久保建英のデビューに見る中田英寿の姿。まさに「新時代の幕開け」、歴代名手を上回る質とは

6月10日(月)11時15分 フットボールチャンネル

「『バケモン』が出てきた」(長友佑都

 日本代表は9日、キリンチャレンジカップ2019でエルサルバドル代表と対戦し、2-0の完勝を収めた。この日、スタジアムを大いに沸かせたのが18歳の久保建英であった。後半22分にピッチへ入った久保は、デビュー戦とは思えぬ堂々としたプレーで攻撃を活性化。レベルの高さを見せつけるなど、少ない出場時間でも持ち味は存分に発揮できていた。その質は、過去の日本代表名手をも上回るかもしれない。(取材・文:元川悦子)

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 永井謙佑の9年越しの日本代表2ゴールで2-0とリードしていた9日のエルサルバドル戦の後半22分。背番号27をつけた18歳5日の久保建英が満を持してひとめぼれスタジアム宮城のピッチに立った。

 3万8000人超の大観衆の拍手と大声援が起こる中、受ける中、かつての同僚・中島翔哉とともに出場した若武者はトップ下に陣取り、躍動感溢れるプレーで前線を活性化。後半28分には大迫勇也からのスルーパスを右サイドでもらうと、得意のドリブルでDF2人を抜き去って左足を一閃。惜しくもGKに防がれてしまったが、Jリーグで見せている通りの堂々たる仕掛けを披露した。

「結構最初の方だったんで、行こうかなと思って2人の間を狙ったらスルっていい感じで抜けてシュートを巻こうと思ったんですけど、ちょっと浮き上がらなくて。最後のキックのところで上を狙っていたのに、下に行っちゃった」と本人は決めきれなかったことを悔しがったが、98年4月1日の韓国戦に17歳で出場した市川大祐に次ぐ年少出場記録を作った選手とは思えないほどの存在感をいきなり示す。

 その後も切れ味鋭いドリブルでチャンスを作り、敵からボールを奪う献身的守備も見せるなど、すでにA代表レベルであることを遺憾なく認識させた23分間だった。

「デビューした実感? あんまり実感ないですけど、これから先、大きくなって自慢できることの1つになるのかなと思います」と本人は先を見据えていたが、この一挙手一投足にはチームメートも驚きを禁じ得ない。代表117試合出場の長友佑都も「人生2回くらいやってるんじゃないかと思うくらい、18歳にして冷静で客観的に自分が見えてる。久しぶりに『バケモン』が出てきたなっていう感じ」と語るなど、令和の怪物候補はいきなりベールを脱いだ印象だ。

中田英寿を思い起させる久保のデビュー

 1年前の2018年ロシアワールドカップで本田圭佑が代表の一線から退き、香川真司もケガで欠場する中、18歳の久保の登場は「新時代の幕開け」を大いに印象付けるものだった。

 中田英寿、中村俊輔、本田、香川…。日本がワールドカップ初参戦を果たした98年フランス大会以降、トップ下を担ったスターは何人かいた。それぞれを改めて振り返ると、97年5月の韓国戦で初キャップを踏んだ中田はいきなり攻撃の軸を担い、周りを動かす圧巻パフォーマンスを披露。衝撃的デビューを飾った。

 今回の久保が残したインパクトも22年前の彼に近かったかもしれない。中田はそこから一気にレギュラーに定着。同年秋から始まったワールドカップ予選で大黒柱に君臨し、ジョホールバルの歓喜につなげた。久保も同じ軌跡を辿れるかどうか非常に興味深い。

 中村俊輔と本田の場合は初招集から長い時間が経ってからの代表デビューだった。中村は2000年2月のシンガポール戦が初キャップだったが、合宿に呼ばれるようになってから2年の月日が経過していたし、2008年6月のバーレーン戦で一歩目を踏み出した本田も1年以上を費やしたうえでの初舞台であった。

 しかも、主力の座をつかみ取ったのはしばらく先。中村は2002年日韓ワールドカップメンバー落選の屈辱を乗り越え、ジーコジャパン時代から大黒柱に成長し、本田も2010年南アフリカワールドカップでの成功が飛躍のきっかけになった。

 代表キャリアの序盤は必ずしも順風満帆ではなかったし、いきなりチームを掌握したわけではなかった。当時の主力との実力差も少なからず垣間見えた。こうした点は久保との違いだ。

久保は偉大な先輩を越えるのか

 2008年5月のコートジボワール戦で「平成生まれ最初の代表選手」として初キャップを飾った香川は招集直後に出番を与えられたものの、やはり中村や本田同様に最初の2年間は不安定な立場に置かれた。その象徴が南ア出場権を手にした2008年6月のウズベキスタン戦のベンチ外であり、南アでの代表落選だ。

 若い選手というのは好不調の波が大きく、安定したパフォーマンスを出せないことが多い。チームでの立場も不安定になりがちなのだ。けれども、久保はそういったマイナス面をまるで感じさせない。11年前の香川よりはるかに自信に満ち溢れていたのは確かだろう。

 エルサルバドル戦で出場した時間帯は、右サイドバックに室屋成、ボランチに橋本拳人、左MFに中島翔哉というFC東京の仲間たちが周りを取り囲み、2017年U-20ワールドカップで共闘した堂安律もいて、戸惑うことなく普段通りの自分を出せた部分は確かにあった。それを差し引いても、恐ろしいほどの冷静さや高度な技術・戦術を兼ね備えた久保はA代表で十分通用するレベルであることを短時間で実証した。そこは過去のトップ下の名選手たちを上回る部分。だからこそ、先々への期待が高まってくるのだ。
 
 さしあたって次はコパ・アメリカ(南米選手権)に参戦する。チリ、ウルグアイ、エクアドルという強豪相手に久保が何を見せてくれるのか。そこはしっかりと見極めなければならない点だ。

 今回のエルサルバドルは中南米から強硬移動してきて、お世辞にもコンディションがいいとは言えず、プレーの強度も低かった。が、南米の地で挑む次の相手は全く別物。今回のように気持ちよくプレーできる環境ではない。

 本人は「強い相手の方がいい」と言い切ったが、大舞台でも持てる力を発揮して、日本攻撃陣の軸となれれば、本当にこの先のA代表レギュラー定着が見えてくる。

 果たして18歳のアタッカーは偉大な先人・中田英寿以上の急激な成長曲線を描くことがきるのか。ワールドカップ3大会4ゴールの本田の実績を超えられるのか。今回のA代表デビューはあくまで通過点でしかない。

(取材・文:元川悦子)

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