F1 Topic:「今週、勝つから」13年ぶりの優勝を予言していた、ホンダF1山本雅史MD

2019年7月6日(土)7時58分 AUTOSPORT web

 6月30日(日)に行われたF1第9戦オーストリアGPで、2006年以来、13年ぶりの優勝を飾ったホンダ。しかしオーストリアGPが始まる前の段階で、そのことを予想できた人物はほとんどいなかったのではないだろうか。なぜなら、今シーズンは開幕から直前の第8戦フランスGPまで、メルセデスが8連勝中だったからだ。


 そんななか、初優勝に向けてホンダの13年ぶりの優勝を予言していたのが、山本雅史マネージングディレクター(MD)だった。じつは金曜日に、筆者はある件で山本MDと打ち合わせしていたのだが、別れ際にこう言われていたのだ。


「尾張さん、大丈夫。今週、勝つから」


 その自信に満ちた後ろ姿をいまでも鮮明に覚えている。


 優勝後、山本MDはあのとき「優勝する」と語った理由を次のように説明した。


「本当はモナコGPで勝ちたかったけれど、もしモナコで勝てなかったら、次にチャンスがあるのはオーストリアGPだと思っていました」


 それが山本MDの単なる勘でないことは、レース当日の昼に開かれたレッドブルとホンダの首脳陣同士のランチを兼ねたミーティングでの、こんなエピソードからもうかがえる。このミーティングにはレッドブル側から総帥であるディートリッヒ・マテシッツとヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)が出席。ホンダ側は倉石誠司副社長、森山克英ブランド・ コミュニケーション本部長、そして山本MDが参加した。その席でレッドブル側からホンダに対して、こんな提案が出されていた。

ホンダF1山本雅史マネージングディレクター(左)、ディートリッヒ・マテシッツ(右、レッドブル創業者)


「もし、今日我々が勝ったら、ホンダ側でだれか表彰台に上がってほしい」


 表彰台にはトップ3のドライバー3人と、コンストラクター優勝のトロフィを受け取るために、優勝したチームからスタッフがひとり上がることになっている。通常はチーム代表や担当レースエンジニアが登壇し、パワーユニットサプライヤーのスタッフが上がることは珍しい。


 13年前にホンダが優勝したときは、そのときホンダがBARを買収し、チームとして参戦していたため、コンストラクター代表としてちょうどハンガリーGPを視察に来ていた当時社長を務めていた福井威夫元社長が登壇したが、1980年代から1990年代にかけてのマクラーレン・ホンダ時代にはほとんどチーム代表のロン・デニスが表彰台に上がっていたものである。


 それほどチームにとって重要なコンストラクター枠を、レッドブルがホンダに譲るという話を出した時点で、レッドブルも覚悟を決めてレースに臨んでいたことは想像に難しくない。


 もちろん、ホンダにも覚悟はできていた。


「金曜日に田辺とも『ここは多少リスクを負ってでも、狙っていこう』と話し合っていて、チームも了解していた。チームといいタッグを組めていたことが勝利につながったと思います」(山本)


 こうして、掴み取ったホンダにとって13年ぶりの優勝。山本MDがコンストラクタートロフィを受け取りに行くために表彰台に向かわせたのは、田辺豊治F1テクニカルディレクター(TD)だった。それは、ここまで苦労してきた開発陣たちへのマネージメントサイドからのプレゼントだったのではないだろうか。

ホンダF1山本雅史マネージングディレクター(左)、田辺豊治テクニカルディレクター(右)


 そして、その心配りに対して、田辺TDも敬意を表した。表彰式を終えた田辺TDがシャンパンのボトルを抱えたまま向かったのは、山本MDらマネージメント陣たちの元だった。山本MDにシャンパンのボトルを手渡す田辺TD。受け取った山本MDは、勝利の酒を美味しそうに口に入れ、こう言った。

ホンダF1山本雅史マネージングディレクター(左)、田辺豊治テクニカルディレクター(右)


「長い間、お待たせしましたが、マクラーレンと勉強し、トロロッソと新しい経験を積み、そして今日、レッドブルとこうして優勝できました。これもみな、ホンダのスタッフ全員のおかげです。本当にありがとうございました」


「そして、いつも応援してくださっているファンのみなさんにもお礼を申し上げます。 皆さんのひとつひとつの言葉にわれわれスタッフ一同は本当に支えられています。これからも皆さんの応援に応えられるよう、努力していきたいと思います。本当にありがとうございました」


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