衝撃だった“電撃引退”の舞台裏…イブラヒモビッチはなぜ去るのか「今日は雨が降っていた。『神様も悲しんでいるんだな』と」

2023年6月5日(月)16時16分 ココカラネクスト

飛躍を遂げた久保は、来季もレアル・ソシエダでプレーするようだ(C)Getty Images

 レジェンドがスパイクを壁にかける。現地6月4日に行なわれたヴェローナとのセリエA最終節で、ミランに所属するスウェーデン代表FWズラタン・イブラヒモビッチが現役引退を発表した。

 試合前の段階で自ら今季限りでの退団を宣言していたイブラヒモビッチ。本拠地サン・シーロで行なわれたこの日の最終節では、「退団セレモニー」が実施されるとされていた。そうした雰囲気のなかで、大勢のミラニスタ(熱心なミランファンの愛称)を前にして、偉大なベテランが口にしたのは、「引退」の二文字だった。

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 現在41歳。身体はボロボロだった。今季は開幕前に「俺は過去6か月もACL(前十字靭帯)なしでプレーしていた」と前十字靭帯と外側靭帯の修復および半月板の修復という大手術を実施。長期間のリハビリを経て今年2月26日のアタランタ(セリエA第24節)で復帰を果たすも、4月にハムストリングを痛めて再び離脱。その後にふくらはぎも痛めたために、ピッチに戻る機会は得られなかった。

 それでもキャリアは続けるとみられていた状況で「引退のことは誰にも言わなかった」というイブラヒモビッチは、「両手を広げて俺を受け入れてくれた。自宅にいるようにな気分にさせてくれた」と語るミラニスタの声援を受けて涙した。エモーショナルな気持ちになったのだろう。

 そして、セレモニー後の会見で彼は、次のように引退を決意した舞台裏を明かした。

「今日は目覚めた時から雨が降っていた。『そうか……神様も悲しんでいるんだな』と俺は呟いたよ。(引退は)家族も知らなかったんだ。だから感情が複雑で、今日はここまでゾンビのような気分だったね。

 今日は喋ってもないし、ジョークすらも言ってない。3か月前は引退を考えるとパニックになったぐらいだったが、今日はそれを受け入れて晴れやかな気分だ。もちろん、ちょっとは悲しいけどな」

「引退はこの10日間で決めた。もう十分だろうと。ピッチで最後までやり遂げることが出来なかったが、俺は受け入れた」

 無論、“誰も知らなかった”孤高のカリスマの幕引きは、イタリア・メディアでも大きな衝撃となった。

 ミラノに拠点を置く日刊紙『Corriere della Sera』は「『サッカーに別れを告げる時が来た」とズラタンは言ったとき、ただミランとの別れになると予想していたサン・シーロを驚かせた』」と電撃引退の瞬間を回想。そのうえで「このスウェーデン人は、別の場所でキャリアを続けることもしない。ミランに別れを告げただけではなく、もう2度とプレーしないのだ」と強調した。

 また、イタリア大手紙『Gazzetta dello Sport』は「“GOD”bye」(さようならとイブラヒモビッチの愛称でもある『神』をかけた言葉)という言葉とともに、「過去何か月もの間、『(現役を)続けたい』と口にしてきたズラタンは突然、別れを切り出した。その言葉にサン・シーロは溢れる涙を止めることはできなかった。歴史的なアイドルであり、ロッソネーリ(赤と黒の意)のシャツを着て2度のイタリアチャンピオンとなった、特別なリーダーの言葉に、だ」と、カリスマへの賞賛を綴った。

 指揮官は、絶対的なリーダーシップを発揮しながら、去りゆくベテランへの感謝を口にした。試合後の会見でステーファノ・ピオーリは、「ズラタンはピッチ内外で多くのことを助けてくれた。彼は私にとっての柱だった」と言葉を紡いだ。

「信じられないほどのメンタリティーを持ち、月曜日から日曜日まで勝者であり、我々のような若いグループが多くのことを理解するのを助けてくれた。彼は偉大なチャンピオンであることを証明してくれただけでなく、私がよく接してきた人物であり、ある種の環境に適した性格の持ち主でもあることも示してくれたんだ」

 重度の怪我をしてても、指揮官から揺るぎない信頼を得ていた。そんな重鎮はエモーショナルだった最後の会見でも“らしい”言葉を残している。

「(イブラヒモビッチになれる選手は現れるか?)無理だよ。不可能だね。ズラタンは唯一無二だ。これは俺のエゴから来る発言ではない。俺たちは皆がそれぞれ違うからだ。俺は若い頃にファン・バステンと比較されたが彼は彼であり、俺は俺だ。似たような部分があっても比較するのはフェアじゃない。もう1人のズラタンがいるなんて思わない」

 我が強すぎるがゆえに「独善的」と揶揄されもしたイブラヒモビッチ。しかし、図抜けたパーソナリティーと類まれなスキルがあるからこそ、彼は観る者を魅了したのだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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