて思います」と、改めて1選手としての大観衆の前でプレーすることの喜びを語った。

 宮澤自身はマンチェスター・ユナイテッドに今シーズンから加入。海外クラブ初挑戦となったが、前述の負傷などもあり、主力としてプレーするにはいたらず。ボランチやトップ下でプレーすることが中心となった。「慣れるまでに時間がかかり、やっと出始められたころにけがをして。あの時にけがをしていなければ今どうなっていたのかな、途中からではなく先発でピッチに立っていたのかな、と考えることはある」と正直な心境を明かしつつ、「多くの人の支えがあったからこそ」と感謝を述べ、「大きい舞台で少しですけどピッチに立ってプレーできたことは自分にとって大きかったので、うれしい反面、もっとやりたい思いは強くなったので、また来年この舞台に戻ってこれるように、次はけがをせずに、シーズンを通してしっかりチームに貢献できるようにしたい」と、来シーズンのクラブでの立ち位置の巻き返しを誓う。

 足首のけがは復帰までに4カ月近くを要した。ここまでのけがは「初めて」という宮澤にとって「今まで通り走れるのか、ボールを蹴れるか、不安は正直あった」が「落ち込んで振り返っても戻ってこないので、より強くなって戻ってこないといけないと、前向きにとらえられた」と振り返る。

 チームへの適応やけがとの戦いに加え、移籍直前に開催されたFIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランドでゴールデンブーツ(大会得点王)を獲得したことによる周囲からの重圧との戦いとも向き合った。ゴールデンブーツを取ったことは「もちろんうれしいこと」としつつ、「考えていないようで、やっぱりいろいろな人からそういう見られ方をされるので、フッと思う瞬間もある」と複雑な思いもあると吐露。だが、「そこをうまくポジティブに自信としていければいいですし、だからこそもっと強引に、もっと得点が欲しいですし、結果を出し続けたい」と、ピッチでの結果にフォーカスして、向き合っていくと話す。

 今シーズンは残すところリーグ戦1試合。クラブでまず求められていることはバランスをもたらすことではあるが、その中で個人として勝負することも必要になる。「良いポジションに立ち続けること、スルーパスや一個潜り込んでいくことも求められるところ。ゴールに向かうプレーを増やしていきたいですし、代表でもワイドのポジションでプレーしたりしているので、自分自身レベルアップしなければいけないところ」と、強引さにもよりこだわっていく必要があると感じているようだ。

 シーズンが終われば、パリオリンピック2024本戦に向けてのなでしこジャパンの活動が始まる。「相手の状況をうまく見ながら駆け引きしたい。その瞬間、目の前の相手、求められてることを選手としてやるだけだと思っているので、来シーズンはもっともっと試合に絡んで、目に見える結果を求めたいですし、オリンピックでもそこは変わらずやっていきたい」と意欲を燃やしている。

取材・文=小松春生

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