ユーロフォーミュラ・オープン:佐藤万璃音の快進撃止まらず。スパ大会連勝でランク首位に

2019年6月13日(木)12時40分 AUTOSPORT web

 ベルギーのスパ・フランコルシャンで6月7〜9日、ユーロフォーミュラ・オープン(EFO)の第4大会が8チーム/21台の参加により実施され、佐藤万璃音(モトパーク)が2連勝を飾った。


 ホンダ育成ドライバーでレッドブル・ジュニアの角田裕毅(モトパーク)は2位とリタイア、ホンダ育成の名取鉄平(カーリン)は8位と6位という成績を残した。


■佐藤万璃音、シーズン4勝目でランキングトップに


 佐藤はこの週末、2ポールポジション、2ファステストラップ、2勝と、1大会で取得可能な最大得点を荒稼ぎ。もっとも、滑り出しは決して順風満帆ではなかった。7日の練習走行1回目こそトップタイムを記録したものの、セクター2はトップから1.2秒弱後れの2分12秒726で4番手。セクター2に関してはモトパーク陣営全体として遅く、その改善が喫緊の課題だった。同日の練習走行2回目は2分13秒241で7番手。セクター2のタイムはやや改善したとはいえ、不安を抱えて翌日の予選を迎えた


 8日の予選1回目、モトパークの4台はセッション途中までピットガレージ前で待機した。ほかのチームが新品タイヤを2セット投入する戦略を採ったのに対し、モトパークは1セットの投入に留めて決勝レース1へ新品タイヤ1セットを温存。もし、赤旗や黄旗などが掲示されればタイムアタックの機会を失う恐れもあった。


 幸いにもセッションは順調に進み、佐藤は2分10秒527のトップタイムで今季3回目のポールポジションを獲得した。「コース終盤で邪魔が入らなかったらセクター3はもう少し速かった」と悔やむとおり、アイデアルラップは全セクターで最速の2分09秒868。タイヤの違いなどもあるとはいえ、昨年のFIA-F3ヨーロピアン選手権(ヨーロピアンF3)でミック・シューマッハーが記録したポールタイムをしのいだ。


 同日の決勝レース1では素晴らしいスタートを決め、2番手の角田に十分なトゥ(スリップストリーム)を使わせない距離まで突き放した。4周目にレ・コーム付近でにわか雨があり一時は約0.3秒差に迫られたものの、徐々にリードを広げて今季3勝目を飾った。「レース終盤にもにわか雨があった。リスクを避けてペースを落として走り切った」と佐藤は語った。


 9日の予選2回目、セッション前半は中古タイヤでも6番手のタイムを記録。新品タイヤを履いたセッション後半には2分10秒277を記録して今季4回目のポールポジションを獲得した。「誰もがモトパーク勢のトゥを使いたがっている様子だった。ちょっとしたトラブルでコースインが遅れて最初は単独走行だったけど、バスストップ・シケインで多くのクルマが僕を待ち構えていた。後ろからしばらくクルマが来ないと分かっていたので、手前のブランシモンで止まるくらいの速度まで落として前をクリアにした」と頭脳プレイを披露した。


 同日の決勝レース2は、レッドシグナル点灯開始直後にエンストした影響で、第1コーナーへは先頭で進入するも2番手以降を突き放せずじまい。このためトゥを使われて1周終了時点では3番手へ後退。ところが3周目、先頭を走る角田にリアム・ローソンが激突して2台ともリタイア。これで佐藤は首位へ返り咲き、セーフティカー退去時のリスタートも難なく決めて逃げ切った。


「オープニングラップのケメル・ストレートで後ろの2台に先行されるのは想定内だった」と佐藤。


「ただ、これまでの経緯から前の2台は何か起こしそうだったので無闇に接近しなかった。あの事故の直前、僕はリアムに幅寄せされて芝生に出るハメになり結果的にコーナー手前で2台との距離が空いた。直後にあの事故です」


「クルマは決勝レース1ほど調子が良いわけではなかった。でも、これ以上は無い成績で良い週末になった。チーム全員の良い仕事にとても感謝しています」


■角田は初走行のスパに手応え。「走っていて楽しい」


佐藤万璃音(モトパーク)
ユーロフォーミュラ・オープン スパ大会レース2の表彰台


 角田にとってはじめて走るスパフランコルシャンの練習走行1回目は4番手。同2回目は自己ベストタイムを更新するも僅かに留まり10番手。セクター2だけはチーム内でトップだったが、セクター1、3でスピードを欠いた。とはいえ、「このコースは走っていて楽しい」と笑顔を見せており翌日の予選が期待された。


 新品タイヤ1セットだけの投入となった8日の予選1回目、「はじめの数周は遅いクルマに引っ掛かったけれど、そのあとの位置取りは良かった」として2分10秒780で2番手。とはいえ、「思っていたよりもタイムが伸びなかった」と首を傾げた。


