【畑野理之の談々畑】秋をにらんだ23選手による総力戦 全員野球こそが阪神・藤川監督の目指す戦い
2025年5月23日(金)5時15分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神2−3巨人(2025年5月22日 甲子園)
門脇誠の決勝三塁打を右中間フェンスまで追っていたのは植田海だった。阪神最後の11回表の守りは右翼に植田海が、そして左翼には熊谷敬宥が就いていた。8回の打席で森下翔太が自打球を当てて交代。この2選手が同時に両翼に就くなんて、まさか予想もしていなかったが、この全員野球こそが藤川球児監督の目指す戦いだ。
熱心に声援を送っていた虎党は、試合に負けて不満かもしれない。もっと打てよと思っただろう。相手の半分のわずか6安打。8回無死満塁で3番の森下に回った時は勝ち越しを確信したはずだが、無得点だった。
試合前に大きな動きがあった。一気に5選手を出場選手登録したのだ。島田海吏、岩貞祐太、ラモン・ヘルナンデス、椎葉剛、木下里都。ヘルナンデスは午後1時プレーボールの、SGLスタジアム尼崎で行われたウエスタン・リーグのオリックス戦にDHで先発出場して2打席に立った。6回に代打を送られてから甲子園に駆けつけたため、この日の朝になって緊急昇格が決まったのだろう。2年目の椎葉、ドラフト3位ルーキーの木下はプロ初の1軍だった。
逆に前川右京をはじめ、5選手を抹消してこの日だけで計10選手が1、2軍を行き来した。開幕からまもなく2カ月がたつが、延べ99選手の入れ替えは12球団最多。今季1軍の試合に出場した選手は47人を数える。主力選手の負傷リタイアなど非常事態にある巨人と比べて、首位の阪神の数は目立つが、1年間チーム全員で戦うという藤川監督が掲げた基本方針が守られている。
昇格即スタメンだった島田。岩貞も最後に打者1人だけ打ち取った。2軍戦では2打席凡退だったヘルナンデスは8回先頭で来日初安打となる左前打を放ち、親子ゲームにどちらも出場したかいがあった。椎葉と木下の登板は持ち越されたが、きょう23日にもデビューはあるかもしれない。
延長11回は2死満塁まで追い詰めたが、あと一歩届かなかった。試合後の藤川監督は「日々何かが足りずにあと一歩のところは全員でね。昨年までなかった戦力を起用して、戦っていくのがペナントレースですから」と悔しさをにじませたが、秋をにらんだ23選手による総力戦だった。