【日本ダービー】2強対決にあらず!東大HCが日本ダービーの「ペースと脚質」を徹底分析

5月28日(木)17時0分 SPAIA

東京芝2400mの散布図

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上級条件は後方待機勢が台頭

今週末は3歳馬の頂点を決める日本ダービー。皐月賞を豪快な差し切りで制し、父以来15年ぶりの無敗二冠を目指すコントレイル、朝日杯FSで衝撃のVを飾り、コントレイルの後塵を拝した皐月賞のリベンジを狙うサリオスの二強ムードだが、弥生賞馬サトノフラッグ、皐月賞をパスしてダービー一本に絞ってきたワーケア、スプリングSを制し皐月賞でも3着に健闘したガロアクリークなどの走りも見逃せない。
今週のコラムは「ペースと脚質」。過去10年における東京芝2400mのレース、過去20年の日本ダービーを振り返りつつ、ペースを味方につけられるポジションを調査。栄えあるダービー馬の称号をつかむ馬を探していく。
今回のコラムではペースと脚質の相関関係を調べるにあたり「脚質ポイント」という概念を用いる。これは馬券になった馬の脚質別に、逃げ:0ポイント、先行:2ポイント、差し:3ポイント、追込(マクリも含む):4ポイントと設定する試みだ。たとえば、「先行・差し・追込」の決着になった場合、3着以内の脚質ポイント平均は(2+3+4)/3=3ポイントとなる。
早速東京芝2400mのデータを見てみよう。図は横軸を逃げ馬の前半5Fタイム、縦軸を3着以内の脚質ポイント平均とした散布図だ。同じ前半3Fタイム・同じ脚質ポイント平均となるレースが存在するため、点が複数重なる場合は濃くしてある。点が下にあれば逃げ・先行有利、上にあれば差し・追込有利になる。
3歳馬の頂点を決めるコースにふさわしく点が上下に偏っておらず、したがって脚質での極端な有利不利はない。特に条件戦においては実力のある馬が順当に好走している。一例として3歳未勝利戦における1番人気馬は【18-12-4-13】で連対率63.8%という高水準だが、馬券になった34頭中、逃げ・先行は16頭、差し・追い込みは18頭とほぼ同数だった。3歳未勝利の前半5F平均は62.70秒だが、この付近も散布図も点がまんべんなく打たれており、ひねらず素直に強い馬を買うべきだ。
ただしメンバーレベルが格段に上がるオープンクラスとなると話は別。過去10年で3歳・古馬オープンクラスのレースは49レース施行され、前半5F平均は60.73秒。この付近では上部に点が集まっているように、馬券になった147頭のうち逃げ・先行が49頭に対し、差し・追い込みが98頭と一気に後傾になる。さらに3歳馬のオープン(青葉賞・オークス・日本ダービー)30レースに限定すると逃げ・先行が25頭、差し・追い込みが65頭とさらに差し有利が顕著。3歳春に締まったペースを前目で運んで好走するのはハードルが高い。

日本ダービーに限定して見てみると?

次に過去20年の日本ダービーに限定して見てみる。前半5F平均は60.26秒とタフな流れの中、上部に点が集まっているように2018年のレースを除く19レースで差し・追い込みが馬券になっている。
逃げ馬が連対した2006年(アドマイヤメイン・稍重)・2007年(アサクサキングス)・2018年(エポカドーロ)の前半5F通過タイムはそれぞれ62.5秒、60.5秒、60.8秒。前半5Fが60秒を切ったレースで連対した先行馬ものべ8頭いるが、いずれも道中は逃げ馬から10馬身以上離れたポジションで運んでいる。前半5F57秒台という超ハイペースを先行して勝った2004年のキングカメハメハ、2019年のロジャーバローズにしても当然同様で、文字通り逃げ馬の番手につける形の「先行」ではなかった。
つまり先行馬が好走するには最低でも前半5Fを59秒台後半、できれば60秒台半ば程度の遅いペースで通過することが絶対条件になる。ただしあまりにも緩めすぎると道中詰まった隊列になり、スピードの絶対値が違う差し・追い込み勢に直線だけでねじ伏せられるケースも多い。
2006年の日本ダービー、前半5F62.5秒の緩い流れを5番手で運び上がり3F2位でまとめたメイショウサムソンのように、先行勢には楽なペースかつ一定以上の瞬発力という二つの条件が求められる。

