今季2勝のニル・ソランスは失意のコースオフ、地元ミコ・マルチェクがERC初優勝/ERC第4戦

2022年6月15日(水)11時22分 AUTOSPORT web

 早くもシーズン折り返しを迎えた2022年のERCヨーロッパ・ラリー選手権第4戦、ラリー・ポーランドが6月10〜12日の週末に開催され、今季2勝を飾っている“苦労人”ニル・ソランス(ヒョンデi20 Nラリー2)が悲運のアクシデントで戦列を去り、その対抗馬としてラリーを戦った地元出身のミコ・マルチェク(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)がシリーズ初優勝を飾っている。


 同国北部ミコワイキを中心としたグラベルステージが舞台となる1戦を前に、資金難で第2戦をスキップしていたソランスは、前戦での勝利を受け「サポートを見つけることができるかどうか。今後も努力を続けていく」との言葉を残していた。


 シリーズを戦う上で依然として経済的な問題に直面し続けているソランスだが、この第4戦を前に新たな機会が舞い込み、会期目前の火曜になって急転直下の新契約を締結。今季勝利を挙げたフォルクスワーゲン・ポロGTI R5ではなく、ポーランドのKOWAXレーシングが用意したヒョンデi20 Nラリー2のステアリングを握ることとなった。


 また、ERC参戦を通じてタイヤ開発のプログラムを継続するチームMRFタイヤは、このポーランド戦に向け5台体制への拡充を表明。その最後の1台にレッドブル契約ドライバーでもあるラトビア出身の22歳、マルティン・セスクの起用をアナウンスした。


 10日金曜の午後に超高速3.46kmの予選ステージで幕を明けたラリーは、30歳の苦労人が先行。水曜のテストセッションで初めてヒョンデの感触を確かめたソランスが、地元のマルチェクらをしのぐタイムを刻んでみせた。


 そのまま夜に開催されたSS1のスーパースペシャルステージ(SSS)でも僚友トム・クリステンセン(ヒョンデi20 R5)を従えたソランスは、トップ5がわずか1.3秒圏内という僅差の勝負を制し、ラリーリーダーの座を維持して初日を終えた。


「このクルマを本当に快適に感じているよ」と、サービスパーク帰還後に振り返ったソランス。「グラベルサーフェースの上で驚くほど良く機能している。僕ら自身も楽しみたいと思っているけど、このラリーがかなり難しいことも知っている。これだけハイスピードなステージだと、小さなミスが大きな災いをもたらすことになる。(今回の参戦を)助けてくれたすべての人に感謝したいし、すべての人のために最善を尽くすつもりだ」


 そう語ったソランスは、本格ステージ開幕となる土曜オープニングのSS2でもトップタイムを記録。スリッパリーなグラベル路で見事なドライビングを披露し続けたスペイン出身ドライバーは、午前のステージ群で4.6秒までアドバンテージを拡大する。しかしその直後、まさかの悲運が待ち受ける。

会期目前の火曜になって急転直下の新契約を締結したニル・ソランス(ヒョンデi20 Nラリー2)が、予選ステージ最速をマーク
スウェーデン出身のトム・クリステンセン(ヒョンデi20 R5)も終始、トップ5圏内でラリーを進めた
ミコ・マルチェク(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が最終日を前に20.4秒ものギャップを築く展開となった


■エンジンの水温が140度まで急上昇


 そのまま午後のループでもプッシュを続け、さらに0.8秒のマージンを稼いだソランスだったが、続くSS7で彼のドライビングと高負荷に耐えきれなかったヒョンデi20 Nラリー2はステアリングが破損。この瞬間、ただの“乗客”と化したソランスはそのままディッチに一直線となり、残念ながらここでラリーを終える結果となってしまった。


 これで首位を引き継いだのが地元出身のマルチェクで、昨季のERCで年間総合3位を記録した男は、2022年にWRC2のプログラムを本格化させた傍ら、ERC地元戦での勝負で自分自身を証明する機会を狙っており、残る日曜を前に20.4秒ものギャップを築く展開となった。


「このラリーは僕たちにとって大きな意味がある特別なものだし、リーダーの座にいるのはうれしいよ」と最終日を前に語ったマルチェク。


「今日は昔から知っていたステージだけでなく、非常に優れた新しいステージもいくつか存在した。このポジションに居られてうれしいし、とてもハッピーだ。ただ、ニル(・ソランス)がここに居ないことだけが残念だね。それでもこれはラリーというゲームの一部だし、明日は長い1日だろうが、体調は良いので頑張るだけさ」


 残る最終日で大量リードを維持するのは簡単な作業にも思われたが、マルチェクのシュコダはSS12で大量のグラベルを掬い上げたことで、エンジンの水温が急上昇。慌ててロードセクション用のマップに切り替えて、からくもステージを走破する。


 直後のタイムコントロールで必死の“砂掻き”を行ったクルーの努力が報われ、幸いなことにラリー続行が叶ったマルチェクは、背後のクリステンセンに対し10秒のリードを維持してフィニッシュ。狙いどおりに地元戦でのERC初優勝を成し遂げた。


「今日は本当に大変だった……。スタートは大丈夫だったけれど、トム(・クリステンセン)が僕たちに近づいていた。例のステージでは感触が良く、プッシュしてギャップを作るつもりだったけれど、フィニッシュラインの1km手前でラジエーターにグラベルを被った」と状況を説明したマルチェク。「まだ残り1km以上あったのに、水温が一気に140℃まで上がったんだ! 僕らは幸運だったと言うしかないね」


 2位クリステンセンに続き、最後の3位ポディウムにはケン・トーン(フォード・フィエスタ・ラリー2)が入り、4位にチームMRFタイヤのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)、5位にシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が続くトップ5に。続く2022年のERC第5戦はラトビアへと向かい、7月2〜3日のラリー・リエパヤでシーズン後半戦を迎える。

プラグの問題が発生したチームMRFタイヤのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2 EVO)は、それでも4位に入り、ソランスの脱落もあって選手権でのリードを拡大した
エストニア出身、ケン・トーン(フォード・フィエスタ・ラリー2)は苦心の前半戦を払拭する3位表彰台
「僕は今、ラリー・ポーランドの勝者としてここにいる。これは進化のステップが正しかったことの証明だ」と勝者マルチェク

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