 同日の決勝レース1、「スタートして間もなくはすぐに(佐藤を)抜けるだろうと思っていた」という。しかし、「ぜんぜん追い付かなかった。にわか雨が落ちてきたときはチャンスだったけれど、スタートのときと同じでぜんぜん追い付けなかった。2、3、4速で離される感じで、6速でようやくスリップストリームに入れるくらいだった」と苦戦の理由を説明した。


「予選のオーバーステアから決勝ではアンダーステアに変わり、序盤は少し焦りがあってドライビングがコンスタントではなかったかもしれない。スリップストリームを使っても追い付けないから、コーナーで詰め寄ろうと突っ込み過ぎて、アクセルが遅れて立ち上がりが鈍ったのかもしれない」と2位に終わったレースを分析した。


 9日の予選2回目、角田は再び2番手。ただし、トップとのタイム差は0.7秒以上と決勝レース2での苦戦が懸念された。それでもスタートで佐藤に食らいつき、オープニングラップで早くも先頭に立った。しかし、角田のレースはあっけなく終わった。3周目のレ・コームで2番手のローソンがコーナリングに失敗、角田の横腹に激突しながら2台はコース外へ。レッドブル・ジュニアの2台が一挙に戦列を去った。

レース2でクラッシュした角田裕毅とリアム・ローソン


「オープニングラップではリアム(ローソン)がケメル・ストレートで僕をうまく押してくれて先頭に立てた。でも……」と口をつぐむ。よほど悔しかったのだろう。角田とローソンはフランス・ポールリカールでの開幕大会でも接触している。このときはローソンの幅寄せが問われてペナルティが科せられた。今回の一件でもローソンにペナルティが科されるだろう。しかし、なんとも後味の悪い結末だった。


■名取は「日本では体験できないコースで苦戦」


 角田と同じく名取にとってもはじめて走るスパフランコルシャン。フランス・ポー市街地での第2大会、ドイツ・ホッケンハイムリンクでの第3大会と不満が残るレースが続いただけに、早めの軌道修正を図りたいところ。しかし、練習走行1回目は11番手、同2回目は15番手とふるわなかった。


 迎えた8日の予選1回目、名取は新品タイヤを2セット投入。「一部のチームは1セットだけでしたが、天気予報では決勝の時間は雨の可能性も示していたので、多くのチーム同様に僕らは新品タイヤを2セット入れた」と理由を語った。しかし、結論を先に言えばレインタイヤが必要なほどの雨脚にはならなかった。


 時間を戻せば、1セット目の新品タイヤではミスこそなかったがさほど良いタイムではなかった。しかし、2セット目の新品タイヤでは、「走れば走るだけタイムを削れる印象」だったようで7番手となる2分11秒361を記録した。


「もう少し周回できれば良かったし、スリップストリームが使えていたらなお良かった。でも、リザルトは別にしてタイムアタック自体には満足している」と笑顔を見せた。


 同日の決勝レース1、予選で使ったタイヤで戦ったハンデもあり、「序盤からペースが良くないと感じていて、後半になるにつれてタイヤの消耗が厳しかった。最後は防戦一方になった。集団の中での競い合いでは、オー・ルージュを挟んでのストレート2本は間合いが難しい。近すぎても遠すぎてもいけない。普段とは違う組み立てをしないといけない。でも、得られるものはあったので明日につなげたい」と前を向いた。


 しかし、9日の予選2回目で名取は11番手と出遅れた。「自分のミスで順位を落とした。このサーキットは独特で駆け引きが大事。日本では体験できないコースで苦戦した」と話した。迎えた同日の決勝レース2、名取のスタートは悪くなかった。しかし、オープニングラップで3ワイドの競り合いになった際、軽い接触でエアロバランスが崩れてしまった。


「アンダーステアが出て走りにくかった」と名取。一時は5番手まで浮上して表彰台を視野に入れた。しかし、結果は6位。「今日は少し攻めたセッティングで、予想以上にアンダーステアが強くてタイヤの消耗も激しかった。最後はチームメイトにも抜かれた。ただし、ホッケンハイムよりは明らかに良い状態になっている。今回はちゃんとレースができたと感じた」と語っており、良い流れを引き寄せられているように見えた。


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 第4大会終了時点のドライバーズ・ランキングは、158点(4勝を含む6表彰台、4ポールポジション、3ファステストラップ)の佐藤が首位、104点(2勝を含む4表彰台、2ポールポジション)のローソンが2位、98点(1勝を含む5表彰台、2ファステストラップ)の角田が3位。名取は34点で9位につけている。


 次戦第5大会はハンガリー・ハンガロリンクで7月5〜7日に開催される。




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