【角田裕毅F1第9戦分析】最後列スタート、1周目のピットイン。SC出動で想定ほどの順位アップはならずも好ペースで走行

2023年6月19日(月)16時24分 AUTOSPORT web

 F1第9戦カナダGPのスタート前のグリッドで取材をしていたら、国歌斉唱セレモニーに参加するためにドライバーたちがスタートラインへ向かって歩いてきた。そのなかで角田裕毅(アルファタウリ)は、こちらの存在に気がついたのか、筆者のカメラに向かってサムアップした。

サムアップする角田


 このとき、角田はエンジニアと相談し、思い切った作戦を採っていた。それはスタート直後の1周目にピットインするというものだ。

2023年F1第9戦カナダGP 角田裕毅(アルファタウリ)


 ミディアムタイヤでスタートして、1周目に1台かわしたにも関わらず、そのままピットインしたのは、スタート直後の混乱でタイヤやマシンにダメージを負ったからではない。半乾きのダンプ状態の路面で行われた予選で16番手に沈んだものの、日曜日は雨は降らないという予報が出ていた。

ミディアムタイヤでスタートした角田は1周目にピットイン。ハードタイヤに交換した


 しかもロングランのペースも悪くない。そこで角田とチームは後方集団のなかでレースを進めるより、義務付けられているピットストップを先に済ませて、前方に他車がいないフリーエアのなかで自分たちの本来のペースでレースを進めて、ライバル勢たちとのギャップを詰め、彼らがピットストップしている間に前に出るという作戦を採った。


 ところが、この戦略は11周目にジョージ・ラッセル(メルセデス)がクラッシュして、セーフティカーが出動したことで機能しなくなる。


 確かにセーフティーカーが出された直後に2ストップ勢が続々とピットインすると、角田のポジションは19番手から13番手まで上がった。しかし、それは想定していたほどのジャンプアップにはつながらなかった。


 その理由は、11周目というタイミングが2ストップ勢の1回目のピットストップ・ウインドウのなかにあったからだ。セーフティカーラン中はピットストップによるロスタイムが軽減されるため、この機会を利用して、ライバル勢が続々とピットインし、角田はステイアウトしたものの、ポジションを13番手までしか上げることができなかった。


 もし、セーフティカーが出ていなければ、どうなっていたのだろうか。ジル・ビルヌーブ・サーキットでの通常のピットストップによるロスタイムは約21秒。10周目時点で角田の21秒前方には6番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)がいた。ピアストリまでの12人のなかでセーフティカーが出てもピットインせずにステイアウトしたのはフェラーリの2台とセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)、そしてケビン・マグヌッセン(ハース)の4台。


 つまり、うまく行けば、トップ5(マックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトンフェルナンド・アロンソ、エステバン・オコン、オスカー・ピアストリ)と、ステイアウトした4人の直後となる10番手までポジションを上げることができたはずだった。


 しかし、今年のカナダGPでの最大の敗因は、ピットストップ作戦ではない。


 テクニカルディレクターのジョディ・エギントンはこう振り返る。


「レースペースはよかったから、もっと上位からスタートしていれば、オーソドックスな作戦でも、十分ポイントを獲得できた」


 レースは日曜日だけで争うのではない。週末を通して、しっかりと戦うことが今後の浮上するための鍵となるだろう。

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