ETRC開幕戦ハンガロリンクは、MANに乗る地元の英雄ノルベルト・キスが日曜連勝発進

2021年6月16日(水)17時5分 AUTOSPORT web

 カレンダー改訂を経て6月12〜13日に開幕を迎えた2021年のETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、週末のハンガロリンクで1ヒート減の3レースが争われ、土曜オープニングは今季から新型MANを投入したSLトラックスポーツ30のサッシャ・レンツが逆転で勝利。そして日曜の予選と2ヒートは、地元の英雄ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)がポールポジションからの連勝を飾り、母国ファンの前で華麗な“ハットトリック”を決めている。


 当初予定より約1カ月遅れ、開催地をイタリア・ミサノからハンガリーに変更しての幕開けとなった2021年ETRCは、首都ブダペスト近郊のテクニカルコースに全15台のトレーラーヘッドたちが集結した。


 その走り出しから印象的なパフォーマンスを披露したのが、地元で絶大な人気を誇るキスのトラックで、レベス・レーシングの紅いMANは、公式練習から予選セッションのすべてで最速タイムを記録。フロントロウ2番手に並んだレンツに対し、1.033秒差の圧倒的優位を持ってレース1のポールポジションを射止めた。


 2列目3番手にはシリーズ6冠を誇る“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/IVECO)と、2017年王者のアダム・ラッコ(バギラー・レーシング/FREIGHTLINER)が4番手並び、その後方5番手にはシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/IVECO)が続く実力派揃いの上位グリッドとなった。


 土曜午後14時を前に始まった今季最初のレースは、ポールシッターのキスが盤石のスタートを決め、レンツ以下の後続を徐々に引き離しに掛かる。しかし、数周を回ったところで彼のMANは突如ペースダウンし、レンツやハーンに次々とパスされる事態に。


 直後、アンダーフレームから煙を上げたレベス・レーシングのMANは、ターボパイプの故障によりブースト圧が失われてそのままピットレーンに。ハンガリーのヒーローは、ファンの期待とは裏腹にここでレースを終えてしまう。


 代わって首位に立ったレンツの背後では、ハーンとラッコが激しい攻防を繰り広げ、幾度もコンタクトを繰り返しながらのブレーキング競争を展開する。しかし蓄積されたダメージにより、ラッコのFREIGHTLINER(フレイトライナー)は右サイドのフェアリングが剥がれた状態となる。


 このバランス変化が祟ったか、左コーナーのターン2に向けサイド・バイ・サイドを繰り広げた2台は、続く右コーナーからストレートでハーンが先行して勝負アリ。カウルが脱落したまま走り続けたラッコは3番目のポディウムを死守し、先頭のレンツは10秒近いマージンを稼ぎ出し開幕勝利を挙げている。


 土曜午後のレース2キャンセルにより、明けた日曜は午前の予選から勝負が再開。前日は「失意のトラブル」で活躍の場を奪われたキスがここで奮起し、ふたたびレンツを2番手に押し退けて連続ポールを確保した。

SL Trucksport 30(SLトラックスポーツ30)のサッシャ・レンツを従え、R1で主導権を握っていた地元の英雄ノルベルト・キス(Révész Racing/MAN)
“帝王”ヨッヘン・ハーン(Team Hahn Racing/IVECO)とのバトルで、カウルを失うダメージを負った2017年王者のアダム・ラッコ(BUGGYRA Racing/FREIGHTLINER)
ターボパイプの故障によりブースト圧が失われたノルベルト・キス(左)は、ピットレーンでレースを終える


■連勝のノルベルト・キス「地元ファンの大歓声は本当に素晴らしかった」


「昨日のように秒差のポールとはいかなかったけど、2番手と0.2秒差の緊密なセッションで最前列を獲得できたのは満足だ。良いスタートを切り、今度こそ栄冠をもぎ取る必要があるね。レースペースは良さそうだし、予選よりも長期的には良くなるはずさ」と地元戦勝利に向け意気込んだキス。


 その言葉どおり、午後のレース3でホールショットを奪った真紅のMANは、背後のレンツに続き、4番グリッド発進からアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/MAN)をかわしたラッコの3台とともに独走状態へ。そのまま11周のトップチェッカーを受け、今季初優勝を手にした。


 その勢いは最終レース4にも引き継がれ、リバースグリッドの8番手からスタートを切ったキスは、オープニングラップのターン2までに6番手へと進出。前方のラッコにプレッシャーを掛けると、2台ともに帝王ハーンをパスして、そのまま隊列を組んで上位進出を続けていく。


 その後もテオ・カルヴェ(バギラー・レーシング/FREIGHTLINER)や、復帰組のシェーン・ブレルトン(トウ・トラック・レーシング/MAN)らをパスし、首位のハルムに迫っていった2台は、7周目のターン1でラッコをパスしたキスが2番手に浮上。続くラップで同様に仕掛けたMANは、ハルムの『イベコS-WAYレーシングトラック』も鮮やかに仕留め、逆転での連勝を飾ってみせた。


「ファンの大歓声は本当に素晴らしかった。最初の目標はサッシャ(・レンツ)を追い抜くことだけだったが、すぐに自分のトラックが最速だと確信した。忍耐が必要だと分かっていたから、シュティフィ(・ハルム)を追い抜くチャンスを待ったんだ。ドライブは楽しかったし、連勝できて最高だよ」と、地元戦パーフェクトの喜びを語ったキス。


 一方、惜しくも勝利のチャンスを逸したハルムも終盤はラッコとの肉弾戦を演じ、FREIGHTLINERのフロントボディワークを失わせるディフェンスで、今季初の2位表彰台を確保した。


「アダム(・ラッコ)の方がはるかに速かったので、2位を維持することはとても困難だと思った」と、レース直後に明かしたハルム。


「私は自分のポジションを守ろうとしたし、トラックレースでは多少のヒットは日常茶飯事よね。アダムはいつも公平だし、とても楽しいバトルができたと思う。でも、次のレースウイークエンドに向け、やるべきことがたくさんあることも分かっているわ」


 これで全7戦、30レースのシリーズが幕を開けたETRCの2021年シーズン。続く第2戦は7月16〜17日の週末に、トラックの“聖地”でもあるドイツ・ニュルブルクリンクでの2週連続バック・トゥ・バック戦が予定されている。

厳重な感染症対策と、入場者数上限が導入されたことで、熱狂的なファンがサーキットに詰め掛けた
レース3で肉弾戦を演じ、2位表彰台を獲得したシュテフィ・ハルム(Team Schwabentruck/IVECO)
地元の英雄ノルベルト・キスが、ポールポジションからの連勝を飾り、母国ファンの前で華麗な“ハットトリック”を決めた

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