WEC:ポルシェの重鎮、バリザー博士は新トップカテゴリーに懐疑的。「一過性で終わるかも」

2018年7月10日(火)16時4分 AUTOSPORT web

 ポルシェGTプログラム担当副社長のフランク・スファン・バリザー博士は、FIAとACOフランス西部自動車クラブが発表したWEC世界耐久選手権の『新トップカテゴリー』について、GTEクラスの存続を脅かすものではないとの見解を示した。


 2016年にアウディが、2017年にポルシェがWECの最高峰クラスであるLMP1クラスから立て続けに撤退。2018/19年のWEC“スーパーシーズン”でLMP1にワークス体制で参戦しているのはトヨタだけになってしまっている。


 この現状を打開すべくFIAとACOは、2020/21シーズンから新トップカテゴリーの導入を発表。2020/21年シーズンからLMP1は現行車両とは異なる“ハイパーカー”によって争われることになる。


 この“ハイパーカー”導入に向けては、トヨタやフォード、アストンマーチン、ポルシェなど6つの自動車メーカーがテクニカル・ワーキンググループに参加しているとみられる。

1998年のルマン24時間で総合優勝したポルシェ911 GT1-98


 しかしポルシェのバリザー博士は、ハイパーカーがGT1の二の舞になるのではとの懸念を明かしている。GT1は市販用ロードカーをベースにしたレース車両で1990年代前半に世界各国の自動車メーカーを巻き込む一大ムーブメントとなったが、次第にその外観はロードカーからプロトタイプ然としたものに変化していき衰退していった。


「新規定がGTEに匹敵するものとは思わない。90年代半ばにはGT1が登場したが、それと同時に我々はGTカーも(ル・マンの)グリッドに並べていた」とバリザー。


「そういったGTカーは市場で人気のあるモデルをベースとしていたし、我々もそういったクルマを世に送り出している」


「ハイパーカーは一過性のもので終わってしまうかもしれない。1〜2年は隆盛を誇るが、その後は姿を消して、10年後には新たなハイパーカーが登場するといった流れになるかもしれないね」


 バリザーはGTEとハイパーカーのコストの違いにも言及し、25〜30億ユーロ(約30億〜36億円)とも言われるハイパーカーのコストが、マニファクチャラーの対応に違いを生むだろうとコメント。


 ただし、GTEに参戦しているメーカーのなかにはハイパーカーのコンセプトに魅力を感じ、トップクラスへステップアップするメーカーもあるだろうとしている。


 現在、GTEクラスにワークス参戦しているフォードとアストンマーチンは、この“新トップカテゴリー”へのステップアップを検討しているとみられており、ワークス活動の場を移す可能性が高いとされている。


 バリザーは「どんな選択をするかはマニファクチャラー次第だ。そして最終的にはコストが決め手になるだろう」と語っている。


「(GTEから)ワークスマシンがなくなってしまえば、GTE-アマクラスが存続することは不可能だ。その点を念頭に置いておく必要がある」


「第二に、(ハイパーカーの)ビジョンや目標、概要については知っているが、具体的なテクニカルレギュレーションについては把握していない。最終的には規則書を見ないことにはね」


 またバリザーはポルシェがテクニカル・ワーキンググループに参加しながらも『新トップカテゴリー』へ復帰参戦するか、態度を明確にしなかったことを認めている。


「ポルシェは毎年モータースポーツ活動計画を練っている。我々はつねに世界中のモータースポーツの動向を見ている。もちろん、ハイパーカーについても注視している。だが今この瞬間もポルシェとしての戦略があるんだ」


「ポルシェには明確な考えがある。真っ先に、何かを変えたり注力する必要はない。『新トップカテゴリー』がどう成長するか、議論は進めているよ」


 またバリザーは、フォードなどの他メーカーも発言しているように、『新トップカテゴリー』がIMSAウェザーテック・スポーツカーチャンピオンシップにも並行参戦できるような仕組みを望んでいるようだ。


「我々を取り巻く環境、そしてル・マンとWECについては熟知している」とバリザー。


「そしてプロトタイプで成功を収めているIMSAへの関与を強めたいとも思っているんだ」


「WECにIMSAの要素を取り込むというのはいい考えだと思う。コラボレーションは歓迎だし、多くのマニュファクチャラーがそれを望んでいる」

今年のルマン24時間で発表されたハイパーカーコンセプト


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