巨人・秋広&大江 ソフトバンク・リチャード 電撃トレードの舞台裏 ともに故障者発生した補強ポイント
2025年5月13日(火)5時30分 スポーツニッポン
巨人の秋広優人内野手(22)、大江竜聖投手(26)とソフトバンクのリチャード内野手(25)の2対1の交換トレードが成立し、両球団が12日に発表した。ともにリーグ連覇を狙うチームでリチャードと秋広は長距離打者として期待された逸材。なぜ、「ロマン砲」同士による電撃的で異例のトレードが実現したのか。両球団で担当キャップを務めた川島毅洋デスクが舞台裏を解き明かす。
将来を期待されながら思うような結果を残せていなかった秋広とリチャード。ともに昨年のリーグ優勝チームで、育てながら勝つことが求められる巨人とソフトバンクにあって、我慢して起用できる境界線は存在する。
阿部監督は、2軍監督時代から秋広を指導し、ときには厳しいメニューを課してきた。高卒2年目から松井秀喜の代名詞でもあった背番号55を背負うなど、プレッシャーもあっただろう。23年にはキャリアハイの121試合に出場し、10本塁打をマークしたが、昨年は26試合でノーアーチに終わった。
今季は2軍で25試合に出場し、打率・157、2本塁打。結果を残していない中、5月に1軍昇格した。指揮官の中ではラストチャンス、最後のテスト。本人もその気持ちだっただろう。それでも、変わらなかった。
白羽の矢を立てたのがリチャードだった。岡本が左肘じん帯損傷で離脱した上、近い将来、メジャー挑戦の可能性もある右の大砲の後釜は、球団の補強ポイント。集中力にムラがある欠点はある。それでも、山川が「力だけで言えば日本だったら頂点。僕とか村上、岡本よりも全然上。世界でも間違いなく通用する」と評する素材。ウエスタン・リーグの5年連続本塁打王で、ポテンシャルの高さは魅力だった。4月5日に2軍降格となってからも、球団は試合をチェックし続け、動向を追ってきた。他球団も獲得に興味を示す中、最も熱心だったのが巨人だったという。
8年目の25歳。巨人では今季、昨季トレードで加入した27歳の若林、現役ドラフトで指名した25歳の田中瑛が1軍で活躍している。20代中盤の年代は、環境を変えることで才能を開花させる可能性を秘めている。その成功例も、今回のロマン砲トレードが成立した背景だった。
ソフトバンクは柳田、周東、正木と外野の故障者が続出。王貞治球団会長が好む長距離打者で2メートルの大砲の獲得は思惑通り。加えて、阿部監督と小久保監督は巨人時代に3年間、チームメートだった。「未完の大器」を預かる者同士、分かり合える部分も多かった。
◇リチャード(本名・砂川=すながわ=リチャード)1999年(平11)6月18日生まれ、沖縄県出身の25歳。沖縄尚学では甲子園出場なし。高校通算25本塁打。17年育成ドラフト3位でソフトバンク入団。20年3月に支配下選手登録。1メートル89、123キロ。背番号52。右投げ右打ち。今季年俸1000万円。
▼ソフトバンク・リチャード 王会長や小久保監督、山川さんには期待をかけてもらい、何度もありがたい言葉や指導を受けました。これからジャイアンツで成長する姿を見せて恩返しをしたい。チームが変わっても、僕はこれからも砂川リチャードなので、引き続き応援してくれたらうれしいです。
◇秋広 優人(あきひろ・ゆうと)2002年(平14)9月17日生まれ、千葉県船橋市出身の22歳。二松学舎大付では甲子園出場なし。高校通算23本塁打。20年ドラフト5位で巨人入団。2年目に背番号を68から55に変更。2メートル、100キロ。右投げ左打ち。背番号52。今季年俸2450万円。
▼巨人・秋広 ジャイアンツのユニホームに袖を通せたのは野球人としてもプロ野球選手としても誇りに思います。(阿部監督とは電話で話し)“いじってくれる人いなくなるから寂しいと思うけど”って言われて。新天地で活躍するのが恩返しだと思うんで、交流戦の時は特に頑張りたい。
◇大江 竜聖(おおえ・りゅうせい)1999年(平11)1月15日生まれ、神奈川県出身の26歳。二松学舎大付では1年夏、2年春に甲子園出場。16年ドラフト6位で巨人入団。4年目の20年から2年連続で40試合以上に登板。1メートル73、82キロ。左投げ左打ち。背番号29。今季年俸2450万円。
▼巨人・大江 ジャイアンツは自分自身成長させていただきましたし、感謝しかないです。しっかり結果を残すことでしかアピールできないと思うので1軍でしっかり結果を残したいなと思います。(ソフトバンクは)本当に強いチームだと思うので、戦力になれるように頑張ります。