湘南、前半の拙攻で自滅。6失点大敗の鳥栖戦を検証【J1リーグ2023】

2023年6月26日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

山本脩斗(左)山口智監督(中)町野修斗(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第18節の全9試合が6月24日と25日に行われ、湘南ベルマーレは24日、本拠地レモンガススタジアム平塚でサガン鳥栖と対戦。最終スコア0-6で敗れた。


直近のリーグ戦11試合勝ちなしと、大不振に喘いでいる湘南。今節の大敗でJ1リーグ最下位へ転落し、J2リーグ降格も現実味を帯びてきた。ここでは鳥栖戦を振り返るとともに、湘南がただちに向き合うべき問題点について解説する。




湘南ベルマーレvsサガン鳥栖、先発メンバー

湘南vs鳥栖:試合展開


前半2分、湘南は自陣でのボールロストから鳥栖のMF小野裕二にシュートを放たれ失点。同30分にも鳥栖のロングカウンターを浴び、小野に追加点を奪われた。


後半3分には、湘南のDF杉岡大暉が自陣ペナルティエリア内で鳥栖のMF長沼洋一を倒してしまい、アウェイチームにPKが与えられる。このチャンスをキッカーの小野が物にしたことで、鳥栖のリードが3点に広がった。


その後湘南は途中出場のFW町野修斗のヘディングシュート、ロングカウンターからのFW大橋祐紀の連続シュートで鳥栖のゴールを脅かしたものの、GK朴一圭の好セーブに阻まれる。後半18分に鳥栖のサイド攻撃を浴びると、MF菊地泰智(左サイドバック)のクロスに反応したMF堀米勇輝に追加点を奪われ、試合の趨勢が決した。


山口智監督による[4-4-2]への布陣変更も実らず、湘南は試合終盤にも失点。途中出場のDF舘幸希が後半41分に鳥栖のスローインの処理を誤り、この直後にFW樺山諒乃介のクロスからFW藤原悠汰のゴールを許すと、アディショナルタイムにはFW富樫敬真のクロスに反応した樺山にとどめを刺された。




湘南ベルマーレ DF山本脩斗 写真:Getty Images

緻密さに欠けた湘南のロングパス攻勢


この日も[3-1-4-2]の基本布陣で臨んだ湘南は、キックオフ直後からロングパスでの局面打開を試みる。3バックの左を務めた杉岡が最前線に複数回ロングパスを送ったが、タリクと大橋の両FW(2トップ)との呼吸が合わず。基本布陣[4-2-3-1]の鳥栖の最終ラインの背後を第一に狙うのか、それともその手前にロングパスを送るのかの優先順位が曖昧で、ゆえに湘南はボールロストを繰り返した。


この悪しき傾向が最悪の結果に繋がったのが、前半2分。ここでは湘南のDF山本脩斗(3バックの中央)が自陣ゴールライン付近から浮き球を繰り出したものの、この中途半端なパスを鳥栖のDF原田亘に奪われる。原田のパスを受けた小野にシュートを放たれたことで、湘南は先制を許した。


最終ラインからどこにロングパスを送り、パスの受け手はどこを走るのか。これをチーム内で共有しきれなかったことが、試合開始早々から続いたボールロストや1失点目に繋がったと言って間違いないだろう。ボールを敵陣まで運ぶための緻密なプレー原則の策定と共有が、今の湘南には必要だ。




湘南ベルマーレ FW町野修斗 写真:Getty Images

湘南に推奨したい攻撃


最終ラインからのロングパスで局面打開を図るのであれば、4バックの相手にはセンターバックとサイドバックの間へボールを送り、2トップがここを走り抜けてパスを受けるというものを具体案として推奨したい。


湘南は今節、鳥栖の2センターバックの手前やその真後ろに何回かロングパスを送っていたが、このエリアは相手チームにとってケアがしやすい。センターバックの真後ろはGKが飛び出して対応しやすく、その手前はセンターバック自身がボールとマークすべき相手選手を同一視野内に入れるのが容易だからだ。


一方、2トップが斜め方向のランニングを使い、4バックでは開きやすいセンターバックとサイドバックの間から最終ラインの背後へ侵入すれば、相手センターバックとしてはボールとマークすべき選手を同一視野内に収めにくい。特に前半は湘南の2トップによるこの動きが少なく、鳥栖の守備隊形の攻略には至らなかった。


ポストプレーが得意なFW町野修斗がベンチスタートだったことを踏まえても、湘南が前半に見せた相手センターバックの手前へのロングパスは効果的だったとは言い難い。自陣後方のタッチライン際でパスを捌こうとする鳥栖の両サイドバックにプレスをかけるなど、湘南の守備の狙いは明確だっただけに、漫然とした攻撃で自滅してしまったのが悔やまれる。


湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

「トライと無謀の整理をしないと」


湘南の山口智監督は鳥栖戦後の会見で、率直な思いを吐露。プレー原則を整理したうえで、改めてチーム内で共有する意向を質疑応答のなかで明かしている。


ー前半の2失点はミスから墓穴を掘ったような形だったがどう感じているか?


「起きたことに対しての課題はもちろんありますし、どうすればよかった、こうしてほしかったという思いはあります。やはり選手は焦っているのかなというのは正直立ち上がりありました。いいことをしようとして、それがミスになってそれが失点に直結しているのが2失点ともそうだと思います。そういうことは求めていない中で起こるというのは全て僕の責任ですし、もう一度そこを整理しながら、トライの部分と無謀になってしまっている部分の整理をしないといけないと思います。きれいごとではないところをどう伝えるかというのは間違ってはいけないところですし、状況に応じたプレー、状況に応じた考え方は、僕が監督である以上、責任だと思っています。そこは逃げずに伝えながら、共有しながらやらせる、やってもらう、それに尽きると思います」


ーいま結果が出ていない中で、今日の2失点などは監督が常々言っている予測や準備の部分に課題があったと思うが、そこがなかなか結果として出ないことについては?


「それは本当に難しいところではありますが、現状が形として出ていると思います。僕が言っているところを意識しすぎてしまっているのかなという反省は常々あります。選択肢を増やす中で判断しプレーするというのは僕のやり方になっていて、それが失点に繋がっているということは原因があると思います。答えを伝えていないと言えば伝えていないので表現が難しいですが、そこがもしかしたらよくないのかなというのが自分の中にあります。失点が起こる原因だったりミスがピンチになる原因というのは常々選手とは共有している中で、そこがまだまだ結果、プレーに繋がっていないというのが現状です。それは本当に僕のアプローチの仕方を変えないといけないところがありますし、選手にもっとやってもらわなければいけないところもあります。選手はそのミスが起こった原因というのは絶対に分かっているので、そこは否定するところと継続させながら修正するところと、その修正のさせ方がもう少し必要なのかなと思っています」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部補正)


自陣から敵陣までボールを運ぶための方策と、そのためのプレーの優先順位や原則を策定する。先述の通り、山口監督が最も注力すべきはこの点だろう。基本布陣[3-1-4-2]のウイングバックが自陣後方の大外のレーン(タッチライン際)やセンターバックとほぼ同列の位置でパスを受けることで、相手のハイプレスの標的となってしまう悪癖も、第11節の柏レイソル戦以降改善されていない。指揮官によるプレー原則の落とし込み不足は明白だ。湘南で監督キャリアをスタートさせた45歳の指揮官が、今回の困難を乗り越えられるか。この点に注目していきたい。

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