【現地リポート】オーストラリアの“ジェラード”に思う、W杯の魅力

2018年6月19日(火)7時10分 サッカーキング

PK決めたジェディナク(中央)。この表情からも気合が十分に伝わってくる [写真]=Getty Images

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 6月16日に行われたフランス対オーストラリアの試合後にこんな一幕があった。1−2で惜敗したオーストラリアの選手たちがベンチメンバーを含めた全員で円陣を組み、キャプテンのミル・ジェディナクが輪の中心でチームメート一人ひとりの顔を見ながら、大きく口を開けて、必死に何かを叫んでいる。

 この様子がスタジアムのモニターに映し出された瞬間、私は“あの時”のスティーヴン・ジェラードを思い出した。2014年4月のプレミアリーグ終盤戦、リヴァプールはマンチェスター・Cとの天王山に勝利して優勝に大きく近づいた。試合後にはエンジンが組まれ、キャプテンマークを巻いたジェラードがチームメートを鼓舞する。男気溢れるその姿に、なんだか胸が熱くなった。この男を勝たせてやりたい——。リヴァプールファンでなくともそう思った人は少なくないだろう。

 当時のことをぼんやりと思い出しながら、頭のもう半分ではジェディナクがどんな人間なのだろうかと想像してみる。独特なあごひげやプレースタイルではなく、彼のキャラクターやストーリーに触れてみたくなった。

 W杯は世界トップレベルのプレーを堪能できる贅沢な大会だ。と同時に、全64試合にそれぞれのドラマがあり、出場する全選手にそれぞれのストーリーがある。例えば、先日のアルゼンチン戦でリオネル・メッシのPKを止めたアイスランドのGKハンネス・ソール・ハルドーソンは、プロサッカー選手になる以前に映像ディレクターとしての経歴があるというから驚きだ。苦労してプロになった無名選手が初の大舞台で“世界一”の選手を止めてチームに勝ち点をもたらす——。これだけで映画になりそうな物語だ。

 母国の威信を懸けて戦う彼らの表情や言動には好奇心をくすぐられる。それもまたW杯の魅力なのだと、改めて気づかされた瞬間だった。そして“スティーヴン・ジェラードのような”ジェディナクの鬼気迫る表情を見た私は、次のデンマーク戦でオーストラリアを応援してしまうだろう。

取材・文=高尾太恵子

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