今宮健太や村上宗隆らが証言。フェイスガードの有無で気持ちに差が出る

7月7日(日)7時17分 Sportiva

 プロ野球で当たり前の光景となりつつある、打者のヘルメットに取り付けられたフェイスガード。数年前から、ジャンカルロ・スタントン(ニューヨーク・ヤンキース)、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)といったMLBの強打者たちが使用を始めたことで一気に広まった。昨年からトラウトのチームメイトになった大谷翔平も、フェイスガード付きのヘルメットをかぶって打席に立っている。

 フェイスガードと聞くと、かつて近鉄やヤクルトでプレーしたチャーリー・マニエルを思い浮かべる往年のプロ野球ファンもいるだろう。近鉄時代の1979年に顔面に死球を受けたマニエルは、手術を経て復帰した際、アメリカンフットボールのフェイスガードを付けた特注ヘルメットをかぶってプレーした。

 それから40年。現在のフェイスガードは、手のひらサイズのコンパクトなものに変化した。メーカーによって仕様は多少異なるが、内側に衝撃吸収のためのパッドが付いており、それをヘルメットの耳当て部分にビスで固定するので、プレー中にズレる心配もない。

 安全面はもちろん、ちょっとした興味本位から、プロ野球でも昨季の後半からフェイスガードを着用する選手が増えていった。オリックスの吉田正尚も、いち早く取り入れた選手のひとりだ。

「メジャーの試合でフェイスガードを付けている選手が多かったので、自分も試してみようとメーカーに発注しました。それが昨年の8月に届き、西武戦(8月9日)で”ぶっつけ本番”で使ってみたんです。そうしたら、その試合で満塁ホームランが打てたので、ゲンがいいこともあって使用を継続しています」


いち早くフェイスガードを着用したオリックスの吉田 photo by Kyodo News

 頬をカバーするフェイスガードは、視野が狭まることを懸念する声も多い。しかし吉田は「ボールの見え方にまったく影響はないですね」と話す。

「僕個人としては、バッティング以外でも、例えば走塁での走りにくさや送球などの見づらさなども感じません。もちろんスイングにも支障はないです。今年は、相手投手から内角を攻められることが多くなったんですけど、そういったボールへの恐怖心が軽減できたので、以前と変わらずに踏み込むことができていると思います」

 厳しい内角攻めは強打者ゆえの宿命でもあるが、セ・リーグの若きスラッガー、ヤクルトの村上宗隆もその安心感について次のように語る。

「万が一、顔に当たってしまうことを考えると、フェイスガードの有無で気持ちに大きく差が出ます。ヤクルトでは、今春のキャンプで青木(宣親)さんが付けはじめたタイミングで、宮本(慎也)ヘッドコーチからも選手全員に着用が推奨されました。僕はオープン戦、侍ジャパンの親善試合でも試してみて違和感がなかったので、シーズンに入ってからも使用しています」


上から、吉田、村上、今宮のヘルメット

 一方で、昨年の日本シリーズで初めてフェイスガードを試したというソフトバンクの今宮健太は、「当初は違和感もあった」と振り返る。

「日本シリーズで試しに使ってみた時に、ガード部分が視界に入ってくるのになじめなかったので、シリーズ中にフェイスガードを外して打席に入ることもありました。それでも、今年の春季キャンプで徐々に慣れていき、オープン戦までの約1カ月で払拭することができました」
 
 さらに、今年のオープン戦では、フェイスガード使用の必要性を再認識する出来事もあった。

「広島との試合で、うちのルーキーである甲斐野(央)のボールが、會澤(翼)さんの顔付近にいってフェイスガードに当たる場面がありました。そのあと、會澤さんは『フェイスガードに救われた』とコメントしていましたが、顔に当たる前にワンクッションあることでケガの程度が変わってきます。顔付近にボールが来ることはめったにないですが、当たってからでは遅いですし、命がけでプレーしているので保護という点では重要な備えだと思います」

 さらに吉田も、「昨年、高校球児がデッドボールで亡くなられたニュースを耳にしました。そういった悲劇を未然に防ぐための措置として考えるべきだと思います」と語り、高校時代にフェイスガード着用が認められていたらヘルメットに付けていたか、という問いには、吉田だけでなく、村上、今宮も「間違いなく付けていました」と口を揃えた。

 フェイスガードに思わぬ効果を見出した選手もいるようで、ボールがどのようにフェイスガードに隠れるかということにより、ボールの見極めの参考にもなっているようだ。その他にも、視界が限定されることで集中力が増すといった声もあるようだが、あくまでそれらは副産物。「やはり選手の安全が守られることが第一」と強調するのは、2006年から2013年までベイスターズでプレーし、現在はプロ野球選手が使用しているフェイスガード「C−FLAP」の日本総代理店でもあるカシマヤ製作所で営業を務める内藤雄太氏だ。

 フェイスガードの使用で、視野と共に懸念材料に挙げられやすいのは、「フェイスガードを付けるために穴を開ける、ヘルメットの耳当ての部分の強度が下がらないのか」ということだ。その点について内藤氏は、「今年1月に行なった検査の結果、逆にフェイスガードを着用したほうが強度が増すという結果が出ています」と説明する。

「これはあくまでC−FLAPの話ですが、製品を付けたヘルメットと、付けていないヘルメットを使った強度の検査を、ある検査機関にお願いしました。そこは、製品安全協会がヘルメットの検査を委託しているところなんですが、それぞれの耳あて部分にボールを当てた際の衝撃吸収性のデータは、製品を付けたヘルメットのほうがよかったんです」

 製品安全協会の、いわゆる「SG基準」を満たしたヘルメットには「SGマーク」が付き、アマチュア球界での使用が認められる。そのマークが付いた製品の欠陥で人身事故が起きた時には、製品の欠陥と事故の因果関係が認められた場合に損害賠償を行なえるが、プロ野球では「適用外」になる。プロでは日本野球規則委員会で認められたメーカーのヘルメットが使用され、「何キロのボールで検査をする」といった明確な基準はない。

 そもそも、アマチュア球界ではフェイスガードを付けたヘルメットの使用が認められていないため、カシマヤ製作所は独自の調査を依頼した。SG基準を満たしているかどうかの基準となる108キロと、よりプロ野球の投手の速球に近い144キロのボールを使って検査を行ない、どちらもC−FLAPを付けたヘルメットのほうが「より衝撃を吸収する」という結果を得たのだ。もちろん、C−FLAP本体にもボールを当て、割れないことも証明済みである。

「私が現役の時に使用できていたら、間違いなく付けていますね」と話す内藤氏は、ベイスターズ時代に2軍でプレーしていた際、危険球の恐怖を感じた経験がある。ある投手の150キロ前後のボールが内角に抜けて顔のすぐそばを通過し、背筋を凍らせたそうだ。

「今では高校生でも150キロを超える球を投げる投手が珍しくないので、そういった恐怖を感じる場面は増えるんじゃないかと思います。もちろん、フェイスガードを付けることでスイングに違和感が出てしまう選手もいますから、使用を義務付けることは現実的ではないでしょう。しかし、”フェイスガードを使用できる選択肢がある”ということは、すごく重要だと考えています」

 フェイスガードの安全性が正しく認知されるためにも、SG基準や規則の見直しも必要になる。そういった議論が尽くされた先に、より多くの選手が安心してフェイスガードを使用できる日がやって来るはずだ。

Sportiva

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