「森保ジャパン」の通信簿 コパ・アメリカを振り返る

7月11日(木)7時0分 NEWSポストセブン

森保ジャパンの得たものと反省点は?(時事通信フォト)

写真を拡大

 2分け1敗、グループリーグ敗退。招待国として参加したコパ・アメリカ(南米選手権)での、サッカー日本代表の成績だ。東京オリンピックとW杯予選に向けて森保ジャパンが得たものは何だったのだろうか。


 サッカー戦術分析ブログ「サッカーの面白い戦術分析を心がけます」を主宰し、著書『アナリシス・アイ』を上梓したらいかーると氏はコパ・アメリカをどう見たか。個々の試合に関しては同氏のブログ(http://building-up.com)に譲り、個々人の評価と大会全体の評価を聞いた。


◆2列目のスタメン争いが激化


──森保ジャパンの主力、中島翔哉の印象は。


 残念ながら粗が目立ってしまった大会でした。南米の強豪が相手だと、ドリブルが巧みな中島でも抜けない場面が多く、守備では彼のいる左サイドが狙われていました。1戦目のチリ戦や3戦目のエクアドル戦が顕著で、前からボールを奪いに行く展開の時は行ったまま戻ってこない。結果的に左サイドは空きがちでした。


──現代のサッカーでは、前線の選手にも守備力が求められます。


 恐らく森保監督も「下がれ」と指示はしていると思います。それでも下がってこない場面に関しては、おそらく今はあえて放置しているのではないかと思います。中島が下がってこないならばそれに応じた解決策を練ればいいのですが、それを今から完成させると対戦相手に研究されてしまう懸念があるからでしょう。


──一方、右サイドハーフの三好康児は2得点で強烈な印象を残しました。


 もともとドリブルが上手い選手でしたが、ここ数年でポジショニングが非常に良くなり、高い技術を活かしてチャンスメイクができるようになったと考えています。


 三好はその世代では主力として計算されてきましたが、突然キャラが被っている久保(建英)が出現。同じ左利きで、同じような仕事をしているだけに、焦ったと思います。三好の中では「ここでやらなきゃいつやるんだ」という思いがあったのでしょう。


──三好がA代表に定着する可能性はありますか?


 現状では、堂安(律)よりも良いと思います。堂安は中島に似て、相手の嫌がるプレーよりも自分のやりたいことを優先しがちです。一方、三好や久保は、「勝つために何をすべきか」から逆算してプレーする選手です。彼らのような選手がコパ・アメリカで可能性を感じさせたので、今まで不動だった2列目のスタメン争いは必至です。



◆大迫以外のフォワード探し


──フォワードは上田綺世が大学在学中にA代表デビューして話題になりました。


 上田はいきなりスタメンでチリ戦に出て、かなり酷な状況でした。ただ動き出しなどはさすがで、“あとは決めるだけ”という場面を数多く作っていました。


──A代表のフォワードでは、大迫勇也の控えが誰になるかが注目されています。


 鈴木武蔵永井謙佑など、スピードのある選手のほうが多く呼ばれています。大迫ほどボールが収まる選手がいない時は、フォワードは裏に走らせて2列目の選手にスペースを与えるという森保監督の狙いが読み取れます。


──フォワードは必ずしもポストプレーが必要なわけではない?


 チームでボールを持てるのなら、1トップは裏に走ってセンターバックを引きつけるだけでも相手は嫌がります。今回大活躍していた岡崎(慎司)は、どちらかと言えば大迫の代役扱いでしょう。ボールを持って相手を押し込んで、裏に走るスペースがない時は大迫や岡崎。逆に相手に押し込まれた時は鈴木、永井、前田大然などスピードのある選手を起用するのがベターかと思います。


◆「マネジメント力」という課題


──久保をはじめ、GKの大迫(敬介)、MFの安部(裕葵)といったU-20の世代も招集されました。


 安部の扱いは少しかわいそうでした。彼はテクニシャンですが、周りに気を遣って一生懸命守備をしていたので。1戦目は途中交代で出てきて流れを変えましたが、2戦目は守備で奔走し、3戦目は10分だけ出場。これならU-20ワールドカップに行かせたほうが(注:コパ・アメリカの直前に行われたので上記3人は不参加)良かったのではないでしょうか。


──大迫も1戦目以外はベンチでした。


 率直に言って、川島(永嗣)でなく大迫が出るべきだったのではないでしょうか。1戦目も大迫はそれほど悪くなかったですし。


──大迫以外も、1戦目と2・3戦目ではメンバーが大きく代わりました。


 チームの連携不足は明らかだったので、1戦目はもったいなかったと思います。ぶっつけ本番ではなく、大会前の親善試合も同じメンバーで戦うべきでした。オリンピック代表が今までやってきた3バックを使わず、2戦目以降スタメンを大きく変えたことを考えると、オリンピック代表の強化と割り切らずに勝ちに行っている森保監督の意思が感じられました。



──「今回の経験を個人の成長につなげればいい」という論が多く見られます。


 東京オリンピック世代の若い選手には、普段より高いレベルでの試合が大きな刺激になったと思います。杉岡(大暉)や岩田(智輝)、三好なんかは所属チームで出場時間がたくさんありますが、普段とは全く違う状況で感じたものを成長に繋げてほしいです。


 ただ、経験したから単純に良くなるわけでもありません。例えば、オリンピックに出た選手がその後全員フル代表に定着したかというと、意外と少ない。また逆に、出られなかった選手が悔しくて成長することもあります。大迫(勇也)とか原口(元気)などはロンドンオリンピックに落選したのが悔しくて成長した選手だと思います。


 コパ・アメリカが成功だったかどうかは、選手の今後のレベルアップから判断すべきです。活躍した選手だけでなく、今回選ばれたけど活躍できなかった選手や、選ばれなかった選手まで含めて、今後もチェックしていくことが日本代表の強化に繋がるのではないでしょうか。


【プロフィール】らいかーると/1982年、浦和出身。とあるサッカーチームの監督。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』主宰。海外サッカー、Jリーグ、日本代表戦など幅広い試合を取り上げ、ユニークな語り口で試合を分析する人気ブロガー。サッカーライターとは違う「戦術クラスタ」の最古参であり、「footballista」や「Goal.com」などに寄稿多数。発売中の『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』が初の著書となる。Twitter:@qwertyuiiopasd ブログ:http://building-up.com/

NEWSポストセブン

「コパ・アメリカ」をもっと詳しく

「コパ・アメリカ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