ベストのプレーができていない錦織圭。東京五輪までは「立て直すことしかできない」

7月3日(土)11時5分 Sportiva

 ウインブルドン2回戦で、錦織圭(ATPランキング53位、6月28日づけ/以下同)は、ジョーダン・トンプソン(78位、オーストラリア)に、5−7、4−6、7−5、3−6で敗れた。ウインブルドン出場は12回目になる錦織だが、2回戦で大会を去るのは2015年以来となった。

 能面のように表情を強張らせたまま、言葉少なに試合を振り返った錦織圭。彼にとって、おそらく受け入れ難い敗戦だったに違いない。

2018年、ファイナルズに出場した錦織圭


予想よりも早くウインブルドンを去ることになった錦織圭
 トンプソンとは、2017年ブリスベン大会準々決勝(ハードコート)で一度だけ対戦したことがあり、その時は6−1、6−1で錦織の圧勝だった。

 これまでトンプソンは、4回出場したウインブルドンのすべてで初戦敗退だったが、2019年には、ウインブルドン前哨戦のATPスヘルトーヘンボス大会(オランダ)で準優勝し、さらにATPアンタルヤ大会(トルコ)ではベスト4に進出して、少しずつグラスへの適性を示していた。

 とはいえ、それでも錦織の心のどこかには、トンプソンに負けるはずはないという思いがあったはずだ。その思いとは裏腹に、トンプソンは好調なプレーを見せつけ、2回戦で最高時速213kmを記録し、サービスエース13本を決めたサーブは特筆すべきものだった。

「(トンプソンのサーブが)あれだけ伸びてくるのと、両サイド(デュースサイドとアドサイド)のワイドがあり、ティー(センター)へも思いきり入って来られるので、ハード(コート)でやるよりはサーブの脅威は感じました」

 こう振り返った錦織に対してトンプソンは、大事な場面でフォアサイドにサーブを入れて錦織のリターンミスを引き出した。錦織のフォアハンドはグリップが厚いため、サーブのバウンドが滑るように弾むグラスコートでは、リターン時にスウィートスポットをはずしてしまう可能性が高く、そこを巧みに突いた。

「そもそも、自分のフォアがまったく入らなかった。今までにないぐらい入らなかったので、リターンのチャンスも最初のほうはほぼなかった。ずっとつらい感じでゲームが進んでいましたね」(錦織)

 本来リターンがいいはずの錦織が、サーバー有利なグラスでの試合とはいえ、第3セット第6ゲームまで一度もブレークポイントをつかむことができなかったのは驚きだった。試合序盤でブレークチャンスが握れるはずという目論見が崩れる一方で、トンプソンのファーストサーブでのポイント獲得率は第1セットで87%、第2セットで94%と高く、錦織につけ入る隙を与えなかった。

 そして、リターンの不調は、セット終盤でサービスゲームと落とすという負の連鎖をもたらした。

「多少あったかもしれないですね。リズムがなかなか作れなかったので。(トンプソンの)しっかり入れてくるミスをしないリターンも、ちょっとずつ自分にプレッシャーがかかっていたのかもしれないです」

 もちろんセットを左右する終盤のサービスゲームでは、常にプレッシャーはかかるものだが、スピードではなくプレースメント勝負となるサーブを駆使する錦織は、緊迫した展開になればなるほどキープするのが簡単ではなく、グラスコートではなおさら如実になる。

 第3セット第2ゲームで先にサービスブレークを許した錦織は、1−4まで追い詰められたが、勝利を意識し始めたトンプソンのミスを見逃さずに、第3セットを取り返す意地を見せたが、サーブ力の差を覆すことは最後までできなかった。

 技術的な部分では、錦織にとってサーブが引き続き課題であり、マックス・ミルニーコーチと共にどう改善していけるのか注視したい。

 そして、今の厳しい現実をどう受け入れ、向き合い、対処していくのかが今後の彼のキャリアにとって重要だ。今後、錦織は、勝つことの難しさと少しずつ下降している世界ランキングとも向き合わなければならないだろう。そして、アスリートなら誰もが通る、年齢の経過と共に少しずつ落ちていく体力や実力の問題ともそう遠くない未来に直面するだろう。

「自分のやる気次第で、すべて変わる」と自ら語る錦織だが、今こそそれが問われており、彼自身があきらめなければ、飛躍へとつながる道は必ず開けるはずだ。

 ウインブルドンが終了して、錦織が次に臨むのは、東京2020オリンピック。一度アメリカの自宅に戻り、フロリダの練習拠点でトレーニングをするつもりだという。

「今、明らかに、数年前のように自分のベストでプレーできていない。オリンピック前によくなるように立て直すことしかできない。自分のベストでプレーすることを試みるだけです」

 今回のウインブルドン1回戦で勝利して、グランドスラムでのマッチ100勝目を挙げ、日本男子選手では誰も成し遂げたことのない金字塔を打ち立てた錦織だが、「何も感じません。何と答えれば正解なのか、ちょっとわからないですけど」と、記録や数字にこだわらない彼らしい姿勢を貫いた。

 東京オリンピックでは、母国で開催されるビッグイベントということで、錦織への注目や期待は、大きなものになっていくだろう。もちろん東京オリンピックでいいプレーができるに越したことはないが、100勝という記録が示すように、これまで錦織は十分すぎるほどの結果を残し、周囲からの期待にも応えてきた。

 今こそ錦織は自分のためにテニスをすればいいのではないか。そして、自分が仕事として選んだ大好きなテニスを楽しめばいいのではないか。

「自分がどこまでできるかを追い求めるのが、自分のこのテニスの人生だと思っている」と言う信念を貫き通せばいい。

 それを踏まえたうえで、東京オリンピックでの経験が31歳の錦織を新たなステージへと導き、今後も続く彼のキャリアへつながり、糧となっていくと信じたい。


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