トゥーロン国際決勝進出。U22代表で見る森保式3バックと日本の相性

6月13日(木)13時17分 Sportiva

 先のトリニダード・トバゴ戦、エルサルバドル戦で、3バック(3−4−2−1)の採用に踏み切った森保ジャパン。サッカーの方法論がAとBのふたつに限られるとすれば、これはAからBに移行したようなもの。心変わりに相当する。欧州だったらその是非についていま、激しい論戦が展開されているに違いない。

 とは言え、トリニダード・トバゴ戦及びエルサルバドル戦は、相手との間に力量差がありすぎたため、是非を語るに相応しい題材とは言えなかった。森保式3バックの特徴が露わになるシーンは少なかった。サンプルを別に求めるなら、現在、トゥーロン国際大会に参加しているU−22代表チームの方が適している。
 
 東京五輪を目指すU−22では、森保式3バックの採用はとうの昔から定番化している。森保一監督が兼任監督として臨んだ2018年のアジア大会。そして横内昭展コーチが監督代行として臨んだ多くの試合が3−4−2−1だった。トゥーロン国際もしかり。U−22のメンバーが主体となるコパ・アメリカ、さらには東京五輪も、森保式3バックが採用されそうなムードだ。

 トゥーロン国際大会準決勝。相手はメキシコだった。大柄ではない選手がパスをつなごうとする点で日本とは共通するが、サッカーの国力では一歩先を行く存在だ。W杯でコンスタントにベスト16を狙う力がある中堅国である。


トゥーロン国際大会準決勝でPK戦の末にメキシコを下したU−22日本代表

 だが、この試合に臨んだメキシコチームはけっして強くなかった。うまいという印象もなく、60対40で日本が有利に見えた。終了間際に日本が2−2に追いつき、PK戦にもつれ込む展開は苦戦、不本意と言うべきだろう。

 その原因をすべて森保式3バックに求めるつもりはないが、相手とうまく噛み合っていなかったことは事実だ。

 その3−4−2−1と、オーソドックスな4バック(4−4−2、4−2−3−1、4−3−3)との違いは以下のとおりだ。

 3−4−2−1は、センターバックの枚数が1枚多く、サイドアの枚数が両サイドそれぞれ1枚(計2枚)少ない。そして余った1枚分が1トップ下に行く。トップ下が1枚から2枚になり、俗に2シャドーと呼ばれる陣形になる。

 後ろに人が多く、サイドの人数が減り、真ん中の高めの位置に人が増えた。サイド攻撃を重視しない布陣。森保式3バックの特徴をひと言で言えばそうなる。

 この日、サイドアタッカーとして出場したのは川井歩(右・レノファ山口)と相馬勇紀(左・名古屋グランパス)。この両ウイングバックは両サイドで1対2の状況にあった。メキシコの布陣は4−1−4−1的な4−3−3で、サイドアタッカーは各2人だった。

 サイドはピッチの廊下と言われる。中央に比べ、相手のプレッシャーは片側からしか掛からない。中央に比べ、前進しやすい環境にある。そこで1対2の関係を築かれれば、サイド攻撃は自ずと停滞する。逆に相手の侵入を許すことになる。これはプレッシングサッカーか、後ろで守るサッカーかの分水嶺とも言うべき重要なポイントになる。

 2シャドーの神谷優太(愛媛FC)と岩崎悠人(北海道コンサドーレ札幌)が左右に開いて3−4−3的になれば、この問題は解消されるが、日本は3−4−2−1に固執した。両ウイングバックは数的不利な状況に追い込まれているので、時間の経過とともに疲弊する。サイドにおける上下動は次第に鈍るものだ。

 しかし、左の相馬は頑張った。単独で期待以上のプレーを見せた。比較的高い位置を維持し、縦への推進力を発揮した。0−1から1−1に追いつくゴールもマークしている。讃えられるべき一番の選手だと言える。とは言え、この活躍を毎試合臨むのは酷な話だ。例外的なケースと捉えるべきなのだ。

 先述の通り、サイドアタッカーが各1人減った分、その2人の余剰分はセンターバックとトップ下周辺に回る。真ん中に人が多くなったわけだ。自ずとボールを奪われる位置も真ん中が多くなる。

 四方からプレッシャーを浴びるので、真ん中はパス回しの難易度が高い。奪われる位置として好ましい場所ではない。サイドに比べて自陣ゴールまでの距離が近い上に、逆モーションになりやすい。複数の選手が置き去りにされる可能性が高い。

 この手の好ましくないボールの奪われ方を、日本はメキシコより数多くしていた。なかなか自分たちのペースに乗れず、相手を追いかける苦しい展開になった理由だ。

 だが、例外もある。後半27分相馬が記録したゴールに至るシーンだ。真ん中で、川井、高宇洋(ガンバ大阪)、旗手怜央(順天堂大)、岩崎、田中碧(川崎フロンターレ)らがテンポよくつなぐ攻撃は、崩しとして鮮やか、かつ完璧だった。

 これがコンスタントにできるなら何も問題はない。だが実際、この試合でこれに迫るプレーはほかに一度もなかった。確率の問題になるが、危険と表裏一体の関係にあるつなぎと言ってもいい。

 少人数で攻めるカウンター攻撃が主体なら、ボールをロストしてもリスクは少ない。だが、中盤でパスをつないでいくサッカーになると、奪われる位置が低くなることも多くなり、危険度は増す。

 日本はパスをつなぐサッカーがしたいのか。後ろから大きく蹴るカウンターサッカーをしたいのか。前者だとするなら、布陣(3−4−2−1)との相性が悪いと言わざるを得ないのだ。

 つい1年と少し前、日本ではその論争が起きたばかりだ。

 後ろから大きく蹴るハリルホジッチのサッカーは、日本の目指す方向ではないと判断された結果、西野ジャパンが誕生したのではなかったのか。森保式3バック(3−4−2−1)はハリルホジッチのサッカーと親和性が高い。実際、森保監督はトリニダード・トバゴ戦の会見でこう語っている。

「ロシアW杯に西野さんのコーチとして参加してみて、このほう(4−2−3−1)が日本人には合っているのかなと感じた」

 それは言い換えればこうなる。従来の4−2−3−1の方が3−4−2−1より、パスをつなぐ日本のサッカーに合っている。だから、森保監督はA代表監督に就任するや、4−2−3−1を選択した、と。

 しかしそれは、横内コーチが監督代行を務めるU−22には適用されなかった。そして森保監督は今回、A代表にも3−4−2−1を採用した。ロシアW杯時に抱いた思いとは異なる、従来の森保式に回帰しようとしている。これは結構な問題だ。

 トゥーロン国際を戦うU−22代表のサッカーは、あえて言えばオシム以前のサッカーだ。トルシエ時代、ジーコ時代のサッカーに近い。ザッケローニ、アギーレ、西野式ではない。後ろに人が多く、その分サイドに人が少なく、攻撃が真ん中に偏りやすいサッカー。パスサッカーよりカウンターが似合うサッカー。攻撃的とは言い難いサッカーだ。それでいいのか。サッカー協会や技術委員長はこの変容をどのように理解しているのか。

 メキシコに2−2、PK戦で勝って決勝進出。ともすると好ましい結果に見えるが、もし4バックで戦っていれば、もっといいサッカーを見せることができた可能性がある。

 森保式か西野式か。日本サッカーのマックス値は、どちらの方が導き出されやすいか、冷静に考えるべき時を迎えている。



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