水素エンジンカローラ、1年間で『つくる』『はこぶ』『つかう』の仲間を増やす。開発は“4合目”

2022年6月3日(金)19時40分 AUTOSPORT web

 6月3日、ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第2戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』が開催されている富士スピードウェイそばにあるROOKIE Racingのファクトリー内で記者会見を行い、2021年の富士24時間でデビューした水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptについて、水素、カーボンニュートラル燃料を『つくる』『はこぶ』『つかう』の仲間づくりの取り組みの進捗についての説明を行った。


 2021年の富士24時間でデビューした水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 concept。カーボンニュートラルという目的に向けさまざまな取り組みを行い、豊田章男社長が説明する水素を『つくる』『はこぶ』『つかう』の仲間を増やしてきたほか、2021年最終戦ではマツダがバイオディーゼル燃料を使った車両を投入したほか、2022年からはORC ROOKIE Racingからカーボンニュートラル燃料を使うORC ROOKIE GR86 CNF Concept、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptが参戦。競い合いながら戦いを続けている。


 2022年の富士24時間は、ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが参戦してから1年を迎えることになるが、これまでの取り組みの進捗についての説明を、報道ステーションでお馴染みの元テレビ朝日の富川悠太アナウンサー(現トヨタ自動車)の司会のもと、ドライバー“モリゾウ”として自らステアリングを握るトヨタ自動車豊田章男社長、TOYOTA GAZOO Racing佐藤恒治プレジデントが登壇して行った。

トークショーで司会の富川悠太と話す石浦宏明。富川氏はドライバーの特徴を細かく突っ込む


 カーボンニュートラルという同じ目的をもつ“意志ある情熱”に共感した仲間たちとともにスタートしたとされる取り組みは、昨年の富士24時間の時点で水素やカーボンニュートラル燃料を『つくる』『はこぶ』『つかう』の仲間となった企業や自治体が8だったが、2022年6月3日の時点で24に増えた。トヨタによれば、「エネルギーの選択肢の増加、水素運搬量の増加、エンジン性能や航続距離の向上、水素充填時間の短縮など、レースを通じた水素やカーボンニュートラル燃料を『つくる』『はこぶ』『つかう』挑戦は1年間で進化しました」としている。1年間でのORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの進化は下記のとおりだ。


航続距離:約20%向上※3
出力:約20%向上
トルク:約30%向上
水素充填時間:約5分から1分半まで短縮


 まず『つくる』では、昨年の富士の参戦当初から仲間に加わった福島県浪江町(FH2R)をはじめ、オートポリスから加わった大林組、トヨタ自動車九州、さらにその後も岩谷産業、川崎重工業、電源開発株式会社が参画するHySTRA、福岡市、山梨県がそれぞれ水素を製造し、レースに参戦する水素エンジンカローラに使用してきた。


 また『はこぶ』では、トヨタ輸送のバイオ燃料トラックや、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジー(CJPT)の取り組むFC小型トラックが水素をサーキットまで運搬した。また電源開発がオーストラリアで製造した褐炭由来水素を試験的に空輸で運搬し、岩谷産業、川崎重工業の協力で水素エンジンカローラの燃料として使用した。


 そして『つかう』では、ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが開発することで、エンジン性能や航続距離、水素充填時間などを改善。またORC ROOKIE GR86 CNF Concept、Team SDA Engineering BRZ CNF Concept、さらにMAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIOも参戦することで、『つかう』燃料の選択肢も広がっているとしている。


 今回は、新たな仲間として神戸製鋼、ジャパンハイドロが“仲間”に加わった。神戸製鋼は、高炉工程におけるCO2排出量を大幅に削減した低CO2高炉鋼材を開発・商品化。商品の種類は『コベナブルプレミア』と『コベナブルハーフ』の2種類があり、トンあたりのCO2排出量の削減率が100%である『コベナブルプレミア』を、水素エンジンカローラのサスペンションメンバーに使用している。


 またジャパンハイドロは、6月から国内販売およびレンタルを開始する『水素専焼発電機』を、富士スピードウェイ内イベント広場の一部ブースで使用し、電力供給を行う。本発電機は水素のみを燃料とするため、燃焼時にCO2を排出しないという。


 2022年に向けては、すでに第1戦鈴鹿から車両にロゴがついているが、スーパー耐久を契機としたモータースポーツの繋がりがグローバルに広がっており、アジアでモータースポーツを発展させたい想いをもつパートナー企業の5社が加わった。今回の記者会見では、その関係者も訪れている。新たなパートナー企業は下記のとおり。


和泰汽車股份有限公司(台湾)
GT Capital Holdings Inc.(フィリピン)
Jardine Matheson Holdings Ltd.(香港)
中升集団控股有限公司(中国)
KUO International (private) Ltd.(シンガポール)


 今後、ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの開発に向けては、レースで鍛えた技術を活かし、水素エンジン車の市販化に向けた研究開発を開始したという。富士24時間のイベント広場で、実証試験車であるカローラ・クロスをベースとした水素エンジン車両を展示する。エンジンは、レースを走行する水素エンジンカローラと同じ3気筒ターボで、トヨタ・ミライの技術を活用した圧縮気体水素タンクを床下に2本搭載する。


 また、水素エンジンカローラの航続距離向上を目指し、すでに第1戦鈴鹿でも明らかにされているとおり、液体水素搭載技術への挑戦を続けていく。「気体水素よりもエネルギー密度が高く、水素エンジンと液体水素を組み合わせることができれば、航続距離がガソリン車に近づき、水素ステーションも約1/4の面積で運用できるようになります」としている。富士24時間レースの給水素エリアには移動式液体水素ステーションと液体水素搭載水素エンジンカローラのコンセプトモデルを展示した。


 佐藤プレジデントは、今回市販のGRカローラの開発にも繋がっているORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの開発のゴールについて富士山に例え、現段階では「四合目あたり」だとしている。とはいえ、1年間でモリゾウのラップタイムは同じ富士で7秒向上した。豊田章男社長は「モータースポーツというオープンな舞台で、開発をアジャイルに進めていくことが、エンジニアたちに元気を与えてくれている。1年で7秒短縮するなんてことは、なかなかできることではありません。実際にサーキットで、プロドライバー、ジェントルマンドライバー、開発ドライバーがそれぞれの運転をしながら挑戦している。今後もこのチャレンジをぜひ応援していただきたいと思います」と語った。今後もカーボンニュートラルに向けた取り組みは続いていくことになりそうだ。

S耐第2戦富士24時間の予選後、参戦するトヨタ系ドライバーが集まって会見が行われた


スーパー耐久第2戦富士に展示された移動式液体水素ステーション
スーパー耐久第2戦富士に展示された車載用液体水素システム


今年の春に稼働し始めたばかりのROOKIE Racingの新巨大ガレージで会見は行われた

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