吉田が長谷部の代表引退に男泣き「本当に素晴らしいキャプテン」
2018年7月4日(水)2時5分 サッカーキング
15秒間の沈黙……。「えっと……本当に素晴らしいキャプテンで」。涙がこぼれないように上を向きながら言葉を絞り出したが、その後が続かない。
長谷部とともにプレーした7年半の思い出が頭の中を駆け巡る。「あれほどチームのことを考えてプレーできる選手は少ない。彼の姿勢から学ぶことはたくさんあった」
日本代表のキャプテンは誰にでも務まるものではない。その責任感やプレッシャーを身を以て体感した吉田だからこそ、長谷部の偉大さが分かる。「どうあがいても長谷部誠にはなれない」。そう思ったのは、長谷部に代わってキャプテンマークを巻いた時だ。
昨年3月のUAE戦直前に長谷部がひざの負傷でチームを離れた。大黒柱不在の中でキャプテンを任されたのが吉田だった。「長谷部さんをはじめ、今までの歴代の先輩方に恥じないようにプレーすることを心がけた」。その言葉どおり、身振り手振りを交えて味方に声を掛けながら、自身はゴール前で体を張り続けた。
そのシーズン、吉田はサウサンプトンで初めてゲームキャプテンを経験した。プレミアリーグで日本人が主将を務めるのは史上初のことで、私たちが想像もできないようなプレッシャーを感じたはずだ。しかし、“国のキャプテン”を務める重圧はそれ以上だったという。
「サウサンプトンでも何回か巻きましたけど、やっぱり国のキャプテンになるということは非常に大きなこと。もちろん、いつも以上にプレッシャーは感じました」
ブラジル・ワールドカップではともに挫折を味わった。4年後にまた同じ舞台に立てるだろうか。当時はそんな不安も抱いていたという。4年間、それぞれが自分の場所で成長を続け、迎えたロシア大会。ともに戦うのはこれが最後になるかもしれない——。そう覚悟はしていたものの、やはり寂しさが込み上げてくる。何度も目を押さえながら泣くのを我慢しようしたが、吉田は流れる涙を止めることはできなかった。
取材・文=高尾太恵子