燦然と輝く栄光の裏話…澤穂希は4人目のキッカーだった!?[2011年女子W杯]

6月6日(木)20時0分 サッカーキング

今なお語り継がれる世界女王戴冠には様々なストーリーがある [写真]=Getty Images

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FIFA女子ワールドカップドイツ2011のなでしこジャパン初優勝は、今も日本女サッカー界に燦然と輝き続ける金字塔だ。

「日本女子サッカーやこのチームに携わってくださった、誰かひとりの努力でも欠けていたら、優勝はなかった」

宮間あやは2011年女子W杯の大会後、“世界一”の称号をこのように表現している。FIFAの世界大会で、なでしこジャパンが男女を通じて初めてその頂点に登り詰め、その後の日本女子サッカーに大きな影響をもたらした大会だった。
控えから存在感を放ったニューヒロインたち
 2011年女子W杯に臨む前のなでしこジャパンは、当時FIFAランキング4位だった。しかし、大会開幕の約1ヶ月前に2回対戦した国際親善試合・アメリカ戦では、なでしこジャパンが2回とも0−2で敗れ、初戦の約10日前に行われた韓国戦でも勝ち切れずに1−1で引き分けるなど本調子ではなく、決して優勝候補とは言えなかった。

だが、大会が始まると、なでしこジャパンはグループステージで2連勝した。第1節のニュージーランド戦で、エースの永里優季が早速得点を決めると、続くメキシコ戦では、澤穂希がハットトリックをマーク。これで澤は代表通算得点を76に更新し、元男子代表の釜本邦茂氏が持つ日本代表歴代得点記録を塗り替えた。

この時はまだ、川澄奈穂美岩渕真奈は控え組で、特に川澄は途中出場ながら存在感を示し始め、チャンスメイクでチームの流れを変える役目を担っていた。

 後に優勝を果たすなでしこジャパンのターニングポイントを挙げるなら、それは準々決勝のドイツ女子代表戦だろう。

前回大会キャプテンの磯崎浩美からDFリーダーを引き継いだ岩清水梓と、弱冠20歳の熊谷紗希、そして3人のGKの中で最も若かった海堀あゆみを中心に、相手の猛攻をしのぎ、途中出場の丸山桂里奈が延長戦で一瞬の隙を突いて決勝点を奪った死闘だった。

だが、当時の選手たちに聞くと、そのドイツ戦の前のGS第3節・イングランド戦がターニングポイントだったと話す選手が少なくない。
ターニングポイントとなった“2位転落”
 なでしこジャパンはこのイングランド戦で0−2の完敗を喫し、グループ2位に転落したことで、準々決勝は開催国ドイツとの対戦が決まった。1度もドイツに勝利したことがなかったこともあり、下馬評では圧倒的にドイツ有利だった。

大野忍は「ドイツと対戦する前に、イングランドというヨーロッパスタイルのチームと直前に対戦していたことが、なでしこジャパンにとっては良かった」と話す。イングランドに敗れて逆境に立たされながらも、その経験を直後の試合に生かして、女子W杯2連覇中のドイツを破ることに成功したのだった。

大会中に頭角を現してきた川澄が、最も輝いた試合が準決勝のスウェーデン戦だった。佐々木則夫監督が今大会で初めて先発を入れ替えることを決め、投入された川澄は2トップの一角として攻撃を牽引した。前後半に1得点ずつをマークした川澄はこの試合以後、なでしこジャパンの主力に定着し、数年にわたって活躍し続けた。
澤がPKキッカーを辞退した理由
 アメリカとの決勝戦は、まるでドラマのような結末を迎えた。優勝候補筆頭のアメリカから27本のシュートを打たれながらも、なでしこジャパンも負けずに14本のシュートを放った。この攻める姿勢を捨てなかったことが、アメリカとのシーソーゲームを制した要因だった。勝敗はPK戦にもつれ込み、4番目のキッカー熊谷が右足でPKを成功させたシーンは、日本サッカーのハイライトと言える。

実はそのPK戦で、4番目に蹴る予定だったのは澤だった。だが澤は5年前の2006年、アジア競技大会の決勝・北朝鮮戦で、PK1人目を任され、相手GKにセーブされて優勝を逃して以来、PKを苦手としていた。

佐々木監督がPKの4番目のキッカーに澤を指名したところ、「私蹴れない」と澤は辞退したという。すると佐々木監督は「悩んだが、まぁ澤はさっき(延長終了間際の同点弾を)決めてくれたからいいか」と考え直し、澤は10番目のキッカーに。代わって4番目のキッカーとなった熊谷が、優勝決定の瞬間を演出したのだった。

 宮間は2011年のW杯優勝について「自分のことだが自分のことじゃないような、この感情をいつになったら言葉で表せられるんだろう」と回想する。

そして、追われる立場となったなでしこジャパンは、新キャプテン宮間を中心に、この大会で証明した組織力を生かして翌年のロンドン五輪準優勝、そしてFIFA女子ワールドカップカナダ2015へと再び歩みを進めていく。

文=馬見新拓郎
“追われる立場”のなでしこジャパンを待っていたのは…[2015年女子W杯]

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