迷走中の湘南が横浜FMに完敗。先が思いやられる修正力不足【J1リーグ2023】

2023年7月4日(火)18時30分 FOOTBALL TRIBE

FW町野修斗(左)DF上島拓巳(右) 写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第19節の全9試合が6月30日から7月2日に行われ、湘南ベルマーレは2日、敵地の日産スタジアムで横浜F・マリノスと対戦。最終スコア1-4で敗れた。


前半の2失点が重くのしかかり、今節もリーグ戦最下位からの脱出を逃した湘南。直近のリーグ戦13試合勝ちなしと、苦境に陥っている同クラブが抱えている問題は何か。ここでは横浜FM戦を振り返るとともに、この点について解説したい。


横浜F・マリノスvs湘南ベルマーレ、先発メンバー

横浜FMvs湘南:試合展開


基本布陣[3-1-4-2]の湘南が、キックオフ直後から横浜FMへのハイプレスを試みる。これに対しホームチームはこの試合最初のゴールキックでロングパスを選択するなど、湘南のハイプレスを掻い潜るための策を探った。


迎えた前半5分、横浜FMが湘南のハイプレスをいなし、自陣右サイドから敵陣左サイドへボールを送る。攻め上がったDF松原健(右サイドバック)がペナルティアークの後方からシュートを放ち、先制ゴールを挙げた。


出鼻をくじかれた湘南は、この直後に自陣後方からのパス回しで自滅。前半10分、GKソン・ボムグンのショートパスが横浜FMのFWヤン・マテウスにカットされると、同選手からFWアンデルソン・ロペスにボールが渡る。ペナルティエリア内でロペスがゴール右隅へシュートを放ち、追加点を挙げた。


その後も湘南は攻め込まれたが、GKソンが好セーブを連発し、勝ち点奪取への望みを繋ぐ。前半11分に湘南の最終ラインの背後を突いたマテウスのシュートを防いだほか、同44分にもFWエウベル、ロペス、マテウスによる3連続シュートを阻止。今季より湘南のゴールマウスを守っている韓国代表GKが、この試合でも気を吐いた。


後半2分、湘南はカウンターからチャンスを迎えたものの、MF中野嘉大(左ウイングバック)のシュートが横浜FMのGK一森純に阻まれたことで、1点差に詰め寄れず。同6分にはマテウスのクロスに反応したロペスにヘディングシュートを放たれ、ビハインドが3点に広がった。


ホルシュタイン・キール(ドイツ2部)への移籍前ラストマッチを迎えたFW町野修斗が後半30分にPKを成功させたが、湘南の反撃もここまで。同32分には途中出場した横浜FMのMF水沼宏太のシュートのこぼれ球を、同じく途中投入のFW植中朝日に押し込まれ、試合の趨勢が決した。


GKソンの奮闘もむなしく、湘南はリーグ戦4連敗を喫している。




湘南は松原への守備の段取りが曖昧だった

前線からの守備は不発に


湘南は横浜FMにハイプレスを仕掛けようとしたものの、ホームチームの巧みな攻撃配置に苦しめられた。


基本布陣[4-2-1-3]の横浜FMの2センターバック、エドゥアルドと上島拓巳(両DF)が自陣後方からのパス回しの際にペナルティエリア横幅いっぱいに広がったことで、湘南の2トップ(FW大橋祐紀と町野)によるハイプレスの直撃を防止。大橋と町野は横浜FMの2ボランチ(渡辺皓太と藤田譲瑠チマの両MF)へのパスコースを塞いでいたが、相手の2センターバックとの距離が長く、彼らに鋭く寄せるには至らなかった。


この状況を受け、湘南のMF平岡大陽が最前線に上がり横浜FMの2センターバックから2ボランチへのパスコースを塞ごうとしたが、今度はDF松原(右サイドバック)を誰が捕捉するのかが曖昧に。左ウイングバックの中野と、インサイドハーフの平岡のどちらかが松原にプレスをかけるべきだったが、この不徹底が試合序盤に災いした。


横浜FMの先制ゴールは、自陣右サイドでボールを捌こうとした松原への、平岡や中野の寄せが緩かったことで生まれたもの。敵陣でのボール奪取やショートカウンターを狙うには、湘南の守備は緻密さに欠けていた。


横浜FMのDF松原が内側に立ち、パスコースを確保

巧みだった松原のポジショニング


この試合で先制ゴールを挙げた横浜FMの右サイドバック松原は、巧みなポジショニングで自軍のパスワークを手助け。味方GK一森や最終ラインからのパス回しの際に、松原がタッチライン際から内側にポジションを移すことで、自身がサイドと中央どちらにもパスを出せる状況を何度も作り出していた。


湘南は6月28日の浦和レッズ戦(J1第12節)でも、タッチライン際から内側に絞った右サイドバック酒井宏樹への守備が曖昧になり、苦戦を強いられている。浦和戦からの守備の改善や進歩は見られなかった。




MF藤田譲瑠チマ(左)MF小野瀬康介(右) 写真:Getty Images

相変わらず不安定な湘南のパスワーク


両ウイングバックが自陣後方のタッチライン際や味方センターバックとほぼ同列の位置でパスを受けてしまい、相手のハイプレスの餌食となる湘南の悪癖は相変わらず。第11節の柏レイソル戦あたりから散見されるこの現象が、横浜FM戦でも失点に繋がってしまった。


湘南の2失点目は、左ウイングバックの中野が自陣後方の大外のレーンでパスを受け、相手DF松原のプレスを浴びたことで喫したもの。縦へのパスコースを塞がれた中野は、やむなくGKソンへのバックパスを選ぶ。この時点で相手にパスコースを限定されていたGKソンはDF杉岡大暉へボールを渡そうとしたが、これをマテウスに奪われてしまった。


この場面では湘南の2インサイドハーフ(MF小野瀬康介と平岡)によるGKソンや3センターバックへのサポートも遅れており、自陣後方から安全にパスを繋ぐための配置が整っていたとは言い難い。中盤の底の選手と2インサイドハーフの計3人が相手の最前線の斜め後ろに立ち、パスコースを作る。これは浦和戦でも物足りなかった動きや配置だが、湘南の山口智監督は攻撃面でも修正を施せなかった。浦和戦から中3日で迎えた試合とはいえ、せめて攻撃面と守備面どちらか一方でも改善の跡を見せてほしかった。


ここまで選手たちやコーチングスタッフの修正力が乏しいと、上位進出どころかJ1リーグ残留もおぼつかない。先が思いやられる試合内容だった。

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