【MLB】「いかに腹をくくれるか」—メジャーでも圧巻の活躍、平野佳寿の“こだわり”

6月30日(土)7時10分 フルカウント

活躍をNPB時代の言葉から紐解く「キレがあって球速もあるストレートをずっと求めてきた」

 多くの日本人選手が鳴り物入りで海を渡り、メジャーで活躍している。そんな中、平野佳寿は知名度はそこまで高くなかったが、自らの実力で名前を認知させた。ダイヤモンドバックスに欠かせないセットアッパー右腕。この男の投球へのこだわりは尋常でない。NPB時代の言葉から紐解いてみよう。

 渡米前は決して強豪とは言えないオリックスで投げていた。球界での評価は非常に高かったが、世間への露出はそこまでなかった。

「まぁ、オリックスにいる宿命というか。でもマウンドでやることはどこでも一緒。毎試合、チームが勝利できるようにしっかりと抑えるだけですから」

 オリックス時代には、何かあるたびに決まって同じようなセリフを繰り返していた。その平野がメジャー挑戦を果たした。世間では「二刀流」大谷翔平が連日、取り上げられる中、着々と準備し、満を持して挑んだシーズン。以前からこだわりを持ち続けていたストレートを軸に、無失点を継続している。

「キレがあって球速もあるストレートをずっと求めてきました。そのためには一番大事にしているのは左肩を開かないこと。左肩が開かなければ右腕を小さく回転させることができる。そうすれば必然的に良いストレートが投げることができる」

「左肩が開かないようにするためには、テークバックの時にいかに小さくトップを作り出すか。そのあとは身体を回転させるだけで腕はしっかり振れる。腕が大きく回ってしまうと身体のウエイトも離れていき、力のあるボールにもならない」

「良いストレートというのは打者が打ちにくいだけでなく、捕手も見やすいし捕球しやすい。そうすれば他の球種を選択もしやすくなる。すべてが良い方向へ行く。そういう意味でもやはりストレートはすべての基本ですね」

 オリックス時代には、自身の投球メカニックについてこう説明していた。

コンディション維持のため重視すること「いかに腹をくくれるか」

 週1回投げる先発投手と異なり、ブルペン投手は常に投げられるように準備しておく必要がある。連日のように試合が続くので、コンディションが完璧でない時も多いはずだ。

「ブルぺンで調子が悪い時の方が慎重になるので結果が良い場合が多い。逆に球が走っていたりすると、上半身主導になってしまいバランスが崩れる。そういう部分は注意している。調子が良い時ほどより慎重に」

「調子が悪い時ほどより下半身を意識して股関節の運動をする。股割りやスタンスを広く取っての重心移動などですね。下半身をしっかり使う、ということを頭も身体もしっかり意識する。そうすることでバランスが修正されてくる」

「極端に言うと、完璧な状態でマウンドに上がれることはほとんどない。だからいかに腹をくくれるか、だと思う。まぁ、こんなに調子が悪いからしょうがない、良い方法を考えようとね。それがブルペンで仕事をするコツのようなものじゃないかな」

 もちろん、ストレートだけでは並みいる強打者を打ち取ることはできない。ストレートを軸にスプリットを投げ、そして、投球フォームの中で工夫するなどして打者のタイミングをずらすことを重要視している。

「空振りを取りたい時もある。でも、なかなか簡単にはいかない。だからいろいろな状況を想定して引き出しを増やさないといけないと思う。プロ入りしてから考えるようになった。(プロ)1年目も結果は出ましたけど、それでも打たれる時は簡単に打たれてしまった」

 オリックス入団1年目からローテーション投手として活躍。10完投のうち4完封勝利。新人時代から順風満帆に見えたが、本人はそうでもなかったという。

「プロに入ってすごく早い時期に気づかせてもらったのが大きかった。いきなり新人のオープン戦でつまずいて、2軍行き。ここで自分の投球スタイルとは、をしっかりと考えることができた。それが今につながっていると思う」

「タイミングが狂えば打者は自分自身のスイングができない」

 オリックス時代の晩年あたりから投球に対する確固たる考えのようなものができあがった。自分自身のボールを投げたい、という投手の欲求もあるだろう。しかし、それ以上に結果を出すことの重要性、そのための方法を追い求めてきた。

「若い頃は自分の投げたい球を気持ちよく投げたかった。でも、それだけで抑えられるほど甘くない。僕なんかより良い投手はたくさんいるし、すごい打者もいる。だからいかにタイミングを狂わすかが大事」

「タイミングが狂えば打者は自分自身のスイングができない。そうすれば打ち取れる確率はかなり上がる。そういう打球が野手の間を抜けたり、いない場所に落ちるのはしょうがない。それよりもいかに確率をあげるか。そのために球種、投球フォームなどいたるものを使って行くことを考えている」

「自分の役割はわかっている。もちろんブルペンの中で最も安定した投手が任されるストッパーを目指す。でも、その前に自分の仕事を全うしてチームが勝つことを第一に考える」

 メジャー1年目、チームの勝利の先には、こう話していたオリックス時代にはなし得なかった大きな夢が待ち構えている。

 01年、球団創設4年目のDバックスは優勝候補筆頭のヤンキースを倒して世界一になった。サヨナラ勝ちで幕を閉じた劇的なシリーズだった。チームを牽引したのはランディ・ジョンソンとカート・シリングという歴史に残る名投手。そして今年、Dバックスは首位争いをしている。中心となっているのは、アーチー・ブラッドリー、ブラッド・ボックスバーガー、そして平野らが形成する強力ブルペン陣だ。

 昨季はプレーオフに出場したものの、近年は名門ドジャースやジャイアンツに遅れをとっていた感のあるDバックス。いよいよガラガラヘビ(Dバックスのチーム名の由来=ダイヤガラガラヘビ)がやってきた。その中心には間違いなく一人の日本人右腕がいる。(山岡則夫 / Norio Yamaoka)



山岡則夫 プロフィール

 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。

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