メッシのアルゼンチンは問題山積。マラドーナも「トンガに負ける」と苦言

6月25日(火)17時37分 Sportiva

 コロンビアに敗れ、パラグアイと引き分けたアルゼンチンは、コパ・アメリカで早期敗退の危機に瀕していた。ブラジルで開催されているこの大会には12チームが出場しており、グループステージで脱落するのは4チームのみ。ウルグアイ(15回)に次ぐ14回の優勝を誇るアルゼンチンにとって、あってはならないことだ。


必死の決勝トーナメント進出。メッシもお疲れ気味 photo by Getty Images

 そんな苦境のなか迎えたグループステージ第3節のカタール戦で、序盤に相手守備陣の軽率なミスを突いたラウタロ・マルティネスが先制点を決めた時、水色と白のシャツを着た選手たちとリオネル・スカローニ監督は大きく安堵した。そして終盤にセルヒオ・アグエロが勝負を決する追加点を挙げると、彼らは赤っ恥をかかなくて済んだ。

 率直に言って、今のアルゼンチン代表はチームとしての体を成していない。ロシアW杯で惨敗したホルヘ・サンパオリ監督が率いた集団よりも、力が落ちている。その主因のひとつに、経験のない指揮官の存在がある。リオネル・メッシやセルヒオ・アグエロ、パウロ・ディバラといったワールドクラスのタレントが揃うチームを統率しているのは、監督としての経験がまったくないスカローニだ。

 トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノやアトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネら、世界ではアルゼンチン人の優秀な指導者がトップレベルで活躍しているが、まともに機能しなくなって久しいアルゼンチン・サッカー協会には、そんなチョイスしかなかった。サンパオリ前監督のアシスタントを務めていたスカローニしかなかったのである。

 まともな経験を持たないスカローニ監督に多くを望むのは酷かもしれないが、この代表チームには明確な戦術がない。メッシの唯一無二の才能も活かしきれていないし、ディフェンス陣は目も当てられないようなミスを繰り返している。監督を補佐するパブロ・アイマールやワルテル・サムエルらの助けもあって、モチベーションこそ維持されているが、明らかに組織の粗は多い。

 0−2で敗れたコロンビア戦は、アルゼンチン史上最悪の公式戦のひとつと言ってもいい内容だった(スカローニ監督も認めている)。4−3−1−2で臨み、メッシとアグエロ、アンヘル・ディ・マリアの同世代の3人に前線を託したが、コロンビアの激しいプレスと巧みなボール回しに翻弄され、主導権を献上。長身の選手がひとりもいない前線へのロングフィードが多くなり、ジェリー・ミナとダビンソン・サンチェスにたやすく対応された。

 次のパラグアイ戦ではチーム編成を変え、ロドリゴ・デ・パウルとロベルト・ペレイラを両翼に置き、前線にはマルティネスを配する4−4−2に。しかしこれも選手間の連係の向上にはつながらず、相手に先制されたあと、VARの判定により与えられたPKをメッシが沈めて、なんとか勝ち点1を拾った。

 アルゼンチン・サッカーが抱える問題は根深く、その最たるものは育成の不振にある。とくに中盤の中央で堂々と相手と渡り合える選手が育っていない。これまで、ハビエル・マスチェラーノやルーカス・ビグリアらが担っていた役割だ。スカローニ監督はここにレアンドロ・パレデスとジオバニ・ロ・チェルソ(あるいはデ・パウル)を配しているが、彼らには狭い局面の技術はあるけれども、敵を圧倒するようなタフネスや激しさはない。また前線をはじめ、周囲との呼吸が合っておらず、優れたテクニックを十全に発揮しているとも言い難い。

 カタール戦でビッグチャンスを大きく外すというらしくない姿を晒したメッシは、「ここまでプレーしたピッチはどれもひどいものだった」と苦言を呈しているが、問題は芝の状態だけではない。過去の代表でも見られたが、自分のリズムに合う選手がいない状況では、メッシは疲れたような表情でさまよっていることが多い。

 最大の懸念は、組織にも個々にもクオリティーが足りない守備陣にある。ライン統制という基本ができていないうえ、監督の指示なのか、低い位置からパスを回そうとして危険な位置でボールを失うシーンもたびたび。主軸のニコラス・オタメンディはマンチェスター・シティで定位置を失ったことにより、試合勘が鈍っているように見えるし、相棒のヘルマン・ペッセッラやフアン・フォイには信頼が置けない。4バック同士の連携にも向上の余地が大いにあり、中盤とのリンクもスムーズではない。

 そして、協会のセサル・メノッティSDが会長のクラウディオ・タピアを強く批判しており、アルゼンチン代表の周囲に新たな混乱が生じている。

 それでも、カタール戦で首の皮がつながったチームには光明もある。インテルに所属する21歳のFWマルティネスは、現チームでもっとも調子が良さそうに見え、メッシとアグエロと彼を組ませるのが前線のベストチョイスと思える。カタール戦に途中出場し、今大会に初出場したディバラは、アグエロの2点目をお膳立てしたように、状態は良さそうだ。攻撃の切り札として期待できる。

 準々決勝の相手はベネズエラで、そこを勝ち上がれば、ブラジルとの準決勝になる可能性が高い。経験の少ない指揮官、連携不足、不安定なディフェンス……。クエスチョンマークはいくつもあるが、今のアルゼンチン代表は予想のつきにくいチームでもある。高い潜在能力が爆発すれば、どんな相手にでも勝てるが、機能しなければ──こちらの可能性の方が高い──、どこに不覚をとっても不思議ではない。そう、ディエゴ・マラドーナが「トンガに負けてもおかしくない」と言ったように。

 カタール戦後、メッシは「これでひと息つける。自信も取り戻した。決勝トーナメントでは、これまでのようなミスは許されない。ただし相手も勝利しなければならないので、守備一辺倒のチームはなくなるだろう。ここからは、オール・オア・ナッシングだ」と語っている。

 予想のできないアルゼンチンの行く末はいかに。

Sportiva

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