空手女子形・清水希容“エースの刃”全集中の呼吸、凜の型 その素顔は…「雑(笑い)」

7月1日(水)7時58分 スポーツニッポン

加藤綾子アナウンサー(左)と突きポーズを決める清水希容(撮影・小海途 良幹)

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 【カトパン突撃!東京五輪伝説の胎動】日本空手界のエースである女子形の清水希容(26=ミキハウス)は凜(りん)としたたたずまいで試合場に上がる。演武では指先の一つ一つの動きにも集中。基本技を何百万回と繰り返して精度を練り上げてきた。加藤綾子アナウンサー(35)とのクロストークでは20代の女の子らしく天真らんまんな笑顔。新型コロナウイルスの影響で東京五輪は延期となったが、気持ちを切り替えて大舞台を目指す。

 ——新型コロナウイルスの影響で東京五輪が延期となりました。集中するのは大変ですか?

 「私自身はネガティブには捉えておりません。逆に成長できる時間ができたので無駄なくやっていきます。大会自体もいつあるか分からない状況ではありますができることを確実にやっていきます」

 ——空手は心技体の充実が大切。特に大変なのは何ですか?

 「どれか一つが欠けても駄目ですけど、一番強く出るのは心の部分ですね」

 ——鍛えるためにどうしてますか?

 「本を読みます。最近はアスリートとか自己啓発本が多い。いろんな考え方を落とし込む。今は室伏広治さん。ストイックに何事にも向かっていく姿勢が勉強になります」

 ——技習得にはどのくらい期間が必要?

 「一生と思ってます。突き、蹴り、シンプルな技でも完成はない。考え方や年齢に合った技の出し方がある。常に進化し続けるということです」

 ——形を覚えるのも時間がかかる?

 「順番を覚えるのはすぐ。試合をしたり、演武するには最低でも1年はかかる。しっかり落とし込まないと人前ではできない」

 ——ほかのアスリートは参考にする?

 「フィギュアスケート羽生結弦選手、浅田真央選手や体操の動画を見ます。柔道の攻防も同じ武道なので見る。フィギュアは流れるような動きが参考になります」

 ——昨年6月の試合では高い呼吸音が減点につながった。そこは克服できましたか。

 「しっかりと技に合った呼吸法が自然とできるようになりました。どちらかというと治療した感じです…」

 ——治療ですか?

 「舌の位置を変える特別なマウスピースを作って治療しました。私は癖があって気管が詰まりやすいので、それを広げるものです。寝てる時もマウスピースで矯正する。最初は異物感があって眠れなくて慣れるまで半年くらいかかりました」

 ——競技を始める時に技の名前を叫びますが、あの瞬間に気持ちを切り替える?

 「大会の1週間前くらいからスイッチが入る。集中して試合でピークに持っていく。周りには怖いって言われますね(笑い)」

 ——技の名前はかなり長いですね?

 「噛(か)みそうになる時はあります。大声で叫びすぎて顎が外れそうになる。ウワーッ、危ないってなります(笑い)」

 ——ライバルはスペインのサンドラ・サンチェス選手。僅差の戦いが続いている。

 「海外の選手で一番ストイックです。旦那さんがコーチで、私より一回り上の38歳。空手は年齢を重ねるほど味が出る。そこで劣らないように努力していきたい」

 ——改めて東京五輪への思いは?

 「今年よりレベルを上げて良い演武で優勝できるように頑張ります」

 ——本番に向けてサンドラ選手は意識しますか?

 「直接戦って勝ちたい。実力の近い相手がいることは空手界にとっては良いこと。当事者同士は大変ですけどね(笑い)」

 ——稽古再開は?

 「6月中旬から再開しました。基本的にミキハウススポーツスタジアムの練習場に行きます。練習場でできることにありがたみを感じます」

 ——外出自粛期間中はどのように過ごしていた?

 「自宅で稽古してました。週3日は先生(古川哲也コーチ)とオンラインで練習し、週1でトレーナーに練習を見てもらってました」

 ——これまでの1日の稽古量は?

 「12時間やることもありましたね」

 ——朝9時から夜9時まで…休みの日にたっぷり寝たみたいな時間ですね(笑い)。

 「基本を繰り返す。気付いたら“もうこんな時間、帰んなきゃ”って思います」

 ——生放送中に「まだ30分しかたってない…」とか思う私はどうなんでしょうか(笑い)。それにしても空手が本当に好きなんですね。出合いは小学生の時?

 「小学3年生で兄が通っていた道場に行った。最初の印象は格好良くて奇麗。怖いとか瓦割りのイメージが多いと思うんですけど、相手のことを傷つけないのが空手」

 ——醍醐味(だいごみ)は?

 「20代前半までは勢いでやってた。年齢を重ねてきて、空手の深さとか生きた歴史を演武しているということを分からないといけないと思いましたね」

 ——試合前に音楽を聴きますか?

 「必ず聴きます。菅田将暉さんの『見たこともない景色』でテンションを上げて会場に入る。応援ソングで背中を押される感覚がある。10年くらい前からファンキーモンキーベイビーズの『あとひとつ』も聴いてます。試合に入る時のスイッチの一つです」

 ——性格を一言で言うと?

 「雑(笑い)。親が思ってるはず。力加減が分からずにやっちゃう。大ざっぱで豪快にやってしまう」

 ——空手は生で見るとド迫力ですね。

 「五輪は生で見てほしい。本当に相手がいるように見える攻防や緊迫感。魅力が自然と伝わると思います。本番は自分を信じて臨みたい。大舞台で不安になっても立ち向かってやりたい」

 ——素早い動き。道着のこすれる音だけで凄い。耳から伝わりますもんね。前蹴りは最先端の折り畳み傘みたい。シュ!タッ!って。凄い速さで足を奇麗に折り畳むんですね(笑い)。

 「はははは、今度、その表現を使わせてもらいます」

 ◆清水 希容(しみず・きよう)1993年(平5)12月7日生まれ、大阪府吹田市出身の26歳。ミキハウス所属。小学3年から糸東流空手道場で空手を始める。東大阪大学敬愛高3年でインターハイ優勝。関西大に入学し、14、16年に世界選手権で優勝。全日本空手道選手権は13年から7連覇。18年のアジア競技大会で金メダル。好物はチーズケーキなどスイーツ。1メートル60。

 《忘れられない笑顔——人を引きつける明るさ》

 【取材後記】新型コロナの影響で仕方がないとはいえ、東京五輪の延期は残念です。24年のパリで空手が競技採用されていないこともあり、中止でなかったのは良かった。その落ち着かない状況の中、気持ちを切り替えた清水選手は本当に強い。

 気迫の塊のような試合とは違い、インタビューでの笑顔が忘れられません。きつい稽古があっても心からいつも笑えるようになりたいとも話してました。「女子形」は魅せる競技でもあり、根底にある明るさが人を引きつけるのでしょう。

 延期で自身と向き合う時間は増えたと思います。師範の「もっと、もがいて苦しめ」との言葉。自身との闘いに打ち勝ち、その先にある底抜けの笑顔を待ちたいと思います。(加藤 綾子)

スポーツニッポン

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