ホークスの転換期 生卵事件の一部始終/渾身の1枚

5月23日(土)10時5分 日刊スポーツ

96年5月9日、近鉄に敗れたダイエーナインは、ファンから帰りのバスに向かって生卵を投げられる

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<本紙カメラマン渾身の1枚>

日刊スポーツ・カメラマンがお届けする「渾身(こんしん)の1枚」。今回は今浪浩三が24年前に大阪・日生球場で起きた出来事を振り返ります。王貞治監督率いる当時のダイエーホークスのバスが、一部ファンから襲撃された、いわゆる“生卵事件”。そんな屈辱の歴史を乗り越えて、今の常勝ホークスはあります。
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1988年(昭63)、南海が球団を身売りし、福岡ダイエーホークスが誕生した。ダイエーの歴代指揮官は杉浦忠、田淵幸一、根本陸夫、王貞治。親会社がソフトバンクとなった現在のホークスは、毎年のように優勝候補に挙げられるが、福岡に来た当初は万年Bクラスだった。王監督2年目の1996年(平8)5月、大阪・日生球場最後の試合で事件は起きた。
すでに借金苦にあえいでいた5月7日の近鉄戦。レフトスタンドはホークスファンが掲げる「死ね」「王解雇」「責任取れバカオーナー」など過激な横断幕で試合前から異様な雰囲気だった。試合も、先発のホセが三塁線上に転がるボールをファウルにしようと吹き、凡プレーや失策も重なった。ファンの怒りは頂点に達し、試合後、帰りのバスを待ち構える。バスは大勢のファンが取り囲んで出られない。中をのぞくと王監督は渋い表情、選手は静まりかえっていた。
カメラマンである以上、この事実を撮影しなければならない。私はシャッターを押し続けた。そのうちこちらを見ていた監督や選手はバスのカーテンを閉めてしまった。怒りが収まらないファンは「お前らプロか」と書かれたボードを持って罵声を浴びせ続けた。30分ほど警備員がファンを必死に整理し、バスはようやく出発した。
そして雨天中止を挟んで迎えた9日の同戦。この日も敗れ開幕から9勝22敗となると、再び怒ったファンが引き揚げるチームを待ち構える。事態を憂慮した球団は三塁側からではなく、グラウンドを通りセンター後方から帰ることを決めていた。私も先回りしてセンターに向かったが、多くのファンも同じように動いていた。そこにドスン!と何かが投げ込まれてきた。中味の入った缶ビール…。恐怖を感じた。選手が乗車するとフロントガラスに向かって投げられたのは生卵だった。フロントガラスは一面生卵で、前も見えなくなった。 
3年後の99年9月25日、ダイエーは福岡移転後初のリーグ優勝を成し遂げ、王監督は宙を舞った。そして現在はソフトバンクホークス球団会長として常勝軍団を支えている。当時を振り返る中で王球団会長は「卵を投げた人たちは、南海時代からの熱烈なホークスファン。真剣に怒った結果が生卵事件だった」と語り、理解を示した。私は、あれを怒ってなかったのか…と驚いた。やはり偉大な人だとつくづく感じる、忘れられない出来事だ。
【今浪浩三】

日刊スポーツ

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