勝田が試みたギヤボックスの応急処置。不運のトラブルと共に障壁となった短期開催/WRCイタリア
2024年6月5日(水)16時9分 AUTOSPORT web
5月31日(金)から6月2日(日)にかけてイタリアの離島サルディニアで開催されたWRC世界ラリー選手権第6戦『ラリー・イタリア・サルディニア』。TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームのマニュファクチャラードライバーとして出走した勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、大会の折り返しとなるスペシャルステージ(SS)8で総合3番手に浮上したものの、ギヤボックストラブルのためにデイリタイアを余儀なくされ、最終的には総合35位での完走となった。
大会後のオンライン取材会に出席した勝田は、3番手走行中に起きたトラブルの詳細や、自身が施した応急処置、結果的に今大会の“ショートフォーマット”がリペアを妨げることになった点などを語った。
今回の『ラリー・イタリア・サルディニア』は、荒れたグラベル(未舗装路)が舞台となったが、これまで勝田自身も「課題が多い」と感じていた難ラリーだった。今回は自己ベストの4位以上を目指し、大会前半は表彰台目前の4番手をキープ。SS8ではティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)のコースオフによって3番手浮上に成功するなど、「サルディニアとしては今までで一番良い」流れに乗れていた。
しかしそんな矢先、勝田が駆るトヨタGRヤリス・ラリー1をギヤボックストラブルが襲った。その状況を振り返る。
「3番手にポジションを上げたSS8で、ギヤボックスの方から異音が鳴り始めました」
「歯車自体の破損はなかったので走行は可能でしたが、ギヤボックス自体に亀裂が入ってしまったのでその部分からオイルが漏れて、オーバーヒートしました」
「以降は完全にオイルがない状態で走ってしまっていたので、早かれ遅かれ止まってしまうだろうという状況でした」
そこからはギヤボックスやその内部を労りながらの走行となり、辛うじてステージを走り終えた勝田は、続くSS9の付近に設けられたタイヤフィッティングゾーンにて15分間の応急処置を試みた。
「タイヤ交換を終えた後、まずはアンダーガードを外してギヤボックスを確認すると、明らかなクラックが入っていたので、これでは走れないとわかりました」
「そのクラックを塞ぐために、普段はラジエーターなどの破損部分の修理に使っているケミカルメタルを使用して、何とか応急処置をしました」
「その次にミッションオイルを足す、といった流れで応急処置を施したのですが、ふたたび走りはじめると亀裂は広がってしまい、結局はオイルも漏れてしまって走行不能になってしまいました」
基本的にはタイヤを交換するための整備時間のため、残された数分間でSS走行後の熱を帯びたマシンに対し、できる限りのシーリング処置を施した勝田。普段から「ステージ間にできる整備については把握をし、実践も行っている」というが、今回のトラブルはその範疇を越えていた。
■ギヤボックス交換を阻んだ“ショートフォーマット”
今回は荒れたグラベルを走り続けるサルディニアとあって、「クルマに無理をさせないように走っていた」。これといった大きな衝撃もなかったなかで起きた今回のトラブルは、チームも不思議に思うほどの致命傷だったようだ。
さらに、普段の大会であればタイヤフィッティングゾーンでの15分間は、サービスパークにマシンを戻してメカニック達が整備を行うミッドデイサービスのタイミングとなる。しかし今大会は、圧縮時間割の“ショートフォーマット”での開催となっていた。
実際に組まれたのは、普段は木曜日に実施するシェイクダウンを金曜日の午前中に実施し、続く金曜午後にはそのままデイ1に突入するという圧縮でのアイテナリー(行程表/タイムスケジュール)。その結果、一日を通して走行を行う通称“フルデイ”の土曜日は、8本のステージを行いながらもミッドデイサービスの設定はなし。このスケジューリングが勝田の運命を分けた。
「タイヤフィッティングゾーンでは、ギヤボックスを交換することもできなかったですし、応急処置では何ともならなかった」と悔やむ勝田。
チーム側もこのスケジュールには疑問を感じたとのことで、「少なくともミッドデイサービスはなくてはならなかったのではないか」と、オーガナイザーやプロモーターとは相談を行っているという。
これがもし、もう一日余裕のあるスケジュールでミッドデイサービスが設定されていたならば、ギヤボックスの交換作業を完了して3番手から午後のステージを戦うこともできた可能性があり、違った結末も期待できた。開催条件はみんなと同じとはいえ、不運にも勝田にとっては今回のショートフォーマットが仇になってしまった。
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