昨年とは“事情”が異なるポルシェ。ポルティマオでドライバー3名体制を採る理由/WEC第2戦

2021年6月13日(日)14時23分 AUTOSPORT web

 WEC世界耐久選手権のLMGTEプロクラスに参戦するポルシェGTチームのオペレーション責任者であるアレックス・シュテーリッヒは、第2戦ポルティマオ8時間レースにおいて同チームが採用している1台あたり3名のドライバー体制が、ル・マン24時間レースの準備に向けて「本当に有益」なものであると信じている。


 ポルシェは6月11〜13日にポルトガル南部のポルティマオで開催中のレースにおいて、ル・マン以外のWECのレースは初めて、ドライバー3名体制を採っている。


 すなわち、91号車ポルシェ911 RSR-19のリヒャルト・リエツ/ジャンマリア・ブルーニ組にはフレデリック・マコウィッキが加わり、92号車のケビン・エストーレ/ニール・ジャニ組にはミカエル・クリステンセンがジョイントするというラインアップだ。


 これら2組のトリオは、8月21〜22日にフランスのサルト・サーキットで開催されるWEC第4戦ル・マン24時間レースにおいても、ワークスポルシェを代表することとなっている。


 ポルシェは当初、(2021年開幕戦として予定されていた)セブリング1000マイルレースで3人のドライバーラインアップを組むことを計画していたと、シュテーリッヒは説明する。その後ゼブリング戦はキャンセルとなり、ポルティマオで(1000マイルレースと同等となる)8時間レースが開催されることとなった。


「我々はセブリングでずっとそれをやりたかったのだが、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権とWECのダブルヘッダーイベントだったため、過去にはそれが不可能だった」とシュテーリッヒはSportscar365に対し語っている。


「(過去のレースで)我々には、サードドライバーがいなかった。我々は2019年のセブリングにおいて、高気温時には、サードドライバーが有益であることに気づいた。そのため、今年のセブリングでは3人のドライバーを登録するつもりだった。今年はIMSAのファクトリープログラムを実行しておらず、ドライバーが利用可能だからだ」


「実際にはセブリング戦はキャンセルされたが、シーズンの早いうちにそのアイデアを実行した方がいいと思った。ここポルティマオでの8時間レースと、ル・マンでの24時間レースでサードドライバーが走る距離を考えると、それはかなりのマイレージとなる」


「ポルティマオはとにかく暑くなる可能性があり、またフィジカルな(負担が大きい)トラックでもあるため、我々が当初のアイデアをここで維持することは明らかだった。そのため、我々はすべての良いものを組み合わせた」


「ル・マンでのサードドライバーがすでにチームに加わっていることは、助けになるので本当に有益だ。それが、我々がこの体制を採っている理由だ」

ポルティマオのトラックウォークに臨むポルシェGTチーム92号車のジャニ、クリステンセン、エストーレ


 ル・マン以外のWECのレース参戦は2017年以来となる91号車のマコウィッキは、ル・マンの前にサードドライバーをチームに溶け込ませるため、(2台で)6人体制を採ることが重要であると付け加える。


 フランス籍のマコウィッキにとって、昨年はこのアプローチは必要なかった。なぜなら、IMSAの長距離レースにおいては911 RSR-19をドライブしていたからだ。しかし今年に関しては、ル・マン前に出場機会が必要であると考えている。


「間違いなく、ふたりではなく3人のドライバーがいることは、純粋なレースパフォーマンス以上の(意味がある)ものだ」とマコウィッキはSportscar365に対し語っている。


「ル・マンに入ったときに、チームのシステムに対してストレンジャー(よそ者)とならないよう、チームの組織や時間の使い方、同僚ドライバーとの共有など、ル・マンのための準備をすることが重要だ」


「もちろん、ル・マン、そして24時間レースは(8時間レースとは)異なるものだ。だけど僕は過去にアメリカでサードドライバーを務めていていて、シーズンの初めにデイトナ24時間、セブリング12時間をともに戦うことで、システムの一部であると感じることができた」


「そして最終戦であるプチ・ル・マンで再びチームへ戻ると、みんなは一年間をともに戦ってきている反面、(サードドライバーは)それほどつながりを感じられないものなんだ」


「ここでは、その“つながり”を完全に維持し、ル・マンに対して可能な限り強力であることを確認したい。ポイントとチャンピオンシップにとっても重要だ。今季最大のレースだ」

91号車をドライブするリエツ、ブルーニ、マコウィッキ


 ル・マンへの準備には有益であるとしたにも関わらず、今回の体制がポルティマオにおいてライバルのフェラーリに対する大きな優位性を与えることについては期待していないと、ステューリッヒは語っている。


「戦略上は、長所でも、短所でもないと思っている」とステューリッヒは言う。


「過去を振り返ると、我々は常にふたりのドライバーで8時間レースを戦い、BMW、アストンマーティン、フォード、フェラーリは3人体制を採っていた。いまや、それは変化した」


「これまでは8時間レースの運転時間に関して2名体制では不利だったものが、この冬の間にルール的にクリアとなった。したがって、2名でも3名でも、アドバンテージやディスアドバンテージはない」


「たしかに3名体制であれば、それほど長く運転する必要はなく、運転時間により多くのインプットを与えることができる。しかし、これは大きなアドバンテージとは言えない」


 ステューリッヒの言うルールの明確化とは、8時間レースにおいて『ひとりのドライバーが、(連続する)6時間のうちに4時間を超えて運転してはならない』とする規則を、2名体制の場合は免除すべきという、昨年12月のポルシェの要求が受け入れられたことを指している。

ポルティマオの1コーナーで記念撮影に臨む2台・6名のポルシェGTチームドライバーたち

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