渡邉彩香、大器の復活V。涙の裏には最大の武器が生んだ苦悩があった

6月30日(火)6時30分 Sportiva

【写真】女子ツアーを沸かせるトッププロは「ここがすごい」

 2016年のリオデジャネイロ五輪出場が、彼女の何より叶えたい夢だった。
 2015年には、ヤマハレディースオープン葛城、樋口久子Pontaレディスとシーズン2勝を飾って、賞金ランク(6位)は日本人トップに立った。2016年もシーズン開幕から結果を残し、世界ランキングを上げていった。しかし、あと一歩まで迫っていた五輪代表を逃すと、以降、つらいゴルフ人生を送ってきた。
 ツアー優勝からは遠ざかり、予選落ちする機会が増えて、年間の獲得賞金は下降線をたどっていった。得意のドライバーさえキャディバッグから抜いたこともあった昨季、賞金ランキング115位となって、2018年シーズン(賞金ランク55位)に続く年間シード喪失となった。
 それでも、昨年末のQTで19位となり、何とか今季ツアーの出場資格を得るや、遅れに遅れた開幕戦、アース・モンダミンカップ(6月25日〜29日/千葉・カメリアヒルズCC)で、鈴木愛とのプレーオフを制した。
 渡邉彩香が涙の復活を遂げ、5年ぶりとなる通算4勝目を飾った。

アース・モンダミンカップを制した渡邉彩香

「もう勝てないのかな、と思った時期も正直ありました。一番辛かったのは……やっぱり去年と一昨年の、2年間ですかね。家族に八つ当たりしてしまったこともありました。
 チームのみんな、家族、ファンの方々。あと、(周りの)選手もすごく私のことを気にかけてくれて、ちょっとでもいいプレーをすると、『ナイスだったね』と声をかけてくれていた。今日は、そうした人たちのためにがんばって、『優勝を見せてあげたい』という気持ちが一番にありました」
 日曜日の最終日が雨によって順延となり、首位と4打差の通算7アンダー、4位タイでスタートした月曜日のラウンド中は、リーダーボードを一度も見なかった。
「無観客で歓声もないので、あまり優勝を意識するということは、これまでの(3度の)優勝よりは薄かったかもしれません。優勝を意識しすぎても、いい方向にはいかないんじゃないかなと、なんとなく感じたので、自分のプレーに徹することを意識しました」
 18ホールで、5つのバーディー(1ボギー)を奪い、通算11アンダーにまでスコアを伸ばし、同スコアで並んでいた鈴木より、先にホールアウトしていた。鈴木も、最終18番のロングホールでスコアを伸ばせず、勝負は18番で行なわれるプレーオフにもつれた。
 ウイニングパットは、下り4mのスライスラインだった。
「自分が一番、好きなライン。『入れる!』というよりかは、『自分の好きなラインだな』という感じで打ちました。入った瞬間は……うれしいのと、ずっと応援してくださった方に応えられたというホッとした気持ちと……」

 長く渡邉を苦しめていたのは、かつて平均270ヤード飛ばしていたドライバーだった。
「ここ数年は、ティーショットの不安が大きくて。自分の持ち味のドライバーを気持ちよく振れないことが不調の要因だった。
 もともとフェードボールが持ち球ですが、リオ五輪の代表になれなかったことで、『もっとこうしたい、ああしたい』と自分に足りない部分ばかり浮かんでしまった。フェードの幅を狭めてストレートっぽく打ちたいという気持ちが出てきて、それが迷いにつながっていた。
 このオフは、改めてフェードボールの徹底に取り組んで、どんな場面でもどんな状況でもしっかり左に出して、右に曲げることを徹底的に練習してきました。本来の開幕戦の頃(3月)には、いい感じに打てるようになっていました」
 リオ五輪の代表を逃したあと、渡邉は密かに東京五輪へと気持ちを切り換えていた。
「リオの悔しさを晴らしたいというのがずっとあった。今はかけ離れて遠い目標なんですが、東京五輪が来年に延びたということは、もしかしたら、何か運が私についているのかもしれない。一生懸命がんばりたい」
 これからに向けて、「一生懸命」という有り体な言葉を選んだところに、渡邉の純朴で実直な人柄が表れている気がした。

Sportiva

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