井手口陽介よ、逆境を跳ね返せ。W杯出場へ、21歳の若武者に今求められること

5月24日(木)15時0分 フットボールチャンネル

1年前はW杯でレギュラー当確と見られたが…

 スペイン2部クルトゥラル・レオネサで苦難の半年間を過ごしたMF井手口陽介が、日本代表合宿に合流した。1年前にハリルジャパンの主力だった21歳は、移籍による出場時間減がもとで当落線上の選手の1人となっている。この逆境を跳ね返さなければ、ワールドカップの舞台に立つ権利は得られない。(取材・文:元川悦子)

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 ロシアワールドカップ本大会に向け、21日からスタートした日本代表候補合宿も3日目に突入。合流が遅れていた井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)、槙野智章遠藤航(ともに浦和)、東口順昭(G大阪)の4人が23日から合流し、右太もも前打撲でここまでの2日間続けて室内練習を行っていた乾貴士(エイバル)も初めてグラウンドに姿を見せた。

 現段階の乾はランニングもできない状態だが、30日のガーナ戦(日産)には合わせるつもりでリハビリに努めているという。左足首負傷の岡崎慎司(レスター)もまだ完全合流には至らないが、練習の強度は日に日に上がっている。2人の代表での生き残りは今後の経過しだいと言っていいだろう。

 サバイバルという意味では、この日加わった井手口も当落線上にいる存在だ。21歳の若きダイナモは、豪快なミドルシュートを決めた昨年8月31日のワールドカップアジア最終予選・オーストラリア戦(埼玉)時点で、ロシアでのレギュラーは当確と目された。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督も絶大な信頼を寄せ、11月のブラジル(リール)・ベルギー(ブルージュ)2連戦も続けてスタメンに抜てき。12月のEAFF E-1サッカー選手権(東京)でも軸に据え続けた。その初戦・北朝鮮戦で井手口は値千金の決勝ゴールをゲットしている。1-4で惨敗した最終戦・韓国戦でも孤軍奮闘が大いに目立った。そのパフォーマンスを目の当たりにした日本代表OBの松井大輔(横浜FC)も「相手と互角に戦えていたのは井手口くらい」と高評価を与えていた。

 順調なステップアップを遂げていると見られた男のキャリアが暗転したのは、今年1月にスペインへ赴いてから。言葉の通じない異国でのプレーは想像を絶するほど難易度が高かった。この5ヶ月間でスペイン2部リーグのピッチに立ったのは、わずか5試合107分間のみ。

 出場機会の少ない選手がプレーできるリザーブリーグもなく、実戦感覚やコンディション面が大いに懸念される事態に直面した。それを重く見た前指揮官は3月のマリ戦とウクライナ戦(リエージュ)で代表選外という厳しい判断を下す。「自分が試合に出ていなかったので、特別な気持ちはなかった。外れると思っていたので」と本人もその扱いに納得していたようだ。

日本代表の中盤に揃う強力なライバルたち

 しかしながら、4月に就任した西野朗新監督は球際の強さと寄せの激しさ、傑出したボール奪取力を誇る若武者の才能と可能性に賭け、強硬招集に踏み切った。こうして約半年ぶりに代表の場に戻ることになった井手口は「今日はちょっとしか練習をやってないけど、楽しかったです」と笑顔でコメント。「まずはしっかりと試合(ガーナ戦)に出れるように、この1週間の練習でアピールしていかなきゃいけないし、練習から自分のよさを出していければいいと思います」と新たな気持ちで再スタートを切った。

 ただ、今回の日本代表には、長谷部誠(フランクフルト)を筆頭に、常連の山口蛍(C大阪)、4年前のブラジルワールドカップを経験している青山敏弘(広島)、3月のマリ戦の途中まで好パフォーマンスを見せた大島僚太(川崎F)、同じくマリ戦で中島翔哉(ポルティモネンセ)の同点弾をアシストした三竿健斗(鹿島)と、セントラルMFが6人も選ばれている。鹿島アントラーズ時代にセントラルMFを本職としていた柴崎岳(ヘタフェ)も含めれば、井手口には6人ものライバルがいることになる。このうち2人は31日に発表される予定のワールドカップ出場メンバー23人から外されることが有力視されている。

 長谷部と山口はワールドカップの最終予選を通じて中盤の軸を担っており、前体制を踏襲しようとしている新指揮官が外すとは考えにくい。一方で、今季J1首位を独走するサンフレッチェ広島のけん引役である青山、昨季川崎フロンターレのJ1制覇に貢献した大島の存在価値も重要視しているし、ポリバレント枠の柴崎もポイントが高そうだ。

「ここからが勝負。楽しめたら一番」

 三竿に関しては直近の20日のベガルタ仙台戦でベンチ外になっていて、やや厳しい立場にある。クラブでの出場機会だけだと三竿と井手口という若い2人が外れることになってしまうが、それは日本代表の未来を考えても決してプラスにはならない。今の井手口には指揮官やコーチングスタッフを納得させるだけの材料を示す責務が課せられている。

「スペインで試合に出れない間も『折れないでやり続けることが一番』だと考えて、最後まで切らさずやってきたつもりです。コンディショニングも整えてきたつもりなので、あとは自信を持ってやるだけだと思います」と井手口は自らに言い聞かせるように話したが、本当に半年前のような出足の鋭さとフィニッシュの精度を示すことができるのか。そこがガーナ戦で第一に問われるポイントと言っていいだろう。

 西野監督はこの日の練習の最後にわざわざ井手口を呼んで、1〜2分間、会話を交わしていた。「そんなに深い話はしてないです」と彼は多くを語らなかったものの、早く元の状態に戻ってほしいという意向は伝えられたはず。

 それだけ指揮官は大きな期待を寄せているということ。井手口自身もそれを強く認識したからこそ、「自チームで出れなかった分、悔しい思いをしてきたので、まずそれを晴らすこと。プラス、ここからが勝負だと思うので頑張って、楽しめたら一番いいかなと思います」と力強く近未来を見据えていた。

 今から16年前の2002年日韓ワールドカップでは、井手口以上に公式戦から長期間遠ざかった稲本潤一(札幌)が初戦・ベルギー戦(埼玉)と第2戦・ロシア戦(横浜)で2試合連続ゴールを挙げ、日本サッカー史上初のベスト16入りの原動力になっている。

 本人は当時のことはあまり記憶にないかもしれないが、ガンバ大阪アカデミーの先輩MFのブレイクを再現できないとも言い切れない。実際、ワールドカップのような短期決戦は、物事を緻密に考える繊細なタイプより、あれこれ考えずにここ一番に集中する野生児タイプの方が活躍しがちだ。そういう意味でも井手口は何か大仕事をしてくれそうな予感がある。そのためにもとにかく縦横無尽に走れる体力を取り戻すことが何よりも重要になる。

(取材・文:元川悦子)

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