U−20が払った授業料を取り戻す。完勝劇を演出した2つのキープレー

5月27日(月)17時37分 Sportiva

 年代別の大会とはいえ、世界大会である。日本がこれほどの完全勝利を収めることは、そうそうあるものではない。

 U−20ワールドカップのグループリーグ第2戦で、日本はメキシコに3−0と勝利した。

 攻めては、先制、中押し、ダメ押しと3つのゴールを奪い、守っては、メキシコの武器である高速ドリブルに粘り強く対応し続け、無失点。文句なしの完勝だった。

 U−20日本代表を率いる影山雅永監督は、グループリーグ初戦のエクアドル戦の、とりわけ何もできずに苦しんだ前半を振り返り、「払った授業料を取り返そう」と、選手たちに話したという。

 その結果、「選手たちは、いい心理状態でやってくれた」と指揮官。「(初戦の課題を修正して)このゲームに臨む時点で、相手を上回れたのではないか」と語り、勝利した選手たちを称えた。

 とはいえ、影山監督が「完璧(な試合)はない。向こうにもチャンスがあった」と話したように、ちょっとしたことをきっかけに、大きく試合の流れが変わってしまうのが勝負の怖さである。しかも、プレーしているのは、経験に乏しい20歳以下の選手たちなのだ。下手をすれば、スコアが逆になっていた可能性がなかったわけではない。

 では、なぜ日本は、これほどまでに試合の主導権を握り続け、完勝を収めることができたのか。

 試合の流れを大きく日本に引き寄せるきっかけとなった、ふたつのキープレー。それはいずれも、試合序盤にあった。

 まずは、GK若原智哉のビッグセーブだ。

 最終的には、「初戦の課題を素直に認め、この試合で勇気をもって修正するんだというものを出してくれた」(影山監督)という結果になった日本だったが、試合開始早々、いきなり決定的なピンチを迎えている。

 キックオフの笛からわずか40秒ほど、ハーフウェイライン付近でルーズボールを拾ったメキシコのFWディエゴ・ライネスが、ドリブルでピッチ中央を一気に前進。左から走り込んだFWロベルト・デラロサへとラストパスが渡り、GKと1対1の状況を作り出した。

 だが、若原は慌てず、前に出てデラロサとの距離を詰め、シュートコースを限定する好ポジションを先に確保すると、両足をしっかりと地面につけてシュートを待ち、デラロサの動きを見切って、見事にシュートを防いだ。

 初戦に続く、前半での失点。それも試合開始から1分と経たずに決められたとなれば、日本の選手たちに初戦の悪いイメージを想起させ、動揺させるに十分なものになっていたに違いない。

 気持ちのうえで試合に入り込むのが難しい試合序盤は、サッカーにおいて、いわば魔の時間帯。それでも、「(初戦の反省を踏まえ)気持ちの整理ができていた。最大限の準備をやった」と語る若原は、高い集中力と冷静な判断で、1対1のピンチを防いだ。

 大会直前に行なわれたコロンビアとの練習試合で、後半開始早々に失点を喫した反省から、「メキシコも(試合開始直後から攻撃的に)くると思っていた」。初戦のPKストップといい、このビッグセーブといい、試合の流れを変える、あるいは引き寄せるという点において、今大会の若原の働きは際立っている。本人は「そうなっているならうれしい」と控えめだが、その存在は、まさに頼れる守護神だ。


日本のゲームを効果的に組み立てていた藤本寛也

 そして、もうひとつのキープレーが、MF藤本寛也のビルドアップだ。

 試合開始早々のピンチを若原が防いだあとも、ロングボールからのセカンドボールを拾ったFWホセ・マシアスがシュートを放つなど、メキシコは攻勢に試合を進めていた。

 日本は球際での激しい攻防では引けを取らないものの、なかなか思うような攻撃が組み立てられずにいた。早く攻撃に転じたい日本にとっては、初戦前半のように、縦に攻め急ぐ悪癖が顔を出しても不思議はない状況である。

 ところが、今大会初出場となったボランチの藤本は、メキシコの攻勢が落ち着いた7分過ぎ、ボールを受けると、あえてひと呼吸置いてからパスをつないだ。あたかも、「じっくりボールを動かそうぜ」と、チーム全員にメッセージを送るかのように。藤本が語る。

「初戦は攻撃が縦に速くなり、結局、相手にボールを簡単に渡してしまい、攻められっぱなしになった。ベンチから見ていて、なんか気持ち悪かったというか、面白くなかった」

 初戦に比べると、明らかに落ち着いてボールを動かすことができた日本。メキシコを押し込み、サイドから、あるいは中央からと、多彩な攻撃を繰り出した。

「(エクアドルやメキシコなどの)海外のチームは、守備組織が成り立っていない。選手個々の守備は強いけど、組織での攻守は日本のほうが上だと思う」

 そう語る藤本は、「自分が試合をコントロールするつもりでやった。狙いどおりのいい試合展開になった」とニヤリ。立ち上がりのピンチをしのいだあとは、日本が試合の主導権を握り、いくつかのチャンスを作り出すなかで、21分に藤本のアシストからFW宮代大聖の先制ゴールが生まれた。

 その後の展開は、ほぼ危なげなかった。

 2点目、3点目と失点を重ねたメキシコは、焦りから雑な攻撃を繰り返し、逆に日本がカウンターから次々に決定機を作り出した。もはややりたい放題と言ってもいいほどに、試合終盤は日本の独壇場となっていた。

 これで1勝1分けの勝ち点4とした日本は、グループリーグ最終戦で、ここまで2連勝で勝ち点6のイタリアと対戦。勝てば1位でのグループリーグ突破、引き分けでも2位での突破が決まる。

 また、イタリアに敗れた場合でも、メキシコ対エクアドルの結果次第で、2位突破の可能性は残り、仮にグループ3位になったとしても、すでに勝ち点4を手にしている日本は、各組3位のなかの成績上位4か国に入り、グループリーグを突破する可能性が高い。つまり、日本は決勝トーナメント進出をほぼ手中にしたと考えていいだろう。

 どこまで通過順位にこだわるかにもよるが、場合によっては、最後のイタリア戦では大きくメンバーを入れ替えることも可能となる。2試合終了時点でグループリーグ突破を、事実上決めたことの意味は極めて大きい。

 それを考えると、試合の流れを大きく手繰り寄せたふたつのキープレーは、単に勝ち点3をもたらしただけにとどまらない。グループリーグ全体の趨勢(すうせい)さえ決めたかもしれない大仕事だった。

Sportiva

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