【筑後鷹】ドラフト4位の宇野真仁朗内野手 “早実魂”を胸に打撃を磨く大砲候補
2025年5月13日(火)6時4分 スポーツニッポン
ソフトバンクのドラフト4位、宇野真仁朗内野手(18=早実)は各年代で日本代表に選ばれるなど注目されてきた。高校通算64発の大砲候補は右肘の炎症と左手首の痛みでリハビリ組で過ごしていたが、今宮、栗原ら1軍クラスからプロの姿勢を吸収し、飛躍のヒントを得た。7日の四国・愛媛戦で3、4軍戦13打席目で初安打となる適時二塁打を放った。伝統の“早実魂”を胸に長所の打撃に磨きをかける。
待望のHランプはタオルの生産で有名な今治でともった。7日に行われた四国・愛媛との3軍戦。宇野は2—6の5回2死一塁で代打として登場。中越えに“プロ初安打”となる適時二塁打。3、4軍戦13打席目で結果を出し“プロ初打点”もマークした。
4月19日のBC茨城との3軍戦でデビューしてから、4試合12打席ヒットなしと苦しんでいた。それでも試合に出て悩めることに喜びを感じていた。「失敗すらこれまでできなかったし、感じられなかったんで。そういうのを経験できているのが一番いいです」と前向きに捉えた。
小学、中学、高校で年代別の日本代表に選出されるなど注目されてきた。早実では1年春からレギュラーをつかみ、昨夏に初めて甲子園の土を踏んだ。1回戦の鳴門渦潮戦では3安打3打点の活躍で16強入りに貢献。「野球があんなに楽しいと感じたのは小学校以来だった。不思議な空間でした」と聖地のパワーを感じ取った。
プロ入り後は我慢の日々だった。右肘の炎症や左手首を痛め春季キャンプはリハビリ組で過ごした。一方、同じ高卒ルーキーで遊撃のライバルであるドラフト5位の石見颯真がA組(1軍)の紅白戦で適時三塁打など2安打2打点とアピールした。「ほかの情報は入れないように。自分のことだけに集中して過ごしていました」。下半身の強化を中心に、今できることにフォーカスしてきた。
「ケガの功名」もあった。左ふくらはぎを痛めた今宮がリハビリ組に合流し、内野のノックを間近で見た。「あのレベルになっても、まだまだうまくなろうという姿勢と練習量が凄かった」。ゴールデングラブ賞5度の“プロフェッショナル”を学んだ。
3月には右脇腹を痛めて戦線を離脱した栗原とも同じ時間を過ごした。技術面もさることながら「自分とか若い選手に積極的に声をかけていい雰囲気をつくろうとしていた。練習から謙虚にやられていて見習わないといけない」と痛感した。1軍でレギュラーを張る選手の凄さを知ることができたのは大きな財産だ。
打球スピードは1軍レベルの平均とされる160キロを超え、小久保監督から非凡な才能を評価されている。胸に秘めているのは“早実魂”。王貞治会長をはじめ、日本ハムの清宮幸、西武の野村大らは持ち味の打力でアピールしている。「スタイルを貫いているなと思うので、自分もそうやっていきたい」。先輩たちの背中を追い、未来の大砲を目指す。 (杉浦 友樹)
◇宇野 真仁朗(うの・しんじろう)2006年(平18)7月5日生まれ、千葉県出身の18歳。早実から24年ドラフト4位でソフトバンクに入団。50メートル走6秒1。リラックス方法はサウナに入ることでファーム施設でも“整っている”。好きな歌手は元欅坂46の平手友梨奈。背番号46。1メートル77、81キロ。右投げ右打ち。
【取材後記】 現場で取材していたからこそ、宇野に聞きたいことがあった。昨夏の甲子園3回戦の早実—大社戦だ。
2試合連続完投中だったエース馬庭を擁する大社はしぶといチームカラーで「大社旋風」と呼ばれた。9回に早実は2—2と追いつかれ、甲子園は異様なムードに包まれた。なお1死二、三塁のサヨナラのピンチで左翼手を投手と三塁手の間に守らせる「内野5人シフト」の奇策に打って出て「左ゴロ併殺」に仕留めた。延長11回で敗れたが、伝統校の意地とプライドを発揮した名勝負だった。「あの雰囲気は大社高校さんがほとんどつくりあげたものですよ」と笑みを浮かべる。
あれから半年以上が過ぎた。自身は2番打者として5打数無安打に終わった。「あそこで勝ちきれなかったのはめちゃくちゃ悔いが残っています」。その思いを忘れずプロで戦ってほしい。