ツアー開幕の女子ゴルフ。渋野日向子らが人気も"鎖国"制度に疑問の声

6月17日(水)6時20分 週プレNEWS

昨年にブレイクした(左から)渋野日向子、原 英莉花、新垣比菜ら1998年度生まれの黄金世代の選手たち。彼女たちが日本女子ゴルフの人気を牽引しているが......
昨年にブレイクした(左から)渋野日向子、原 英莉花、新垣比菜ら1998年度生まれの黄金世代の選手たち。彼女たちが日本女子ゴルフの人気を牽引しているが......

6月3日、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は「アース・モンダミンカップ2020」(6月25〜28日)の開催を発表。3月から中止が続いていた国内女子ツアーだが、無観客試合ではあるものの、ようやく幕が上がることになった。

昨季は渋野日向子(しぶの・ひなこ)が、海外メジャー大会の全英女子オープンを制し、国内でも4勝。その渋野をはじめとした"黄金世代"がツアーを牽引(けんいん)し話題をさらった。今季もヤングプレーヤーを中心に華やかな舞台が始まるが、国内女子ツアーの長期的な発展を考えると、手放しで喜んでもいられない状況に置かれている。

問題が指摘されているのはツアーの出場権システムである。JLPGAは昨季、クォリファイングトーナメント(QT)とプロテストの制度を変更した。

QTはシード権を持たない選手が参加し、その結果によりツアー出場資格が決まる予選会。プロテストとはプロになるためのテストではなく、JLPGAの会員になる試験のことである(ゴルフ界では基本、プロ宣言をした時点でその選手はプロになる)。

これまで、QTには力のあるゴルファーであれば誰でも出場でき、上位に入るとJLPGAの非会員は「TP単年登録者」という資格でツアーを戦うことができた。しかし昨年からQTの出場資格は、プロテストに合格したJLPGA会員のみに限定され(2019年は移行期間として一部非会員も出場可)、併せて単年登録制度も廃止となる(2020年も一部資格者はいるが、今季限り)。

TP単年登録制度は、03年の宮里藍のアマチュア優勝を契機に始まった。スキルの高い外国籍のプロや非会員選手を受け入れ、ツアーを活性化させる目的があった。近年では韓国人プレーヤーの申(しん)ジエ、イ・ボミらが、単年登録のままツアー優勝を果たし、その効果を証明している。

しかし今回の変更で外国籍プロは参入しづらくなる。出場権を得るためには、プロテストとQTを受けねばならず、時間的にも費用的にも海外からでは負担が増えてしまう。

「海外勢の締め出し」とも受け取れる制度変更について、プロゴルファーでゴルフ解説者のタケ小山氏はこう話す。

「日本女子ツアーのレベルが上がったのは、予選会をオープン化し、海外に門戸を開いてきたからです。それを今、また"鎖国"にしてしまうのはおかしい。韓国勢などの強い選手は、日本ではなく米国を目指すことが増えるのではないでしょうか」

さらに、海外勢以上に大きな影響を受けるのは、ツアープロを目指す若手選手たちだ。これまでは、プロテストに合格できなくとも単年登録者としてツアーに参戦し、スキルアップと経験を積むことができたが、制度変更でその道が絶たれる。毎年20名ほどしか合格できないプロテストの狭き門を通らなくてはならなくなった。

国内にはJLPGAツアー、その2部であるステップ・アップ・ツアー以外に、整備された下部ツアーや地域ツアーは少数。つまりプロテストに合格しない限り、戦うフィールドがない上、技術を磨く場もないことになる。

JLPGAは、その20名に入れない選手はその後プロとしてもやっていけない、と説明しているようだが、タケ小山氏はこう指摘する。

「その考えにも一理ありますが、年1回のプロテストでは計れない原石がいることも確か。これまでは、その原石がツアーのなかで磨かれて宝石になるチャンスがいくらでもありました。しかしこれからは原石が20人以上生まれることはなくなります」

その20個の原石になるにも、これまで以上に難しくなるかもしれない。昨年のプロテスト合格者21名中6名が外国籍選手だった。

すでにツアーで活躍する"セクシークイーン"アン・シネらが合格。今後も選手層の厚い韓国、成長著しいタイなども含め、プロテスト受験者は減らないという見方もある。彼女たちは母国のツアーで経験を重ねてから乗り込んでくるため、日本の新人が渡り合うのは容易ではない。

JLPGAは「プロテストに合格した人をプロゴルファーと認定する」としているので、間口を狭めたことで行き場を失うゴルファーはますます増えることになる。日本を離れて中国ツアーや台湾ツアーなどに活路を見いだすプレーヤーは多いが、引退を考える選手もいるという。

そもそも、海外の主要ツアーで出場資格のためのプロテストを行なっているところはない。ゴルフ界ではプロとアマの線引きは明確で、先述したように「宣言をすればプロ」である。そんな世界のベクトルとは相いれず、ドメスティックに現行会員を守ろうとする施策を打つJLPGAはどこへ向かうのか。タケ小山氏も苦言を呈す。

「ツアーを自立させようとするさまざまな改革は評価できます。その先にはツアーをグローバルに発展させるビジョンがあるはず。しかしこの変更は逆方向で、まったくチグハグとしか言えません」

渋野も初めてのプロテストを通過できなかったが、単年登録制度で戦う場が与えられ、昨年の躍進につなげた。同じ道をたどってきたルーキーは少なくない。

渋野ら黄金世代は宮里の活躍を見て育った"藍世代"でもある。宮里から渋野に連なる系譜を見て、ツアープロを目指す選手はこれからまだまだ増えるだろう。彼女らに対するJLPGAの姿勢は果たしてこれで正しいのだろうか。甚だ疑問である。

取材・文/小崎仁久 写真/アフロ

週プレNEWS

「ゴルフ」をもっと詳しく

「ゴルフ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