絶望的な半馬身差

ではこのデータに基づき、今年のレースを展望していく。
隊列を引っ張る確固たる存在がメンバーの中に見当たらない。18頭のうち、逃げ経験のある馬はウインカーネリアン、コルテジア、ビターエンダー。このうちコルテジアは皐月賞でやや置かれて差しに回しており、本番逃げられる可能性は低い。ビターエンダーは共同通信杯で逃げたが少頭数だった上、ココロノトウダイから譲られた形のハナだった。
皐月賞2番手で運んだウインカーネリアンが残るが、同じ東京コースのセントポーリア賞では前半5F60.7秒で逃げながら6着に敗退している。枠の並びで実際に逃げる馬は変わるだろうがいずれにせよ積極的に逃げたい馬はいないため、2017年のような極端なスローも視野に入ってくる。
皐月賞で圧巻の走りを見せたコントレイルは同レースで上がり3Fを最速の34.9秒でまとめ、上がり2位のサリオス(35.4秒)に0.5秒もの大差をつけた。0.5秒差は単純計算で3馬身差に相当し、内で運んだサリオスに対し本馬が大外を回ったことを考えれば数字以上にキレの差があった(外が伸びる馬場だったとはいえ、1コーナーで手綱を引く不利+道中のポジショニング+外を回すコースロスという三重の不利の方が大きいと見る)。
前半5F60.9秒だったホープフルSでは先行抜け出しで快勝し、スローの経験と脚質の自在性もある。出走メンバーにコントレイル以上の切れ味の持ち主は見当たらず、早め抜け出しの横綱相撲で運ぶこの馬を負かすのは至難の業だろう。
サリオスは皐月賞でコントレイルに敗れたとはいえ、3着ガロアクリークには3馬身半差をつけて世代随一の能力を証明した。朝日杯FS勝ち馬のダービー挑戦は1997年以降【0-1-0-12】だが、その朝日杯で先行馬総崩れの厳しいペースを前で乗り切って楽勝しており、スピード系マイラーの多い例年の朝日杯馬とは毛並みが違う。
当然ながらレコード勝ちしたサウジアラビアロイヤルCでスピードも折り紙付きだ。近年の朝日杯勝ち馬で唯一ダービー連対を果たしたローズキングダムは前半5F58.4秒と速かった朝日杯FS(当時はよりタフな中山)を逃げ馬からそう遠くない中団前目で追走して勝利しており、スピード・タフさを併せ持つ総合力がサリオスと重なる。したがって距離をそこまで懸念する必要はないと見るが、皐月賞で不利が重なったコントレイルに敗れた事実は重い。スロー瞬発力勝負よりはタフな流れにおいて強さを発揮してきた馬でもあり、枠の並びとレーン騎手の完璧な騎乗が噛み合って(さらにはコントレイルの不利があって)はじめて逆転が見えてくるのではないか。
サトノフラッグは弥生賞のパフォーマンスが素晴らしく、2着ワーケアはホープフルS3着、3着オーソリティは青葉賞勝ちとレースレベルも高かった。しかし4角までの入りがほぼ完璧だった皐月賞の6着敗戦で評価が難しくなった。直線での止まり方は2戦目以降上がり最速を連発していた馬のそれではない。東京コースは未勝利戦の2歳コースレコード勝ちがあり舞台適性は申し分ないものの、皐月賞凡走→ダービー好走パターンのほとんどはスロー後方の差しこぼしであることも事実。同様のパターンを強いてあげるなら1999年のアドマイヤベガだが、この馬は皐月賞で大幅に馬体を減らしていた。レースぶりから敗因が見えてこないため、気性か成長力不足の問題が浮上してくる。したがって3番人気で買う信頼度も妙味もないのではないか。
皐月賞3着馬ガロアクリークはダービーで想定されるドスロー瞬発力勝負だったスプリングSを先行+上がり最速で快勝。ヒューイットソン騎手が距離延長に問題はない旨のコメントを残しており特に評価を下げる必要はない。連系は上位2頭のミス待ちだが、3連系からは外せない。ワーケアはベストではない右回りのホープフルS・弥生賞で健闘し、東京のアイビーSは好内容勝ち。皐月賞をパスしてここ一本に絞り、ルメール騎手を確保した臨戦過程も良い。こちらも評価は下げない。
その他においては皐月賞組との勝負付けは済んでいると見ているが、怖いのはマイラプソディ・ヴァルコスの友道2騎。マイラプソディは共同通信杯のよもやの敗戦から皐月賞の大敗で歯車が狂った感があるが、野路菊Sの内容は確かに強かった。こちらはサトノフラッグと違い気性難が能力全開を妨げているのが明らかで、馬具装着で矯正がかなえば巻き返しが見込める。横山典弘騎手の手綱捌きも楽しみで仕方ない。ちなみに同騎手は過去20年のダービーで3度逃げを打っており(全騎手の中で最多、3頭とも逃げ専門タイプではなかった)、同じドスローだった2017年はマイスタイルをあわやの4着に持ってきている。ヴァルコスは青葉賞の内容が優秀。枠次第で馬券内への浮上も可能だろう。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。

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