ロールス・ロイスを手放した強打者も…引退後のプロ野球選手は一般市民に戻れるのか 待ち受ける「第一関門」とは
2023年6月4日(日)11時0分 ココカラネクスト

それは第二の人生を始めるための区切りとも言える「儀式」でした。
昨季限りで現役を引退した元中日ドラゴンズの強打者・平田良介さんが5月28日、TBS系の「THEプラチナリスト〜スターが生まれた伝説の名簿〜」に出演し、約5000万円とも言われる愛車のロールス・ロイスを売却したのです。
「プロ野球選手になれば、こういう車も買えるんだよ−と。見栄の部分もあって買っちゃいました」
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番組内では、さらにこう続けました。
「これから2つ目の人生が始まりますんで、もういいんですよ。見栄張る必要もないんで」
オンエア後はSNSを中心にこの話題で盛り上がり、「プロ野球選手とセカンドキャリア」という論点を巡り、様々な意見が噴出しました。
在京スポーツ紙の記者は言います。
「2023年のプロ野球選手平均年俸は4468万円。2021年の、1年を通して働いた日本人男性の平均年収は545万円とされますから、単純計算で8倍から9倍を稼ぐわけです。そんな選手にもある日突然、戦力外通告がやってくる。高級外車に高級腕時計の生活に慣れた人間にとって、第一関門は『電車で移動できるか』だと言います」
電車で移動できるかって、小学生じゃないんだからと思いますが…。
前述の記者はこう語気を強めるのです。
「プロ野球選手にとって、『電車に乗らなくなること』は若手時代の二軍生活に別れを告げ、バリバリのレギュラーに定着することと同義なんです。そしてこの生活に慣れてしまうと、『電車に乗ること=自ら到達した座から降りる』という思考回路が形成される。大卒や社会人出身の選手はその点、そこそこ一般常識もわきまえているので心配いらないですが、高卒のスター選手は特に『降りた自分を受け入れられない』ということで、悩むとよく聞きますね」
平田さんの「見栄張る必要もないんで」は、まさに本音であり、勇気のある発言だとも強調します。
「野球だけしかやってこなかった田舎の高校生がプロに入って、まず驚くのが2軍施設の駐車場に停まっている高級外車です。日本の交通事情にそぐわないサイズのでっかい車が品評会のように並んでいると、だんだん感覚が麻痺してくる(笑)。幸運なことに入団時に多額の契約金をもらっているから、球団から車の運転がOKになると、ついつい買ってしまう。プロ野球選手をターゲットにした外車販売専門の業者もいるので、先輩からの紹介で購入する例が多いですね。業者サイドからすると、『次はあの選手にセールスを』と、ドラフト会議で指名された瞬間にシミュレーションをするのだとか(笑)」
しかし、引退後にそれを維持できる暮らしができるのは、ほんの一握り。過去の栄光に別れを告げ、あとはいかに現実と「折り合い」をつけられるかが、第二の人生の成否を分けるのです。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]